無限とか有限とか
この主人公と私の性格は結構酷似してます。
独り言
私が子供の時、友人達の間ではテレビで放送される戦隊者や魔法使いがでてきて人を救うなどという今思えば懐かしくもどうでもよくもある物が流行であった。
まあ、今も似たようなものだ。
その中でいつも悪役なのは人を傷つける、如何にも悪そうな格好をした人達だった。
私はその頃大人も周りの友人達も呆れるくらいひねくれた性格をした小娘だった。
いや、語弊がある。
今もかなりのひねくれた性格をしている。
…話を戻そう。
その頃私は周りの友人達で戦隊物ごっこするといつも悪役を選んだ。
だってだれも悪役なんてしたくないだろ?
誰が好き好んで悪役なんかするもんか。
だから私は悪役をした。
誰もしたがらないからこそ価値がある。
悪役がいるおかげで正義が成り立つ。
世の中ギブアンドテイクだ!とかまあ…その時は単純に悪役だと目立てるからくらいしかなかったのだが。
そんな幼少期を過ごしたおかげか何かは知らないが現在高校を卒業して社会人になった今では立派なひねくれ者が出来上がっていた。
それはもう、両親も呆れを通り越して感心するほどのね。
そんな私に今とても面倒な問題が起こっているのだ。
小さな来客人と大きな問題
その日は本当に酔って頭が回る状態ではなかった。
晴れて二ん十歳を迎えたその日に会社の同僚や先輩からじゃんじゃんと酒を進められては日々の愚痴を聞かされ、極めつけは酔った人間放置で二次会へとんずら…
怒りは感じるも既にへべれけな状態の人間に何言ったって無意味なのは理解しきった問題だったので、タクシー代と置かれた二枚の万札を財布にありがたく直して篠原美紀は自宅へと歩いて帰ったのだ。
問題はそこからだ。
普段なら両親は寝ている12時代に家の明かりがついていた。
尚且つ家から普通では聞こえるはずない声がする。
まるで赤ん坊の泣き声だ。
家は2人弟妹で上に兄はいるがまだ結婚どころか恋人すらいない24歳の寂しい独り身だ。
そして私もまだ恋人はいない。
子供なんていたらおかしいのだ。
酔ったせいで家を間違えたか?
そんな思いで自宅の表札を見た。
…見紛う事なきわが家の表札だ、20年間慣れ親しんだ篠原の二文字が書かれた表札だ…
では何故?
答えは出ずにとりあえず家に入る事にした。
そして私は頭を抱えるのだった。
「う…嘘でしょ…」
泣き声の正体はリビングにいた。
大泣きで鼻水垂らして私のシャツを涎で汚している小さな来客人が父のリクライニングソファーの上にいた。
前掛け代わりにでもしたのであろう。
お気に入りというほどではないが、持ち主の許可無く使われていると考えると頭が痛みだす。
「あら美紀おかえりー、ちょっとシャツ借りてるわよー」
台所からひょいっと顔を出した母親はそんな呑気な事を言ってのけた。
まあシャツの事はこの際置いておこう。
私は涎まみれのシャツよりもその涎を垂れ流す赤ん坊の正体が知りたいのだ。
「母さんこの赤ん坊って…誰の子よ?」
私の質問に母はしばらくうーんだとかえーとだとか可愛らしさも今更無いであろうに、迷う素振りを見せた。
母がそんな事をするときは大抵ろくな事ではないのだ。
「美紀は親戚の里香ちゃん覚えてる?」
「え、うん…私より二つか三つ下の…」
「この子はね、その里香ちゃんの赤ちゃんなのよ…里香ちゃん前に付き合ってた彼氏と子供が出来ちゃってね…その子供がこの力也君なんだけど…里香ちゃんは力也君産んで数週間後に力也君一人アパートに置いていなくなってしまって…」
しばらくの無言の後、私はおもいっきり「はああああっ?!」と驚愕の叫びを上げた。
自分より下のしかもまだ高校生の子が子供を産んだよりも無責任にも子供を置いて消えた事に驚いたのだ。
今も尚泣き続ける力也に視線を持っていって美紀は苦い顔をした。
「里香ちゃんの両親は?なんでこの子引き取らないの?自分の孫でしょ?」
「それがね、里香ちゃんの両親とも今連絡取れなくて…それで一番里香と里香ちゃんの両親と接点があった家が里香ちゃんが見つかるまでこの子育てる事になったのよ」
よしよしと力也を抱っこしてあやす母親に美紀はそれ以上何も言えず、ハアっとため息をついてその場にへたり込んだ。
「あと…美紀にお願いがあるんだけどさ…」
とても嫌な予感がする。
「あのね…お父さんが今度ね海外にお仕事決まって…私も一緒に行くんだけど…」
頼むからそれ以上言わないで…
「さすがに、力也君を連れては行けないから…」
「母上それ以上言うなかれ!私は拒否させてもらうぞ!」
サッと先ほどまで力也が座っていたリクライニングソファーの後ろに隠れて言ったが母親は容赦なく言った。
「美紀に力也君任せるわ!社員寮にいる准には任せられないし里香ちゃんも美紀が力也君の面倒みてるって分かったらきっとすぐ「そんな簡単に決めないでよ!私だって…」
その続きが出なかった。
理由は力也が泣き止んでジッとこちらを見ていたからだ。
そして次にはこちらに手を伸ばして必死にジタバタとあがき始める。
「あらあら、美紀ったら早速力也君に気に入られたみたいよ?ほら~」
母親は私の腕の中に力也をストンと下ろして向き合う形にした。
中々愛嬌のある顔をした赤ん坊だ。
あんだけ泣いていたのが嘘のように今度は眠たそうに美紀の腕の中にいる。
「美紀ってどこか里香ちゃんに顔似てるからお母さんだと思ったのよきっと」
私と里香という人物は顔立ちが少し似ている。
スッと切れ長の純日本人を思わせる目元だとか、口元だとか、まあ親戚だからかもしれないが、昔は2人で外に出たら姉妹じゃないかと疑われる程だった。
無限とか有限とか