鋼鉄の壁
A商社
「青島結衣さんだよね?」
俺は後ろ手に鋼鉄のドアを閉めた、オートロックのかかる電子音がした
「あの・・・私は・・・失礼します・・・」
黒髪ロングのお嬢様風の女性はヒールの音をたててすれ違おうとした
「あれ?」
ドアのカードリーダーに入れてもロックが解除されなかった
「無駄だよ、で、本来庶務課の貴女がどうしてこの「集中電算室」に?」
「それは・・・」
結衣は口ごもった
「「O国開発プロジェクト」の資料を盗みに来たんだろ?」
「そんな事・・・私は仕事で・・・それより貴方はこの会社の人なんですか?
みかけた事ありませんけど」
結衣は腕を組んだ
「俺は外注のセキュリティ管理会社の者さ、まぁこうして産業スパイを捕まえ
たりもするけどね」
「私がスパイだって証拠は?」
「往生際が悪い女だな・・・この会社のパソコンはここ集中電算室の3台のPCで
高度に管理されており各PCにはその社員に必要なデータしか振り分けられない
外部からハッキング等で入った場合、ワンデイパスがなければ暗号化された
文章を読む事はできない・・・
そしてここのPCは特別で「自己警戒システム」を入れてある
もし誰かが俺の許可なくアクセスした場合、起動に使った社員番号と
参照したデータを自動的に俺に送ると共に外部メモリーへは偽のデータ
を送るシステムになっている・・・ここ1ヶ月に2回程貴女が「O国プロジェクト」
データへアクセスしていたからね・・・」
「そこまで判ってるんだ・・・で・・・警察に行くんですか?」
結衣は観念した様に近くのデスクチェアに座った
地下室
A商社へ簡単に報告を済ませ俺は車に結衣を乗せ
移動を始めた
「逃げたりしないからこれ外してください」
結衣は後部座席で不満そうに手錠を見せた
「悪いね、一応安全の為なんだ」
結衣は1つため息を吐いた
「私どうなるんですか?」
「大人しく背後関係とか話してくれれば今日中に帰れるよ、会社は解雇だろうけど
警察は嫌だろ?」
俺は答えながらステアリングを切った
薄暗い地下室、コンクリむき出しの床や壁のせいかひんやりしている
中央に事務机が置いてありパイプ椅子が向かい合わせに置いてある
「どうぞ」
俺は片方を結衣にすすめ向かいに座った
「素直に話してくれれば暴力は使わない、俺は女性を拷問して喜ぶタイプの
人間ではないがこれも仕事でね、君が話してくれなければ申し訳ないが
暴力に訴えるしかなくなってしまう・・・それか薬物で話してもらうか・・・
まぁ拷問の方が薬物でサラリというよりは趣味だな」
結衣の表情がこわばった・・・やはり雇われただけの素人だ
「あの・・・私が話した事をどうやって証明するんですか?」
「うーん・・・企業秘密・・・」
「あの・・・出勤途中に誘われたんです「良い話があるぞ」って・・・
怖かったけどお金貰えるし良いかなって・・・ごめんなさい」
怖々答える結衣を見ながら俺は頭を掻いた
「あのさ・・・女性を拷問する場合って予想通りの事するんだけどさ・・・少しされとく?
その方が話しやすいならそうするけど?
「拷問されたから話した」って言い訳も立つじゃん?
どうする?」
「本当です、道で声かけられたんです」
「俺の拷問結構業界でもエグイ方で通ってるんだよね・・・まぁだからA商社みたいな
大手を顧客にできるわけだけどさ、本職のスパイさんも大泣きだよ?俺の拷問」
俺が立ち上がると結衣は部屋の隅に逃げた
拷問開始
天井から下がってるフックに結衣の手錠をかけ、丁度爪先立ち位の高さに設定した
「本当に私知らないんです、声かけられただけで・・・やめて下さい」
俺はかまわず結衣の制服のリボンを解いた
「事前にさ、ある程度は調べてあるんだわ・・・」
俺は結衣のブラウスの襟に手をかけた
「引きちぎられるのとボタン外されるのどっちが好み?」
「やめてください・・・」
結衣は身をよじって逃げようとした
「だからさぁ・・・」
おれは力いっぱい結衣のブラウスを引きちぎった
「調べはついてんだよね・・・まぁいいけどさ・・・」
「本当に声・・・かけられただけです・・・」
結衣は泣きながら答えた
「これって現実だからさ、正義のヒーローも誰もたすけてはくれないよ?」
俺はブラジャーのストラップに指をかけた
「全部話してくれたら新しい服もあげるし今なら交通費だってあげちゃうよ?
俺に玩具にされるのとどっちが賢い選択かなぁ?」
「話したって信じないくせに・・・」
「信じるさ、大丈夫信じる」
「道で声をかけられました、声をかけてきたのは30歳位の女性で報酬は1回50万でした
USBメモリーと交換で現金でもらってました、お金は買い物と遊びに遣ってしまいました」
結衣は挑戦的に笑った
「いじめられるのが趣味なのかな?」
俺はブラのストラップをナイフで切りホックを外した
「取引しない?」
結衣の目を見た瞬間「マズイ」と思った・・・覚悟を決めた素人は手ごわい
「取引?」
「私を好きにしていいからもうこれ以上聞かないで」
「そうはいかないさ・・・仕事だからな」
「やっかいな事になった」俺は心底そう思った・・・
駆け引き
産業スパイを送り込む場合多くは今回の様に「そこで働いている
人間」を使う、何より手軽だし最も自然な形で潜入させられる
多くの場合美形の異性を使い接近し色々な対価で「仕事」をさせる
今回の場合結衣の後ろに「男」が居る事は分かっている
そしてその男がおよそ誰なのか、雇い主は誰なのか・・・
ある程度は絞り込めている、しかし決定打に欠けている状態だった
鋼鉄の壁