へそ
繋がっていたんだね
このお腹の痕を見る限り
だってちょん切られるまであなたと
否が応でも仲好し子好し
身を焦がし捩りながらも
守り抜いたの大きなお腹
酸いも甘いもすくすくと
育ったんだよあなたと共に
実った感情
なんでもいいからちょうだいよ
それら全部まとめて僕になるからさ
あなたの逆さの世界を見つめ合ってやってきたの
どうかそのまま時よ止まっていつまでもそのままで
あなたを感じたらこの暗く狭い僕の世界も
きっと離れたくないの
離れたくないよ
怖がっていたんだよ
あなたとの繋がりが消えること
だがら足掻いてもがいていたのに
あなたは言った「元気な子ね」と
そのとんだ行き違いを
覚ます一撃小さな便り
あなたほらまた勘違い
「そうね、早く出てきたいのね」
募った共存
ねえもういいからおやすみなさい
僕が全部まとめて夢にするからさ
あなたの逆さの世界に吊るされてやってきたの
どうかこのままここに留めてもうやめて
あなたを感じたからこの暗くて狭い僕の世界が
そっと優しく
もうもどかしくて
人生最大の引きこもり期間
あなたの部屋から一歩も出ることなく
全てを見てきたの
あなたがいればそれでよかった
あなたのそばにずっといたかった
叶うならどうかここに置かせて
叶わないならいっそやめさせて
頂いた生命僕のものなら
その管が切れたら終わらせて
破水羊水流れてグッバイ
想いも溶けてしまえばいいのに
全て羊水に濁らせて
あなたと共に逝けるよ
腹を裂いてまで出てきたって
してやれることなんてないんだよ
拓けた世界が問う
何のために生まれてきたんだって
迷わず僕は言うよ
「――――」
「お手手ちっちゃい」
もう手を伸ばしても届かないような
「ママにそっくり」
僕には広すぎた世界
「首が据わった」
その始まりに触れて
「寝がえりをうった」
何億と繰り返されるやりとりの中
「あんよが出来た」
わかりながらもヒトは笑ったんだ
「こっちへおいで」
飛んで行ってやるよ
もう何処にだって
ねえなんでそんなに嬉しそうなの
『ああ、また。笑った』
へそ
瀬尾和