ビューティフル・ダイアリー(4)

十六 バットを振り回す女 から 二十 目で演出する女 まで

十六 バットを振り回す女
 ビューン。ビューン。風を切る音がする。
 あたしは、「はあ」と息を吐いた。金属バットを再びかつぐ。グリップを強く握りしめ、いつでも打てる。
 さあ、来い、球。あたしは何もない空間に目を凝らす。
 来た。あたしは迷わずバットを振る。バットはボールにかすりもせずに、大きな軌道のみを描いた。
 あたしは、もう一度、バットを構える。今度こそ、当ててやる。エアーバッティングセンターから、再び、ボールが投げられた。相手がエアーボールなら、こちらもエアーバットだ。
 あたしは肩が抜けそうなぐらい、バットを放り投げれば外野席に放りこめるぐらいの勢いで、バットを振った。またも、空振りだ。相手がエアーボールだけに手ごたえがない。だが、このままでは止められない。
 ノーボール、ツーストライ。あたしが知らない間に、あたしの後ろに審判員が立っていた。こちらも、エアー審判員だ。本当に、球が見えているのか、審判ができるのか、あたしは疑念が沸くけれど、審判員は神様だ。文句は言えない。そんなことを気にするよりも、投げられた球を正確に打てばいいだけだ。自分を信じろ。
 あたしは、今一度、バッターボックスからはずれる。落ち付け。落ち付け。集中だ。集中だ。来た球だけを打ち返せばいいんだ。エアーバットのグリップを強く握り締め、打席に入る。バットを構える。エアーピッチャーからボールが投げられた。ボールの軌道がはっきりと見える。ストライクコースだ。ど真ん中だ。来た。今だ。
 あたしはバットを振った。バットの真芯でボールを捉えることができた。そのまま振り切る。ボールはレフト方向に飛んで行く。レフトを守備しているエアー選手が後ろに向きに追い掛ける。走る。走る。だが、あきらめたのか、立ち止り、こちらに振り返った。
 ボールは外野スタンドの中に消えた。ホームランだ。エアー主審が右手を上げ、ぐるぐる回している。エアー観客が総立ちで、拍手している。あたしの顔に笑みが浮かんだ。
 これであたしは、もっときれいになれる。

十七 うどんをすする女
 するするする。ずるずるずる。
 うどんの麺が器から唇へと鯉の滝登りのように登っていく。出汁を含んだ麺が唇まで届くと、上唇と下唇に挟まれ、麺だけが口の中に滑り込んで行く。麺の周りに付着した余分な出汁は、登って来る麺を伝い、反対に、器の仲間の元に戻っていく。汁の中には、折角、自由を得たのに、今さら、器にもどれるか、と跳ねっ返り、台の上や服やほっぺたに飛び散る者もいる。
「あーあ、また汚しちゃった」
 あたしは、うどんの出汁が飛び散ったブラウスを見つめる。お気に入りの白いブラウスが一部分だけ水玉に模様替えしたことを悔やむ。ポケットからハンカチを取り出し、水玉の上から叩く。つま楊枝の先の大きさの水玉が、にじんで、ほくろ大になる。
「いやだあ」
 思わず呟くあたし。強く、ハンカチで、ほくろ染みを叩くあたし。ほくろ染みは、より一層勢力を増して拡大し、ブラウス全体を染みで埋め尽くさんばかりの強い意志を持つ。だが、援軍が来ないので、一円玉大にまで勢力を伸ばすのが精一杯であった。
「あーあ。本当に、嫌になっちゃう」
 よかれとしたことが、結果的にアダになることを知ったあたしは、シミを叩くのをやめ、うどんを啜ることに専念した。うどんは、あたしが寄り道をしている間に成長することは良しと思い込んでいるかのように、ぶよぶよの歯ごたえで、食べる人にとっては、本来のうどんの味には遥か遠くになりにけりの感慨を抱かせながらも、麺に出汁を吸い込ませ、膨張する。
 あたしは、そのうどんに果敢に戦いを挑む。先ほどより膨れたうどんをやや開いた口で啜る。気をつけなければ。あたしは、さっきよりも汁がほとばしりやすくなった麺に注意しながら、ゆっくりと啜る。万が一、汁が飛び散っても、ブラウスには月面宙返りで着地しないように、うどん器仮面としてヒーロー扱いになることもためらわず、器に顔をできるだけ近づける。
 啜る際に唇からこぼれた汁は、折角、鯉の滝登りに負けまいと、重力に反して駆け上がっていたにもかかわらず、パスポートがないから入国できない旅行者のように、すごすごと汁の中に戻っていく。登りつめないままに下るしかできず、永遠に埋没した人生の悲劇性を身にひしひしと感じながら。
 あたしはすする。ススル。啜る。麺を全てお腹の中に格納できた。次は汁だ。ようやくお前の番だ。先ほどの不埒な好意は許してやろう。唇を器に近づける。ごくり。喉を通り過ぎた。全てが完ぺきだ。
もう、あたしの意に反して、跳ね返ろうとする奴(汁)はいない。満たされたお腹。そして、心。この満足さが、人を美しくさせるのだ。
 テーブルの上の器と半分以上残った汁。斜めに置かれた箸。椅子に体ごと斜めに倒したあたし。お腹はぽっこりと突き出ている。この統一性のない、アンバランスな情景の中に美があるのだ。
 あたしは目を閉じ、幸福の瞬間、美の形を永遠に感じるのであった。

