分裂

例えばの話。

例えばの話をするけどね、たまに自分の心が真っ二つに引きちぎられてゆくような感覚に陥るんだ。勿論実際にそんなことはないんだけれど、どうにもびりびり、ずるずると、裂かれては引き摺られるような感覚がする。それは何故かと問われても、そんなこと俺自身わからない。自分が何者であるかも最早、わからない。

真っ二つに断たれた俺は、それぞれがそれぞれの意志を持ち、それぞれの行動を起こすのだ。どれが本物なのか、そもそも偽者とは何なのか。考えても仕方の無いことなんだけれど。

そしてまた、こういう取り留めのない考え事をしていると、俺が俺でなくなって、でもあれもそれも、全て俺自身であって。頭のてっぺんから徐々にじわじわとびり、びり、と音を立てて引きちぎられてゆく。腰の辺りまでびりびり音がしたら、今度はまた頭のてっぺんからずるずる、ずるずると。ちぎれた俺を両端へと引き摺ってゆくのだ。あぁもうやめて、やめてくれと、まだ残っている俺自身の心が叫んで、ひとつになろうとするんだけれど、引き裂かれた俺たちはまるで磁石みたいに反発しあって言う事なんてひとつも聞いてくれはしないんだ。

自分が自分でなくなってゆくような感覚なんて、君にはわからないだろうね。
まぁ、所詮例え話なんだけどね。

分裂

分裂

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-23

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