ひと夏の奇跡
私の処女作品となる予定です。
構想を組んでる最中で、書き始めるので、いつ完成するかもわかりません。
ですが、私の精一杯は出すつもりです。
よろしければ覗いてください。
とびおり事情
『君には生きてほしい。』
死ぬ前に霧島 蒼(きりじま そう)が私に言った言葉だった。
蒼は私の恋人だった。
白血病によってちょうど1年前にこの世を去った。
その当時、蒼はまだ15歳だった。
今日は7月25日。長かった梅雨が明け、夏が近づこうとしている。炎天下になるのを望んでいるようにそびえ立つ向日葵の花も咲き始めた。
公園の前を通れば子供達がはしゃぐ声が聞こえる。
2年前まではこの声が心地よかったけれど、今は騒音にしか聞こえなくなってしまった。
1年前の時にはもう、蒼はいなくなってしまったからだ。
1年前の今日の3日前から、蒼の意識はなくなった。
その日から、私は病院で日々を寝ずに過ごした。
かといって、ずっと寝ないでっていうのは無理だったらしく、蒼のベットに寄りかかって寝たのが、その3日後。つまり、1年前の今日だった。
蒼は、私が睡魔に犯されている間に亡くなったのだ。
眠るようにすうーっと。
誰からも知られることなくこの世を去った。
蒼の家族でさえ、死に目に会えなかった。
1番近くにいたのは私だったのだ。
その日から、ずっとそのことを後悔している。そばにいたのに....、という負い目しか感じられなくて、話したいことも沢山あったし、心がぐちゃぐちゃで辛かった。
「蒼。私、蒼の後を追いかけたくなったよ。
そうやって言ったら蒼は怒るんだろうな....。
でも、もうダメだよ。私、蒼がいない世界で暮らせない。
今会いに行きます。」
私が立っているのは蒼が最後までいた病院の屋上。
晴天で雲1つない空に向かって話し、そこから飛び降りた。
目を開ける。
そこは真っ白な世界だった。
何もない。
ただただ白が続く世界。
あぁ、私は死んだんだ、と察した。
と。
『やぁ、いらっしゃい。』
人が居た。
だけど、辺りを見渡しても、姿は見当たらない。
『あ。もしかして、僕のこと探してたりする?
残念だけど、それは無理だよ。
ここでは、基本的に自分の姿と声しか見えないし、聞こえないから。』
この人、すごく会いたかった人の雰囲気に似ている。
そう感じた。
「貴方は誰?蒼なの?」
『違うよ。僕はここの番人をしている。
本当にここへ来るべき人かどうかをね。
君は自殺者だね。
蒼って人の約束はどうしたの?』
否定されて、間髪入れずに図星。
この方にはデリカシーってものがないのかよ。
でも、何故か嫌な感じはしなかった。
蒼に似てるから?
いや、そうじゃない。
オーラが落ち着く。
この人にだったら全て言ってもいいような感じ。
「私の話、聞いて貰えませんか?」
『....。どうぞ?』
「私、蒼が大好きだったんです。
小さい頃から一緒にいて、中学になって付き合いはじめて。
だけど蒼は死んでしまった。
蒼は私に生きろって言ったけど、私は蒼がいない世界を生きていく自信がありません。
残され者の辛さはわからないと思う。
私は蒼に会いたいから死のうとした。
それは悪いこと?」
何のためらいもなく話せた。
不思議な感覚。
『んー、会いたいっていうのは人としては当たり前のことだと思うよ。
でも、問題なのは蒼くんの約束を破ったこと。
蒼くんだって、君のことをおいていきたくておいていったわけじゃないから。』
「そんなことはわかってる。」
ひと夏の奇跡