十八 太ももの女
 育代は触る。自分の太ももを。上から下に、下から上に。触ると言うよりも撫でると表現した方がいいだろう。愛おしいのだ。自分の太ももが。張り詰めているのに、弾力がある。まさに、太ももだけが別人格を持って、生きているようだ。
 育代は短距離ランナーだった。中学、高校、大学を卒業した後も、社会人として、陸上の全日本選手権などに出場してきた。残念ながら、世界選手権やオリンピックに出場できるほどの成績は残せなかったものの、自分なりに、結果については満足している。
現役選手を退いた後も、地元のスポーツクラブで、子どもたちを教えながらも、マスターの選手権などには出場している。そういう意味では、まだまだ現役選手だ。現役だけは続けたい。よく、有名選手が現役を退いた後、競技をやめることがよくある。
 確かに、きつい。練習が肉体的にきついのはもちろんこと、タイムが伸びないのは当たり前だが、タイムが落ちていくのが辛いのだ。昔は、あのタイムだったのに、今のタイムの平凡さに愕然とするのだ。タイムが落ちることで、人間性も否定されているような気持ちになる。タイムは現実なのだが、恐るべき現実の前で、人は逃避せざるを得ない。
 短距離にしろ、長距離にしろ、タイムが明らかになる競技は残酷だ。技は熟練できるが、タイムはごまかせない。ごまかそうとすればルール違反だ。 現実のタイムの中で、人は過去の栄光と現在の没落に悲喜を感じる。
だが、癒しの手はある。少し、競技を変えるのだ。育代は現役の時、百メートル走の選手だった。今は、六十メートル走に競技を変更している。
 百メートルはきついが、六十メートルならば、何とかなる。前半ダッシュ型だ。年齢を重ね、筋力が落ちると、持久力も落ち、後半、特に、六十メートル以降、筋力が持たなくなり、そのまま倒れるかのような走りの姿勢になってしまう。これでは、駄目だ。
 筋力トレーニングも重ねた。だが、寄る年波もある。無理をすると、膝が痛くなった。走っている時に、膝が抜けそうになる感触もあった。体との折り合いだ。それ以来、育代は、六十メートルを中心とした競技に参加している。
 今日も頼むよ。
 育代は、毎朝、起床すると、ふともも、膝、ふくらはぎ、アキレス腱を撫でる。特に、ふとももを重点的に撫でる。ふとものを撫でると、ふとももはぴくっと反応する。もちろん、育代が反応しているわけだが、いつも、ふとももだけが別人のような気がしてならない。育代という体とふとももという体。
 育代は、ふともものはちきれんばかりの美しさを誇る。自分自身は、このふともものためにあるような気がする。極端な話をすれば、育代自身がふとももに寄生しているかのようである。もちろん、栄養を摂取し、行動を命令しているのは育代自身なのだが、全ての行動は、ふともものために行っているような気になる。つまり、育代が、ふとももにお仕えしているのだ。
 ふともも様。
 ぷっ。育代は笑った。ふともも神に仕える育代。想像するだけで楽しい。なんだか、ふとももに支配されているみたい。
 育代は、今日も、ふとももを愛おしく撫でつづけるのであった。

