曰くあの二つ星のように

馬鹿みてぇだ。

アイツは天才だ。

他の奴らとは全く違う何かを、アイツは持っている。

キセキの世代……そう呼ばれるあいつは特別な力を持ち、

おまけに容姿も完ぺきで つい俺は目線をそっちに向けてしまう。

舞い上がる気持ちに頭を痛める。


……けれども俺は アイツには届かない。

俺はいつも、あいつの外側の世界に立っているだけ。

手を伸ばしても、完璧なあいつには届かない。



なぁ、俺がお前の世界に立てることができたなら……

殴り飛ばしてぇ。

「黄瀬クーーーン!!!」 「キャァーッ!!♡」

「かっこいいーっ!!」 「こっち向いてぇーっ!!」


海常高校男子バスケットボール部、今日も女子の声援がうるさい。

その女子特有の甲高い声の先にいるのが…


「ありがとッス♪」


そう、コイツ…黄瀬涼太 である。


「おい黄瀬エ!!!!さっさと戻れ!!」

「もー、言われなくても分かってるっスってば…!!」

「チャラチャラすんな!しばくぞ!!」


黄瀬のシャララぶり(!?)には毎回溜息をつかされる。 正直うんざりだ。

でも…どうしてもその姿を追いかけてしまう。

実を言うと俺、笠松幸男は目の前のコイツ…何故だか知らんが

黄瀬に、恋心を抱いてしまったようだ。

蹴り飛ばしてぇ。

黄瀬涼太は、不思議な奴だ。

普段はチャラチャラシャラシャラしてるくせに、試合になればとたんに瞳が変わる。

会場に響くバッシュの音、軽快なステップを刻んで俺たちにパスをくれる。

走るたびにバッシュがキュッ、キュと鳴り、金色に光る髪がなびくのだ。

飛び散った汗でさえ輝いて見えるなんて、俺は俺をしばきたいと思った。


―――そして俺たちは、試合に負けた。


ぽろぽろと涙を流す黄瀬、


「頑張ったな。」


俺はそっと黄瀬に手を差し伸べた。


「先輩…」


涙を流しながら俺を抱きしめた黄瀬の手のひらが、あまりにも心地よくて

俺は黄瀬の腕の中で顔が熱くなっていた。

はっ倒してぇ。

帰り道での黄瀬は意外にも元気そうで、普段通り愛想を振りまいていた。


「先輩!!この後空いてるッスか?」

「え?…あ、あぁ。」

「じゃあ!!この後!!二人でご飯行きません!?」

「…えっ」

「ねっ?イイっすよね!?二人で!二人ッスよ!?」


やたら二人を強調する黄瀬。


「うっるせえな!!二人で行きたいんならもっと俺意外に他いるだろ!?」


黄瀬にそう言い放つと、黄瀬は俺の後ろに回った。


「…俺は、先輩がいいんスよ」


後ろからささやかれて俺は思わず赤面した。


「ちょっ…////黄瀬!!」

「まぁいいから行きましょう♪」 ニコニコ


俺の手を取って黄瀬は歩き出した。つられて俺も足を進める。


(…あたたかい。黄瀬の手)

うっせーんだよ。

しばらくして、俺たちはとある飲食店へとやってきた。


「先日撮影でお世話になった店ッス。綺麗っしょ?」


確かに、照明の配置とか、テーブルとかキッチンもどこか雰囲気があって

おしゃれで何よりも居心地が良い。

黄瀬の後ろできょろきょろと店を見ていると、店員さんがクスッと小さく

笑って、席へ通してくれた。


「この席は他のところとちょっと離れてて結構好きなンス。」

「へぇ…いいじゃん、俺こういうとこあんまり来たことないから分かんないけど。」

「よかった!先輩に気に入ってもらえて♪」


ニコニコ笑いながら俺の方を見る黄瀬、俺は無意識にドキドキと心臓が高鳴る。


(先輩、可愛いなぁ…)

