雨上がり、貴方。
会いたいんです。
長いこと降っていた雨が、いつの間にか静かに止んでいた。
僕は傘と閉じて顔をあげた。
「…あっ」
暑い雲の隙間から眩しい光が注ぎ、よく晴れた真っ青な空が顔を覗かせる。
アスファルトに残った水たまりに、僕の姿がみっともなくゆらゆらと揺れて
不器用に映っていた。
(あの人は、今どこにいるんだろう)
ふとそう思ったのは今日だけではなく、
雨が上がるそのたびに、僕はあの人の姿を脳裏に浮かべる。
変わり果てた瞳の奥であの人に笑顔が
うすく、淡く、ぼやけていた。
(貴方は、何処にいるんでしょうか…?)
僕は今、貴方に会いたがっているようだ。
走っていきます。
それから僕はまたしばらく考え事をして、雨上がりの日から
ざっと一週間ほどは経っていただろう。
―――京都、洛山高校
「征ちゃーん!」
体育館で玲央の声がした。
「…何だい?」
「あのね、征ちゃんに今、どうしても会いたい人がいて…
校門で待ってもらっているんだけど…」
「会いたい人?」
「ええ。何でも征ちゃんの先輩だって言っていたから…」
「まさか……!?」
気がつけば僕は、玲央のぽかんとした顔を見る間もないほどに
校門に向かって走っていた。
「…やれやれね。征ちゃんにはかなわないわ。」
嬉し過ぎて。
間違いない。
「赤司」
僕を呼んだその声は
間違いなく
「虹村…先輩……?」
「オッス、久しぶりだな。赤司」
そう、僕の目の前にいたのは、虹村先輩。僕の脳裏に浮かぶ
あこがれ、と同時に今一番会いたかった人だ。
僕は震える指先をきゅっと握りしめて先輩に声をかける。
「先輩…どうしてここに…?」
「ん?あー…たまたま通りかかったんでな、赤司のいる洛山がどんなところか
見てみたかったし、それに…まぁいいや。」
先輩はぎこちなく笑って僕の目を見た。
知りたかった。
そこで僕は
「虹村さんは…今、どの学校にいるんですか?」
「俺?あー…それはちょっとわけがあってな…」
と聞いてみたが、先輩は言葉を濁らせた。
僕もその先は聞かないことにした。
「赤司…」
「…?何ですか?」
「なんか…前とは全然雰囲気が違うよな。前髪バッサリいってるし、
それに、エンペラーアイだっけか?目の色違うし。」
それは僕から云わずとも、先輩には分かっただろう。
天帝の眼が、黄色く怪しく光っていた。
僕はそっと手のひらで目を覆った。
眩しいほどに。
「何 今さら隠してんだよ、知ってるっつーの。」
「そう…ですよね」
「いいから…ほら、顔 見せろ。」
それと同時に腕を掴まれて、あいた手でくい、と顔をあげられた。
「俺はお前のその眼…結構気に入ってるぜ」
「先輩…」
僕は先輩の顔を見つめた。切れ長の瞳が僕の網膜に焼きついた。
「赤司」
「…?」
「最後に、一つだけお前に伝えることがある。」
それは真実でした。
「何でしょう?」
「俺は…ずっとお前が好きだった。」
「えっ…!?」
先輩の口から紡がれたその言葉は…僕が予期せぬ告白。
「お前が好き。恋愛感情でお前のことが好きだよ、赤司」
「…っ////」
…あぁ、僕はその時初めて
先輩のことを今までずっと好きだったんだと気付いた。
恋愛なんて、思い通りにいくものではないと…
ずっとそうだと、恋愛はそんな物だとバカリ思っていた。
先輩は、そんな僕の考えを全部裏切るかのようにあっさりとこんなことを言うもんだから。
何故か思い通りにいきすぎたその空気に、僕は息を詰まらせてしまいそう。
「虹村さん…俺も、ずっと好きでした。先輩のこと……////」
「赤司…」
また会いましょう。
「それは…両想いってやつだな!!赤司!!なんか…すっげえ嬉しいわ、今////」
先輩は頬を赤く染めてにっこり笑った。
僕の眼は、未来が見えるなんて言うけれど…
この先先輩と歩んでいく未来はきっと どれだけ目を凝らしても
見えることはないだろう。
「…赤司、俺もう行かないと。」
「そうですか…。」
「そんな寂しい顔すんなって。ちゃんと会いに行くから…な?」
「はい。待っています。」
愛してる。と耳元で囁かれたその時、 空には大きな虹が孤を描いていた。
―END―
雨上がり、貴方。
最後まで読んでくださってありがとうございます!!
初投稿を飾るCPはなんと虹赤となりました(`・ω・´)
文才はまったくない素人の私ですが、これからも頑張っていこうと思います。
ありがとうございました!!!!!