十九 虫めがねの女
 懐かしい。
 女は、つい、口にした。机の中を整理していると、虫めがねがでてきた。小学生の時に、理科の授業で使ったものだ。花を見たり、虫を見たりした。中学生になってからは、使うことはなく、忘れてしまっていた。いや、忘れていたわけではない。存在していることは知っていたが、必要がないので、使おうとしなかっただけだ。
 虫めがねのガラスの周囲はピンク色。そう、昔、子どもの頃、好きだった色だ。ランドセルは赤だったが、筆箱も、鉛筆の柄も、消しゴムも、全て文具用品はピンク色だった。
 女は虫めがねを手に取る。何が見えるかな。世界がぼやけている。焦点が定まらない。今の、女と同じだ。失業し、父や母とも離れて、ひとり暮らしの女。友だちもいなく、仕事を探すためハローワークに通い、何とか面接にはこぎつけるものの、採用はされない。
「あなたには、もっと適した会社がありますよ」
 ハローワークの担当者に励まされるものの、度重なる不合格の通知で、窓口に向かい合う両者の口数は少なくなった。
 毎日のように通い詰めていたハローワークも、次第に、足が遠のき、一週間に一回が、二週間に一回となり、更に一か月に一回と次第に減少していく。それとともに、家を出る回数も減り、一日中、部屋に閉じこもり、家から一歩も出ない日がある。
 いや、家から出るどころか、ベッドからも起きあがれない日もある。ベッドで食パンを齧り、牛乳を飲み、バナナを食べる。さすがにトイレだけは、起き上がり、用を足す。それ以外は、すべてベッドだ。
 失業保険も今月で止まる。危機的状況なのに、心の中は、このままでもいいんじゃないかと思っている。
 このまま、このまま。このまま、このまま、来られたんだ。このままで、ずっと、いい。
女は、寝る前に、そして、朝、目覚めた時に、このままで、このままで、ずっと、ずっと、いいんだ、と呟くようにしている。
 そんな時だ。ベッドから立ち上がり、ふとしたはずみで、実家から持ってきた勉強机にもたれかかった。離れる際に、引き出しを引っ張ってしまった。その引き出しの中にあったのが、虫めがねであった。
 女は虫めがねを何気なく手に取り、ベッドへ向かった。寝ころんで仰向けになった。右手で虫めがねを持ち、目に近づけた。部屋全体がぼやけている。どこに、何に、焦点を定めきれずに、全てが曖昧で、輪郭を持つことを拒否しているのだ。よく言えば、渾然一体だ。今の、女も、この部屋とベッドと体が一体化している気がする。部屋が物理的に移動できないため、女もこの部屋から抜け出せないのだ。いや、本当のところ、抜け出したくないのだ。
 女は、焦点を定めようと手にした虫めがねを手の長さ分だけ離した。離せば何が見えるのか。天井のビニールクロスが拡大して見えた。だが、やはりぼやけている。それに少しくすんでいる。年に一回大掃除でも天井は掃除したことがなかった。当然の結果だ。
 でも、虫めがねのおかげで、汚れていることは意識できた。蛍光灯に眼を移す。まぶしい。これが太陽ならば、目に黒点ができるだろう。太陽からの贈り物。目の中に炎ができるのか。今は、そんな気力はない。
 遠くを見つめることはやめた。虫メガネは近くの物を拡大して見るものだ。遠くの物はぼやけるのは当たり前だ。自分だって、自分の遠い未来はぼやけていてはっきりしない。いくら望遠鏡で見えたとしても、次の瞬間、変わっているかもしれない。 その点、近くならば安心だ。変化があってもすぐに対応ができるからだ。