こっち見んなって。

「っはー、ごちそうさまッス!!」

「…ごちそーさま」


俺たちは食事を済ませ、店を出た。


「先輩……」

「何だ?」

「ちょっとだけ…ついてきてくれませんか?」


黄瀬にそう言われた時、ホントは早く家に帰って

やらなくちゃいけないことがたくさんあったのにって思っていた。

でも…


「分かった。」


そう、今は黄瀬と1秒でも2人で一緒にいたかったから。

俺は黙って黄瀬の手を握ってついて行くことにしたんだ。

わ、笑ってんじゃねーよ。

黄瀬につれて来られた先は、人気のない暗い土手。 

水の流れる音が聞こえるから、きっと目の前は川だろう。


「先輩、ここねすっごい星がきれいなンスよ!!」

「星?」

「ほら、寝転がって…上見てくださいっス」


言われるがままに俺はその場に寝転がり、黄瀬の指先の空を見た。


「うわぁ…!」


見上げるとそこには、小さな星が宝石のようにそれぞれ輝き、

まるで大きなパノラマのようで、大きな絵画のようでもあった。

思わずその星空に見とれ、しばらく言葉を失っていた。


「綺麗っしょ?いつか先輩に見せたいって思ってたんス」

「…綺麗だな……」


俺の隣で寝転がる黄瀬の黄色い瞳があの空の小さな星のひとつのように

キラキラと揺れていた。

前言撤回。

「先輩、あそこの二つ並んだ大きな星が見えるっすか?」


黄瀬の指差した方を見てみると、確かにそこには大きな星が二つ、

並んで互いに輝き合っていた。


「……俺と先輩も、いつかあの二つの星のように…

ずっと一緒にいられたらいいんスけどね…」


―――…えっ……?


「ちょ、黄瀬…それ、え…お前、今何て……」

「だから、」


と、そこで言葉を切って黄瀬が俺の体に覆いかぶさるように寄ってきた。

それはまるで、押し倒されているかのように。


「…黄瀬!!?////」

「俺…先輩が、笠松先輩のことが、好きです」

上手くいきすぎて。

「黄瀬…」

「本気ッス。ずっと先輩と一緒にいたいし、ずっと隣で笑っていたい。

ずっと…この星のように、2人で輝き続けたい…そう、思っています。」

「……っ////」


いつもの飄々とした黄瀬は、今は俺の上で真剣な顔をしている。

馬鹿見てぇだなぁ…俺は、物凄い幸せに頭がいっぱいいっぱいなんだ。


「先輩は、俺のこと…好き?」


母犬に甘える子犬のような目で見つめられて


「嫌いなわけ、ねーだろ////しばくぞ」


そう、こんなにも想われているんだ。なら…


「黄瀬が、好きだよ…俺は」


あの二つ星のように、寄り添って、輝きあっていこう。


「先輩!!大好きっス!!!」

「ちょーしのんな馬鹿!……好き////」


俺は顔を真っ赤にして黄瀬の頬とつねった

曰くあの二つ星のように

最後まで読んでくださってありがとうございました!

今回は黄笠というわけですが、 私最近黄笠が大好きでして////

ニヤニヤしながらキーボードを叩きまくってましたww

次回作は何にしようかな?(´・ω・`)

曰くあの二つ星のように

*黄笠腐向け小説です ・ほのぼのBLです。 ・黒バス、腐向けが嫌いな方はブラウザバックしてください。 ・いつになく黄瀬がイケメンです。 ・笠松視点。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-24

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 馬鹿みてぇだ。
  2. 殴り飛ばしてぇ。
  3. 蹴り飛ばしてぇ。
  4. はっ倒してぇ。
  5. うっせーんだよ。
  6. こっち見んなって。
  7. わ、笑ってんじゃねーよ。
  8. 前言撤回。
  9. 上手くいきすぎて。