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八十九





 壁に掛けられたいくつかの観葉植物のレプリカがある程度の規則性を感じさせて,店内は交わされる関係のない話題とともに混線することなく,支払いに応じた注文の手渡しや率先した後片付け,利用者同士の軽い座席の取り合いに,合間を歩く小さい子に小走りで追いかける人が外まで引っ張られている様子が微笑ましく見られる。ゆっくりと回る上部の換気扇から使われるトレイの一つに至るまで,落ち着く時間はないように感じることは小さいスプーンを回す動作がもたらす,気のせいなのだろう。ふとした拍子に迷い込んだとしか思えない風は折り畳む前のニュースペーパーを捲る。熱いものを冷ます仕草はやって来たデザートにかき消される。本当に?と,確認される時間はきちんと腕時計に加算されている。これからの予定は順調に立てられている。長いこと,放って置かれたコースターに付き合うのはひょっとすると上手な落書きか,さっさと済まされる短いメモ。いずれにしたって持って帰られることになっている,贈り物は三つめの席を小さく埋めるか,あるいは膝の上で大人しく待っている。水を遊ばせて,切り刻まれたハーブと一緒に食べる。大きく取った一面のガラスでは遮る明かりがそこにないらしい。逆さまに語るその店の並びは横切って,開いたドアにそのまま向かっている。
 遅刻は今日も忘れられて,寂しい顔をしているかもしれない。だから外で待つ犬が欠伸をしているという,君が言うこともまた本当なのだろう。それは僕が連れて来たのでないけれど,息継ぎが必要な長い名前はきっと付いている。まずは済ませた注文を受け取ってから,ひとつの名前を思い付いてみるとしたい。使うならまずはここに残った文字,素敵なお店の名前に似ている。
 勿論他に連れて来てもいい,ここに加えても,トマトケチャップ以外の問題はないから。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-01

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