D.E.START ♯01 「出会い」
※この物語は天使や悪魔の捏造設定が多々あります。
秋、紅葉の季節。
学生たちは夏服から冬服へと変わり、学生生活を満喫していた。
そしてそんな時期に国内屈指の名門校、光城学園に1人の転入生がやってくる。
鮮やかな黒髪、透き通るような紫色の瞳、小柄な身体
彼の名前は有村柳である。
彼は両親の都合で短期間に転校を繰り返し、友人もできずにいた。
そのせいか彼はあまり人と関わろうとせず
”他人へ興味を抱く”事もしなくなったのである。
だが彼が1人の少年との出会いによって
人生が180度変わる事になってしまった。
そんな彼らの出会いからこの物語は始まる。
-光城学園屋上-
雲1つ無い青い空、微かに吹く気持ちの良い風が吹き抜ける
俺、有村柳は転入早々授業をサボり学園の屋上に居た。
フェンスの先から見える街の風景は初めて眺めるもので
俺はその景色を見ながら秋風に当たっていた。
その時、後ろから話しかけてくる声が聞こえた。
「転入早々サボりだなんて、お前も不良か?」
振り返るとそこには自分より
10cm以上も身長の高い金髪、青眼の男子生徒がいた。
「アンタもサボってるんだから同罪だろ...それに俺は不良じゃないから」
何故こんな奴に絡まれるのか、今日は厄日だろうか。
「アンタってオイ.....俺には井澤正継って名前があるんだぜ?」
井澤正継と名乗った少年は続けて話しかけてくる。
「お前、えー....名前なんだっけ有田焼き?」
「......有村柳」
「そう、柳だ!俺の事は呼び捨てでいいぜ」
コイツにはデリカシーとか空気を読むという事ができないのだろうか。
俺は怒りや苛立ちを通り越して呆れていた。
すると突然体がふわりと浮く
気が付けば俺はコイツにかつがれていた。
「何のつもりだよ!?下してくれ!!」
「悪いな、お前逃げ足遅そうだしちょっと抱えさせてもらうぜ」
「はぁ?確かに足は遅いけどなんで..........」
すると突然屋上のドアが勢いよく開いた。
勢いよく開きすぎてドアが悲鳴を上げているけど....。
そこから1人の女生徒を先頭にいかにも強そうな男子生徒が4、5人現れる。
その女生徒がこちらに向かって大声で叫んできた。
「井澤正継!!!!今日こそ逃がさないわよ!!!
この運動部部長たちが貴方をコテンパンにするんだから!」
赤茶色の髪に茶色の瞳をした彼女の腕には生徒会風紀という腕章が巻かれていた。
恐らくこの学園の風紀委員長なのだろう。
俺と風紀委員長の目がふと合ったその瞬間彼女が慌てて
「そ、その子は今日転入してきた有村くん!井澤正継!!転入してきたばかりの純粋無垢な生徒を拉致するなんてなんて恐ろしいの!!!!」
何故か俺がコイツに拉致された事になっている。
もう何が何だかわけがわからない
すると突然運動部部長と言われていた男子生徒たちが襲い掛かってくる。
「井澤正継!よくも俺の彼女を奪ったな!!お前を倒して取り戻してやる!!」
「井澤ァ!!よくも俺の飯を奪ったな!!!!張り倒してやる!」
......とコイツに対する恨みや妬みを吐き出しながら襲い掛かってきた部長たちだが
コイツは俺を抱えながらいとも簡単に彼らを蹴散らした。
部長たちを応援したかったが情けなさ過ぎて俺は黙っていた。黙るしかなかった。
「俺はお前の彼女を奪った記憶なんてねえよ....少し前に告ってきた女子ならフッたし....飯は俺だ。腹が減ってたんだよ許せ」
勝手に飯食ったのかよ。
「なんてこと....部長たちがこうもあっさりやられるなんて.....」
「俺をコテンパンにするなんて千年もはえーよ、荒い息風紀院長」
「荒木よ!!!荒木勇香!!ええい...こうなったら私が....!」
彼女が構えた途端コイツは突然走り出して彼女の横を簡単に通り過ぎ
気が付けば階段を下っていた。
「あの子無視してよかったのか?」
「いつもああだから気にすんな」
「は、はぁ....」
俺がため息をつくと急に思い出したかのようにコイツが言う
「そうだ柳せっかくだし今からケーキ食べに行かねえ?」
「ケーキ!?急すぎるだろ!!」
「俺が奢ってやるから!行くぜ!」
「お、おい!?」
コイツ....井澤正継は俺を抱えながら学園から出てカフェに連れて行ってくれた。いや連れて行かれたという方が正しいか。
でもそこのケーキは想像以上に美味しくておもわず2つも平らげてしまった。
そんな俺を見ながらコイツは笑っていたんだ。幸せそうに
俺は何でこんな奴が授業をサボったりして不良なのか疑問に思った。
これが数年間人に興味なんて持たなかった俺が久しぶりに他人に興味を持った瞬間だった。
今思えばこの出会いは只の偶然なんかじゃなかったのかもしれない。
あー..........、そういえば教室に鞄忘れてきた。
D.E.START ♯01 「出会い」