○△□×

ここは、カターチ王国。この国の王様は、ニコニコ笑顔でなんでもOK、丸い冠をかぶった○王様と言いました。
そしてその○王様の娘は、さんかくの冠をかぶった、めんどくさがり屋でどっちでもいいわ、の△姫。
このふたりは、国民のどんなお願いもOKするので、国民はたいそう幸せに、毎日を過ごしておりました。
「城の馬を1頭、譲っていただけませんでしょうか。」
「うん、いいよ。」
「どっちでもいいと思うの。」
「うちには、娘に新しい洋服を買ってやるお金がありません。どうか、姫様のドレスを1着、
譲ってはくださらんかのぅ…。」
「うん、いいよ。」
「どっちでもいいと思うの。」
「敵対する隣国の娘と恋に落ちてしまいました…!娘を我が妻に向かることをお許しくださいますか…!?」
「うん、いいよ。」
「どっちでもいいと思うの。」
ほらね。こんな具合に、王様とお姫様は、みんなにOKを出すので、国民のみんなにたいそう慕われておりました。


季節は、もうすぐ春を迎えようとしています。
国は至って平和です。それはそれは平和です。このままずーっとこの平和が続いて・・・。
「王様ーっ!○王様ーっ!!敵襲でーす!!敵襲でえぇーーす!!」
・・・とは、いかなかったようです。
ゼェゼェ、息を切らせて、王様のところに駆け込んできたのは、しかくい帽子をかぶった、□大臣です。
この大臣は、頭がかたくて、自分でなかなか答えが出せないことで有名です。
「なにごとじゃ?騒々しいのぉ。」
○王様はちょうどその時、歯を磨いておりました。
「王様!一大事です!」
「ふぅん。歯、磨き終わってからでもいい?」
○王様はたいそうマイペースだったのです。
「そんな悠長なことを言っている場合ではありませぬぞ!敵襲です!わたくしが昼の散歩を楽しんで
おりましたら×魔王と思われる影を、遥かとおーーー…くの方に見つけたのです!
このままだと、×魔王に我が国を攻め入られてしまいます!」
シュコシュコシュコシュコ・・・。
「ガラガラガラガラ・・・ペッ!」
室内に、王様の歯を磨く音だけが響き渡ります。
「・・・・えぇーーーーーっ!?」
「おそーーっ!王様反応おそーーっ!!」
□大臣は、○王様の反応の遅さに、今でも驚かされておりました。
「・・・ま、いいや!それで、その×魔王がこの国に君臨すれば、やることなすこと、全てに×をつけられ、
国民はダメ人間として虐げられてしまいます・・・!!」
「えぇー?うーん、それは困ったのう、大変じゃ大変じゃ。」
王様がそんなに大変じゃない感じでうなっていると、姫が自分の部屋から降りて来ました。
「何事ですの?せっかく、ジャパニーズ国のイケメン兵士のDVDを見ておりましたのに。」
△姫は、イケメン好きだったのです。
「おお、姫よ。わしの大の苦手な×魔王が、この国に進撃しているとのことなのじゃ。」
「あら、だったらこちらも軍を進撃させればいいじゃない。」
「おお、そうじゃったそうじゃった。よし、□大臣。すぐに兵たちに進撃準備の伝令を出すのじゃ。」
王様がそう言うと、大臣はとても言いにくそうに言いました。
「・・・お言葉ですが王様・・・。兵たちは先日、王様にお暇を頂きたいとの願いを出しており、
王様がOKをお出しになられたので・・・、今城には、戦える兵士がひとりもおりません・・・。」
「・・・そうじゃったーーっ!!」
王様はマイペースの他に、忘れっぽい性格でもありました。
「う~ん、じゃあもう、諦めちゃう?」
王様はけっこうあっさりした性格でもありました。
「いいえ王様!!こうなれば国民を守るために、我々だけでも戦うしかありませんぞ!
・・・どうか・・・、わたくしと剣を手に、×魔王に立ち向かってくださらぬか・・・!」
「うん、いいよ。」
「えっ!?いいの!?」
王様のOKっぷりに、大臣はいつまでたっても驚かされておりました。
「姫も来る?」
「うーん・・・、どっちでもいいと思うの。」
「軽く誘ってOKしたー!!」
姫のいい加減さにも、大臣はいつまでたっても驚かされておりました。
「OK!じゃ、3人で戦っちゃう!?わしたち、デビュー戦じゃのう!」
「ワクワクしている場合ではございませぬぞ王様!それではわたくしめと一緒に、
×魔王の迎撃準備をお願い申し上げます!」
「うん、いいよ。」


