退屈

退屈

星が降る夜に

 抜け出そうか、どうしようか、とさっきからそればかり考えている。

 教授が交代で変わるこの授業、今日は全然面白くない。かといって、目が冴えて眠れない。昨晩、バーで知り合ったどうでもいい男と飲みすぎて、投げやりにセックスしたからかな。なんだか現実感がない。自分がとても頭の悪い生き物だと思えてくる。黒板と自分の手元を交互に見ながら、どうにも手持ち無沙汰で、そして教授の話す内容は何一つ頭に入らない。手元の受講感想アンケートは既に書き上げてしまった。

 教室は広く、中心の教壇に向かって椅子が階段状になっている。
 200人は入りそうなのに、30人程度しかいない。ぽつぽつと散らばった生徒達は、一番前の席に座っている数名を除いては皆退屈そうだ。

 大学生活というものに憧れを抱いていた自分が馬鹿だったと思う。4年生になって、文学部って、私にとってただの退屈だってわかった。大学生でいる今なんて、ただのモラトリアムだと思う。間違えたな。アルバイトとパチンコと男と、やり過ぎて飽きた。卒業が決まっているメンバーは来ていないし、私も何故ここにいるのかよくわからない。朝起きたら、酔っぱらってよくわかっていなかったのに、持ち帰った男が意外とハンサムだと発見したからかな。雨が降っていたから、外に出るときに気に入っている真っ赤な傘をさしたら、何故だか気分が明るくなって、大学でも行ってみるかと思ってしまった。

 「自分の居場所がないときってある?」と、1時位にベッドの中で男にきいたことをふと思い出す。
 「そういうときはバーにいるから、よくわからないな。」と彼が答えた。
 「寂しいときは、あなたはどうしてるの?」と更に質問したら、彼は寝たふりをしていた。

 誰もがいつも寂しい。私はそう思う。寂しいから時間を埋めようとするし、寂しいから楽しみを探す。寂しいから生きる。
 そして、いくら時間を埋めても、自分の中にある空っぽの塊は一向に埋まらない。

 朝、男がキスをしてくれたことを思い出す。一生懸命に自分が生き物として愛されたかもしれないと、記憶を書き換えて自分を満たそうとする。そして、例え彼が一瞬私を愛してくれても、全然満たされない自分に気づく。いつだって探しているのに。
 前の席に座っているカップルが、何やらひそひそ話をしている。馬鹿みたいだと思う。いつも、こうやって、流せない時を無理やり流して生きている。
 

退屈

退屈

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2014-04-29

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