practice(82)
八十二
不規則に舞い落ちる様子が家々を覆って,立て掛けて置いた日傘に休まらない。軒先と,距離を置いている地面をこう,竹箒を側に留まらせて外国小説を紐解くところを,そう,ひらっと窺っては日当たりに浮いて,日陰に集まり,微風になびく。低いところ,足先でも涼し気は感じられ,片方のサンダルはからんとしてから静かに過ごす。耳の中で騒々しい拍動に落ち着いて,台詞はもって回った背の高い服装を直している。ぴーひょろろ,と鳴いて来る。紛れ込んだ花弁と胸元にあったシルクハットは動きを微かにともにして,空を遠く見やる御者が言葉にする,詩が一部だけを聴かせる。そこで吹く,草木は柔らかく何かを隠して,止んで何も語らない。続き難く,あるいは結実したものが再度御者の下に託されて,そうして御者は話をはじめる。そうして,それからを並べて,そうして,それからを二度言う。心地よい間と口の動き。また吹いた風。飛び去って来たものを見送って,掻き分けて来た描写がウサギのように着地をした。
縁側の木も鳴った。
奥の,畳に寝かせた姿。一本の青い紐で向こう側に結ばれたリボンは,自然にやって来た明るさに照らされて,暗がりの中でその色を濃くする。丸みのある姿形は触るのに遠く,見るには早い。柱時計が告げる三十分に,閉じた日傘はじっとして,立て掛けたところで傾いて,白い刺繍は施されている。柄のあの形。木の感触は残る。
すっと,匂いはした。休まることなく,代わりに手にはひらひらと触れた。
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