practice(79)


七十九






 レインコートが裏返しになって,刈られた芝生の上に仰向けに敷かれていた。雨はぱたぱたとその生地を叩いて,撥水性はただただ機能している。使われていない開いた傘は経過時間とともに傾く降水量をそこに溜めて,溢れた分を平坦な土に流す。両方とも立てたまま揃えて脱がされた長靴の中の環境では小枝が泳ぎ出し,そして水位とともにそのうちに飽きた気持ちでぱしゃっと姿を見せて出て行きそう,誰かは履いている靴でじゃかじゃかとさせる水草っぽさ。長いベンチの浸された格好には背後の植樹も自然な感じで佇み,雨宿りをしているかもしれない小鳥は濃くなった葉を重く感じて,滴を垂らす,新品のスコップと準備をする花壇のような待ち構え。修繕を待つ凧と糸の吹かれ方は,丸椅子で編む。キイキイという風見鶏を手に持つ「かつて」のものにはもう屋根が要らない,真上の影の明かり。空いたスナック菓子の袋の中にある土とか石とか湿った小枝とかは大人しく,外側に記された細かい文字の成分表示は述べた。賞味期限以内に過ごされた数匹のとき。手を広げては飛び立たない,長くゆらめく底。透明な青のような深さにあるひと缶と,運ばれて行く,窪みがある奥行きの啄ばみ。白いコーティングが剥がれて,網目の所々に空気を通す。ひし形のはじめ,終わりの息継ぎ。歌う前に,タイトルを見つけて。
 胸が膨らんで,目を瞑った。



 

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-11

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