空と海と白い壁
私の世界と誰かの世界が、このままずっと続きますように。
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あの時、言わなかった言葉があった。
面倒だから、言わなかったんだ。
怖かったから、言わなかったんだ。
あの時、言えなかった気持ちがあった。
上手く伝えられないと思ったんだ。
伝えられても、否定されるのがいやだったんだ。
嘘をつくのは嫌だけど、素直にもなれなかったんだ。
□
砂が靴の中に入るのが嫌で、私は裸足になった。
それだけで、自分が少し変わった気になった。
風は少し強くて、中途半端に伸びた髪が顔にまとわりついてきた。
目の前の海は広すぎて、見上げる空は遠すぎて
それに比べて私はなんてちっぽけなんだろう。
小さくて、なんて面倒なんだろう。なんて怖がりなんだろう。
寄せては返す波が
私の好きだった気持ちも、嫌いだった気持ちも
すこしずつ洗ってくれた。
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突然どしゃぶりの雨が降ったり、どんよりと曇っていたり。
嫌なくらい眩しかったり、酷く寒かったり、死ぬほど暑かったり。
肝心な時に太陽がでなかったり、
ここぞというときにうんざりするくらい青い。
いい加減にしろよ、と思うことばかりだけど、
これからも一生付き合っていかなきゃいけない。
そう思うと、しょうがないなあっていつの間にか許してしまうんだ。
時々見せてくれる暖かさや清々しさ、
夜の星の輝きに心を奪われてしまうんだ。
□
私の言葉には色も形もなかった。
伝えたいことがあった。届けたい想いがあった。
目の前にある白い壁は、あまりに綺麗だったけど、
私は白い壁を黒く汚した。
次の日、黒い壁には輝く星があった。
遠かった空があった。広かった海があった。
私の言葉が続く方へ、さまざまな世界が続いていた。
空と海と白い壁。
私の世界と誰かの世界が、このままずっと続きますように。
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空と海と白い壁