クロノイト ~病みによる闇世界~
プロローグ
今、僕は深く深く眠っている…。
意識も感情もない無の場所で深い眠りについている。
でもこれからとうぶん目を覚ます事はない。
きっとなにもできないまま眠ったまま……
一寸先も後ろも真っ暗な世界。
『起きなさい……』
あれ…無音なハズで眠っているハズなのに…誰かが自分を起こしているのだろうか?
少女が起こす声がこの眠っている自分の空間をこだまする。どこか幼い声ながらも明らかに冷たく氷のような声。
その声はどんどんと近づき大きな声へとすさまじく豹変していく。
しかし意識は取り戻せたのに起きられない。体なんて無いかの様な感覚を覚える。
それを見かねてだろうか、少女は駆け寄ってきて歩みをとめ呟く
『ごめんね……人間に戻すの忘れちゃってた…み…たい…。うふ…ふふふふふフフふふふフふふふふ…♪』
その後少女の様子は一辺、不気味に笑い出す。
イヒヒヒ…と魔女や悪魔よりも残酷で恐ろしい様な危険さを感じる。体の自由が利かない自分にとっては恐怖が感情の隅々まで駆け巡る。
必死で恐怖を堪えていると、笑い声が真後ろすぐそばまで迫り…
一瞬で何事も無かったかのよう静寂なと空間が戻った。
その刹那、体の自由も取り戻せたようだ。
彼は目を覚ましその場に起き上がり辺りに目を向けてみる。 濃い霧雨がかかっている様で辺りはさっきの眠っていた時同様の状態で、なにも見えない。
と、言っても手を伸ばした範囲位なら視野は確認できそうだ。
しかし辺りには誰もいない。
「さっき…起こされたよ…な」
何だかこの空間は、夢の中に生身の自分が居るような…
考えることもできるし自分の思い通りに動ける。大体夢は意思を逆らったり、考えたりできると言うことはあまり無い。
でもこの空間は別な感じがする…。
いや夢だとしたら何でこんなつまらない夢みるんだよ。
起こさなくて良いから誰かこの状況をどうにかしてくれ…
てか、何で起こした。
何で起きたんだ…そもそも僕は……誰?
自分の顔に触れ落ち着きながら冷静に考える。
全く思い出せない。
『貴方は……ね…』
どこからかさっきの少女の声が聞こえる。
霧で何も見えない場所から声が…
『私の…おとも…だち…』
ありえない…自分が人とふれあうことなど…。
友達なんて作ったことない…
『……だから……ね…』
声は限りなく近い…!
でも姿は捉えられない…何処だ訳の分からない事を言うや……つ………
『…ずっと……一緒………♡』
背後に笑みを浮かべた少女は抱きついてきた。
ただしその手にはナイフを握りながら…
ナイフの矛先である自分の心臓付近からは血が滝のように溢れる様子が伺えた。体を貫く様に刺さるナイフ 我慢などでき訳がなく、その場に力無く倒れた。
地面に身が叩きつけられた瞬間、電池が止まったかのように風景が真っ黒く何も無くなった。
倒れた身体は物の様に動きを失った
その光景を作り上げたロングヘアーの少女は笑みを浮かべ立ち上がり呟く。
『また…壊しちゃっ…た。』
少女は霧雨の奥深くへと去った。
クロノイト ~病みによる闇世界~