 女は掛け布団を見る。細かいほこりがついている。そう言えば、ここ一か月間、ふとんを干したことがない。家を出るのはもちろんのこと、ベッドからも抜け出ることが嫌だったので、当り前だ。
 また、左手をみる。皮膚の皺がみえる。毛穴も見える。この下に無数の細胞があり、自分が生きている限り、この細胞は生きているんだ。虫めがねをずっと近づける。ズームアップする。皮膚の中に、口があり、鼻があった。鼻から三回息を吸い込み、口から五回息を吐きだしている。
 まさか。
 女は目をしばたたせる。あまりにもベッドで横たわっていたので、起きていながら夢をみているのか。目をつぶり、目を開く。そして、虫めがねから左手の甲の皮膚を見る。
 すーすーすー、はーはーはーはーはー。やはり、皮膚の中に、鼻と口があり、息をしている、吸う回数と吐く回数が異なっている。大丈夫なのか。ずっと吐き続ければ、細胞がちじんでしまい、細胞がちじむということは、女自身もちじむということだ。
 ひょっとしたら?
 女はベッドから立ち上がった。ベッドの側の壁に立つ。女の部屋は一LDK。玄関から入れば、べッドルームとキッチンがあるだけだ。玄関の入り口に近い壁。白い生地に斜め模様が入ったビニールクロスだ。天井と同じようにくすんでいる。そこに、女の背丈ほどの高さに、鉛筆の線が入っている。女の右手に握られている物は、虫めがねから鉛筆に変わっていた。背中を向け、お尻と肩甲骨を壁に押し立てる。頭の髪の毛に鉛筆を押しあて、線を引く。壁から離れる。同じ個所に別の線が重なり、線は太くなっていた。
 大丈夫だ。ちじんではいない。
 ほっとする女。そして、再び、ベッドの中に戻り、虫めがねで自分の左手の甲を見る。虫めがねが映し出す女の細胞。相変わらず、鼻から息を三回吸い、口から息を五回吐いている。息を吸う度に、細胞が倍に膨らみ、息を吐くたびに、半分に縮小している。その姿を見るたびに、女は、自分の細胞なのに、何だかおかしみと親しみを感じた。
 もしかしたら。
 女は左手の甲だけじゃなく、親指や人差指など、指の先や、手のひら、手首なども、虫めがねで観察した。
やっぱりそうだ。
 それぞれの細胞には、鼻と口があり、鼻から息を三回吸っては、膨張し、口から息を五回吐いては、収縮している。女の皮膚全体の細胞が呼吸しているのだ。
 本当ならば、皮膚の細胞の呼吸に合わせて、女の体全体も膨張と収縮を繰り返すのだろうが、隣同士の細胞が、交互に吸う行為と吐く行為を繰り返しているために、女の体全体までには影響を与えてはいない。不思議な調和だ。自然の調和だ。
 女は虫めがねをはずして、天井を見つめた。そして、スー、スー、スーと鼻から息を三回吸い込むと、口から、ハー、ハー、ハー、ハー、ハーと息を五回を吐いた。
 そうだ。
 女は飛び起きると、掛け布団を体中に抱きかかえ、ベランダに向かった。太陽が空の頂点に達していた。ベランダに掛け布団を干し、続いて敷布団を干した。そして、大きく背伸びをした。
 あーあーあーあーあー。
 鼻から息を吸い込み、口から息を吐きながら、大きな声を上げた。呼吸の回数は数えていなかった。