こうして3人が、×魔王を迎え撃つべく、城壁に登って準備をしていると、
やがて、大きな足音が大地に響き渡りました。
「むむっ、これは・・・!」
「おお、来よったのぅ。」
大臣と王様が前方を見渡します。
そのうち、大きな黒い影が見えてきました。そうです、×魔王がついにここまで迫ってきたのです。
辺りは突然、黒い雲におおわれました。そして×魔王は、頭にかぶった×印を黒く輝かせながら、
どっしりとした黒い声を辺りに響かせました。
「ふははははははは。我こそは×魔王。すべてのものを否定し、すべてをダメにする恐怖なる存在。
カターチ王国よ、我にひれ伏し、降伏の白旗をかかげよ!」
「うん、いい・・・。」
「ダメーーーっ!!それはダメーーーっ!!!」
いつもの調子で○王様がOKしようとしたところを、慌てて□大臣が阻止しました。
「う~ん・・・、どっちでも・・・。」
「ダメ~~~~ッ!!」
「おお、そうじゃったそうじゃった、ナイスフォローじゃ、大臣!」
○王様のすぐOKを出すクセは、何かと危なっかしいものです。
「ふはははは、ひれ伏さぬのならこちらから奪いに行くまでよ。○王よ、覚悟!」
ズシーン、ズシーン、と、×魔王が前進をし始めました。
「むぅ・・・っ!いかん!」
大臣はとっさになにかを考え始めました。
「・・・姫様、×魔王を攻撃する武器は、我が国が誇る巨大な大砲がよろしいと思いますか、
それとも、先日開発されたばかりの超巨大手裏剣がよろしいと思いますか!?」
真剣なまなざしで、大臣が姫を見ましたが、姫の答えはやっぱり・・・。
「うーん、どっちでもいいと思うの。」
「むむむ・・・。」
これを聞いた大臣は、まゆげを寄せて考えました。
「兵がみな出払っている今、わしが武器を使わねばならん。
そうなると・・・、大砲は、手慣れた者でなければ失敗する可能性がある。
そうなると手裏剣は・・・、一度も投げたことがないわしでも、あれだけ巨大なものだから、
もしかすると魔王に当たるかもしれん・・・。」
大臣はしばらくするとうなるのをやめて、寄せていたまゆげをパッと元に戻しました。
「王様!×魔王を攻撃する武器は、超巨大手裏剣でよろしいですかな!?」
今度は大臣は王様にたずねました。王様はやっぱり、「うん、いいよ。」と言いました。
「御意!」
大臣は王様に敬礼すると、そのまま右の塔へ走って行き、なにやら赤いボタンを押しました。
ゴゴゴゴゴ・・・と大きな音を立てて、城が揺れました。
すると、塔が割れて、中から超巨大手裏剣が出てきたのです。
「待ってましたーーっ!!」
大臣は歓声を上げると、超巨大手裏の横にあるレバーに手をかけました。
「・・・標的は、ズバリ!×魔王!」
かけ声とともに、大臣がレバーを引くと、ギュインギュインギュインギュイン・・・
と、超巨大手裏がものすごい勢いで回転し始めました。
「超巨大手裏剣・・・、発射あぁぁぁ~~~!!」
超巨大手裏剣は、大臣の声に押し出され、空へ飛び出しました。
空を覆っていた黒い雲を裂いて、超巨大手裏剣は×魔王の元を目指します。
「ふははははは!そんなものがきく×魔王様ではないわ!」
×魔王は超巨大手裏剣をものともせず、更に城に近づこうと前進しました。
「はっはっは!それはどうかな!それ行け!超巨大手裏剣~~っ!」
ギュインギュインギュインギュインシュルシュシュルシュル~。
「はっはっは!きかぬきかぬきか・・・!んなっ!なにぃ!?デッカーーー!!なんじゃこりゃ~~~!!」
超巨大手裏剣の大きさに、さすがの×魔王もびっくりしましたが、時はもうすでに、遅かったのです。
・・・パッコーーン!!!
「・・・ぎゃああああ~~~!!」
超巨大手裏剣は、見事、×魔王の頭に命中したのです。
「や・・・やったー!!うほほほほほ~~!!」
大臣の喜びようったらありません。

大臣は王様のところへ戻りました。「王様!今ですぞ!×魔王を降伏させましょう!」
「うん、いいよ。」
大臣は王様の返事を聞き、魔王に言いました。
「やい!この、×魔王!お主、このカターチ王国を乗っ取るのじゃ!よいな!?わかったな!?
絶対、降伏などするんでないぞ!?」
大臣が×魔王に呼びかけました。すると、なんでもダメだダメだの×魔王は・・・。
「だ・・・ダメだダメだぁ!カターチ王国を乗っ取って、降伏なんかしない!?
そんなことをしたら・・・!ダメだーあ!降伏してやる!降伏してやるぞおおぉぉぉ・・・!」
ズシーンズシーン。そう言いながら、魔王は来た道を戻って行きました。
「・・・やった・・・。やったー!やったぞーい!!」
こうして、カターチ王国は×魔王の魔の手より、守られたのです。


それから。
平和を取り戻したカターチ王国。○王様は相変わらずの「うん、いいよ。」で、
兵士からも国民からもずっと慕われ続けました。
そして、どっちでもいいの△姫は、ただ今おむこさん選の真っ最中。
「あああ・・・、この顔もステキ・・・、こっちも捨てがたい・・・。んん~っ!
どっちでもいいと思うのおお~っ!」
あらあら、おむこさん、ちゃんとひとりだけ選べるのかしら。
そして、×魔王を退治したあの□大臣は、このカターチ王国を守ったと言うことで、
自分にたいそう自信がついて、今ではひとりでちゃんと答えを出せるようになりました。
「うむ、それでいこう!あれでいこう!わしに任せろ!わしは、□大臣じゃ!はっはっは!」


それから、その□大臣に退治された×魔王ですが・・・。
「お、いいねこれ!この形!新しいんじゃない!?今までにないものが生まれそう!素晴らしいね!」
大臣の投げた、超巨大手裏剣が×魔王の頭の×印にあたり、×が+に変わったので、今はもう×魔王ではなくて、+魔王になってしまい、なんだかとっても前向きになっていました。
「ああー、生きてるって、最高!」



おしまい。

○△□×

○△□×

形はその人を表します。よね。ポジティブシンキング!

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-19

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