教室
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教室ー帰路
「ねぇ、君は、どっちだと思う?」
授業が終わり、人気の少ない教室、
僕は、いきなり掛けられた問いを聞いてしまった。
「…どっち?」
「もし、もしだよ? もし今、この教室に時計が無かったとして、更に君は過去の記憶もなくいきなりこの教室で目覚めた男の子だったとする。 あとは…うーん、そうだね、部屋の中に他の人は居ない。そして手足は動けないように縛られているとしよう。身動きが取れないわけだ。 そんな状態で、この窓から見える今の空のような、夕方とも朝方とも言える焼けた空しか見えない教室で目が覚めたとしたら。」
そう言って、彼女…、 『(人物名未定)』は、その可愛くも妖しい笑みを表わした口元にわざとらしく立てた人差し指を添えながら、耳通りのいい優しげな声で言葉を続けた。
「その時、その時点、そのナウな状態で、夕方なのか早朝なのか。どうやって判別すればいいのかな? …君は、どっちだと思う?」
そして彼女がこの学校へ転校して来て以来、
更に言うなら彼女がクラスの皆からも「変わり者」だと認知されて以来、
僕ですら既に聞き慣れてきた、こういうよくわからない問いかけに対し、応答する。
「…そんなの、判別できるのか?」
「ううん、理論的に、我物的に、スキル的にできるかできないかじゃないの。 君がどう感じて、どう認識して、どう対処するのか。の話」
いつも通り、中途半端に難題であった。
「…そうだな、それがもし僕だったら、朝方だと思いたいな」
「朝?どうして?」
彼女は楽しそうな、
例えるなら、猫カフェで挙動の読めない小猫をじゃれつかせているかのような表情で、繰り返し問う。
「判断材料の少ない状態で、どうして君は朝方だと思うの?」
答えはシンプルだった。
「だってさ、そんな非日常的な状態に至るまでの記憶がない、手足まで縛られてる。それはどう考えても何者かによる悪意的な加害行為だ。 記憶が無いのは殴られたショックや薬の影響かもしれない。人の気配が無いっていうのもそれはあくまで普段目にする学校の光景と比較した主観的なもの、もしかしたら僕をその状態にした張本人がどこかにこっそりひっそり隠れているかもしれない。 …そんな謎しかない状態で身動きも取れず暗い夜を一人で迎えるぐらいなら、明るい朝や昼間を迎えたほうがなんとなく気楽で、安心できるだろう?」
その答えを聞いた彼女は2度、目をパチクリさせ、
満足そうで、どこか楽しそうな笑顔で言う。
「ははは、そっか。そういう考え方もあるね。 …うんうん。確かに。確かにその通りだ」
そうして、互いに雑談を交えながら、男女2人は一緒に帰路へ就いた。
「…さて、帰ろう」
そして僕は、彼女のよくわからない問いかけを脳内で反芻しながら、1人で帰路へ就いた。
あの2人は変人だが、お似合いだ。
END
教室
最後まで御覧頂きありがとうございます。
星空文庫様では初投稿。今回は短編といいますか、概要しか決まっていない長編(予定)の物語でメインとなる2人の会話を、そのクラスメイトである名も無き青年が聞いていた。というストーリーです。
いわば、長編(予定)の作品の原案 のようなものですね。
気分が乗ったら本編を作ってみようと思ってます。