ショート×3
1 夢しるべ
毎日夢をみる彼は夢の出来事を覚えてる限り日記のように書き始める事にした。
彼がみる夢はかなり不思議でつじつまの合わないストーリーだった。
いつも夢の中で彼は微妙な位置にいた。
主役だったり、脇役だったり…。
でも一番多いのはテレビを見てるような傍観者的? 視聴者だっだ。
2 ユメのカケラ
僕はある夢を見た。
高校の頃、全く話した事もないけど気になる同じクラスの女の子を抱きしめている夢だ。
その娘は背が低く、いつも髪をツインテールにして、笑うと微かにえくぼの出来る可愛い娘だった。
夢の中では彼女とまるで恋人のように何かを楽しげに話し、親しげだった。
夢の中で僕は映画をみてるような立場で、僕とスクリーンの僕が存在していた。
つまり、僕は映画の主役だったのかな…?
じゃ、ヒロインは気になるあの娘?
その二人の光景をみているのにその二人が何を喋って居るのか分からなかった。
ただずっと耳元で砂嵐が鳴り響いていた…。
最後は僕が彼女にキスをした瞬間彼女がはじけ飛んだ。
普通なんとも残酷なイメージをしてしまう物だが、そうではなくはじけ飛ぶと彼女の身体から白い鳥の羽根のような物がはじけ飛ぶのだ。
まるで『夏に降る雪』のように美しく舞い上がり僕に降りかかった。
そして、僕は地面に溜まった純白の羽根を両手で拾い上げ、それを見ながら泣いていた。
夢の内容は断片的にしか思い出せないが、彼女と初めて会った時『可愛いのに何故あんなに悲しそうな瞳をしてるんだろう』と思った事を最近思い出した。
何故あの頃、彼女を見てそんな事を思ったのだろう…。 -end-
3 蝶々
虫カゴとあみを持ち、僕は原っぱにいた。
普通のモンシロチョウやアゲハチョウではなく、可愛くて奇麗なあの蝶々を探していつも駈けていた。
あの蝶々を追い続け、やっとの思いで捕まえたのに優しく捕まえたからなのか、いつの間にか手の中から逃げてしまっていた。またある時は、せっかく捕まえたのに誰かに「その手を離せ!」と言われた気がしてその手を離してしまっていた。
きっと僕はずっとあの蝶々を探し続けなければならないらしい。
可愛くて、奇麗なあの蝶々を…。 -end-
4 迷子
背丈ほど有る草をかき分け樹海を進む。
立ち止まりもせず、ただひたすら進む。
あいつが待っているから…。
ふと立ち止まると、朝の森はひんやりとしていた。
だが、森の中なのに鳥の鳴き声が聞こえない。
まるで『音』が消えたみたいに…。
僕は森の中で真っ白な服に包まれた一人の少女に出会った。
「お兄ちゃん。迷っちゃったの?」
「ああ、どうやったら出られるの?」
「出口まで、連れてってあげるよ…」
少女はどんどんと森を進む。
僕を深い森の中へ連れて行くように…。
本当に出られるのだろうか…。 -end-
5 追われてる
ハァハァハァ…ッハァ…。
僕は町中を走っていた。
追いかけて来る奴らに捕まらないようにずっと走り続けた。
誰に追われているのかも分からない程頭の中が真っ白だけどただ恐怖が足を走らせる。
誰だ。
誰から逃げてるんだ…。
どうしてこうなったんだ…。
俺は彼女に逢いに行ったはずなのに…。
僕は走りながらジャケットのポケットからケータイを取り出そうとすると血の付いた鍵が入っていた。
何だよこれ?
何でこんなもん持ってんだよ?
ただただ何が何だか分からず僕は走り続けた。 -end-
6 クスリ
「何でだよ! いつからなんだよ!」
僕の怒鳴り声は二人しかいない部屋の中で高く響き、彼女は鼻をすすりながら泣いていた。
「泣くなよ…いつから使ってたんだよ」
「一カ月ぐらい前から…」
「どのくらい?」
「週に一、二回…」
「…俺って無能だな。お前のスキンシップの相手にもなってないのかよ。俺たち何で付き合ってるんだろうな…」
呟きにも似ていた。
「…そんな事、言わないでよ…」
彼女は再び泣き出してしまった。
それを慰めることも僕はしなかった。
きっと僕は彼女を拒絶していたのかもしれない… -end-
7 Do you love me…
高校三年の頃、英語のテストで一番最後の設問が
“Do you love me ? YES・NO”
だった事を今でも良く覚えている。
その頃、僕は何故か素直にどちらかに〇をつけることが出来ずその下に『うざい!』と書いた。
その後、戻ってきた解答用紙のその設問がどんな結果だったか、思い出すことが出来ない。
-end-
ショート×3