二十 目で演出する女
 あたしはさっきから座ったまま、ずっと凝視していた。本を読み、テレビを鑑賞して、窓の外に眼をやり、昼ご飯のうどんを見続けている。全く、体は動かさず、だだぴっろい食堂の椅子に座っている。たまに、トイレに行ったりはするものの、基本的には、座り続け、眼球だけを動かしている。
 あたしは、ただ見ているだけではない。見ることで、演出しているのだ。あの正面の壁は、なんて色けがないんだ。確かに、白い壁は薄汚れており、ところどころに染みが付いている。ぶさいくだ。美しくない。
 あたしは目を瞑った。再び、目を開けた。薄汚れた壁は水が流れていた。滝だ。部屋の四方が滝になっていた。流れ落ちる水にあたしが揺れて映っている。何人ものあたし。本当のあたしはどこ?。
 でも、これでいい。
 次は、天井だ。天井のビニールクロスも、壁同様、薄汚れている。壁以上に掃除はできていない。年に一回、大掃除の際に、蜘蛛の巣を除けるため、ほうきで天井を撫でるぐらいだ。この広い部屋でいた人々の吐く息や体臭、カレーやうどんなどの匂いが澱となって一旦、床に沈み、一晩立つと、ゆっくりと上昇し、壁に張り付いた感じだ。それも地層のように、匂いが何層も、何層も重なっている。
 これを剥がしたほうがいいのか。それとも、上から何かを重ねて誤魔化すのがいいのか。
 あたしは目を閉じた。再び、目を開け、天井を眺める。
 雪だった。薄汚れた天井に雪が降っていた。今も降り続けている。足元の地面から、雪が舞い上がり、天井に積っていく。汚れは全て、雪が覆い隠してくれた。今も、あたしの目の前を雪が上昇している。粉雪だ。粉雪が浮かび上がっては、天井に降り積もっている。
 変なの。
 あたしは呟いた。と、同時に、きれいだと思った。これまで、何百年、何千年と空から振ってきた雪が、水が、今は、地上から空に戻っているのだ。自然の摂理だ。
 ひょっとしたらあたしも?
 あたしは椅子から立ち上がった。立ち上がった顔の前を雪が上昇していく。雪を掴む。キュ、キュ。そのまま、踵を上げ、つま先立ちになる。一秒、二秒、三秒。だが、雪のようにはあたしの体は浮かない。ふくらはぎが緊張して、震えだす。アキレス腱が痛い。
 もう、だめだ。
 あたしは、再び、椅子に座り直した。右手で掴んだ手のひらを開いた。雪は消えていた。そして、目の前を浮かび上がる雪も、天井に降り積もった雪も、壁の滝も、床の青い空も全てが消えていた。
それでもいい。
 あたしは、瞬間だけでも、世界がきれいに見ることができれば、自分もきれいになれると確信していた。
他に、何か、見えないかな。そうだ。
 はい、上を見て。右斜め上。右横。右斜め下。下。左斜め下。左横。左斜め上。はい、ご苦労さん。
眼科医で検診を受ける際のように、自分でしゃべりながら、眼球を動かし、目に見える範囲の世界を凝視した。ただし、それだけでは十分じゃない。自分が見えない世界も見たいのだ。
 首を左右に回せば、視界は広がる。だが、自分の背中側の世界は見えない。首を上下に振る。天井から床まで見える。だが、左右と同じだ。自分の背中側の世界は見えない。見えない世界を見ようとする。世界を見ることで、自分が美しくなれるのだとあたしは信じて疑わない。
 あっ、やばい。
 あたしは、思わず、目に手を当てる、あまりにも目に力を入れ過ぎたのか、目から血が噴き出した。赤色に染まった世界。朝焼けと夕焼けが同時に来たみたいだ。
 あたしは、座ったままで、新たな世界を手に入れることができた。新たな世界こそが美の象徴であるかのように。

ビューティフル・ダイアリー(4)

ビューティフル・ダイアリー(4)

十六 バットを振り回す女 から 二十 目で演出する女 まで

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-19

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