楽園島

1日目・・・

浜辺の木陰で俺が「これからの事」を考えていると突然首筋に

冷たいモノがあてられた

「つめてっ」

振り向くと髪の長い20そこそこの女性が笑いながら俺に缶ビールを渡した

「隣良い?」

「えっと・・・」

「ひどいなぁ、自己紹介したの数時間前なのに・・・智美だよ安城智美」

智美は自分の分の缶ビールの栓を開けると俺の缶にコツンとあてた

「どうすんのこれから」

智美は一口ビールを飲んだ

「どう・・・しよっか・・・」

「早くしないと夕方になっちゃうよ?貴方がここにいる事は皆知ってるから

奪い合いで怪我人でるかもよ?何しろ私達の生殺与奪権持ってんだし」

智美は首にはめられた小型爆弾付きの首輪を触りながら言った

「毎月2名の死者・・・2名の補充要員・・・無期限のサバイバル・・・か・・・」

「明日またブザーがなって「はいおしまい」なんて事もあるかもね」

智美が笑った

南国の無人島、ここで行われているのは『実験』だった

数時間前・・・

釣りなんかに使う小型ボートでここに連れて来られたのは数時間前、

智美はたまたま同じボートに乗ってて、たまたま隣の席で共通の話題もあった

ので少し話をした位の仲だった

そのボートには他にも何人か女性が乗っていて、男は俺だけだったので

居心地が悪いやらハーレム状態で楽しいやら妄想している間にボートはこの島に着いた

ボートから降りて思い思いに過ごしていると突然ブザーが島中に流れ出しこう告げた

「生き残りゲームの開始です」

そして俺はこの島の王様になった・・・



「この島どれ位人居るのかな?」

「うーん・・・何隻かボートは見たから30人はいるんじゃない?男は貴方一人だけど」

「何それ?イヤミ?」

「うんイヤミ」

智美は笑って立ち上がった

「行こう、最初の配給もうそろそろだよ」

智美は手を差し出した

ヘリポート

島にヘリポートがあるのはなんとなく気づいてた・・・というかヘリが飛び去るのを到着直後に見ていた

ヘリポートには既に20名程の女性がコンテナ中心に集まっていて俺を伴って現れた智美を牽制する様に見ていた

「あんたが王様ってわけ?」

モデルの様な長身の美人がいぶかしむ様に言った

「私は戸越恵理、そちらは?」

今度は智美に言った

「安城智美、どう?情報交換しない?」

「情報?それよりその彼を連れて私のグループに入らない?死ぬのは毎月2人、私のグループ

以外から選んで貰えればそれで私達は安全圏じゃない」

「ちょっと待って、二人で決めないでよ」

キャップを被った女性が言った、後ろに6人程連れている

「まずは情報交換じゃない?」

「名前も名乗らない相手の情報を信じろって?」

「ゴメン、私は大原優子」

俺はすっかり蚊帳の外で、いくら鈍感な俺でも気づいた「ハーレムだなんてうかれている状況じゃない」って・・・

「5人分の食料貰っていくわね、生憎と時間ないから」

智美は俺の手を握ると堂々とコンテナに近づいた、智美の手は柔らかくその感触に酔っていた

「指」

「え?」

「これ指紋認証」

智美がコンテナの鍵を見て分かった理由は簡単、思いっきり「指紋認証」って書いてあったからだった

中には毛布や小分けにされた食料の袋が入っていた

最初に見た特権で数を数えると40個あった・・・多分これがこの島の「人口」だろう・・・

教室・・・

「ただいまぁ」

智美に連れて来られたのは荒れ果てた学校だった、そこで出迎えて

くれたのは同じボートに乗っていた3人の女性だった

「おかえり、てか本当に連れて来たよ」

髪を後ろに縛った気の強そうな女性が笑った

「彼女は斉藤春奈、金髪なのが近藤真美、そんで最年少の佐々木里奈」

智美が紹介すると思い思いに挨拶した

「そういえばさっきのビールってどこから?」

「あぁ・・・貴方・・・面倒だからキングって呼ぶけど、キングが居なくなって少しして港に漂着したのよ

飲料水が沢山乗せられたイカダが」

智美は食料を配りながら答えた

「そのイカダで脱出・・・」

「出来たらここに居ないしさっきだってあんな事にならないでしょ?」

智美は缶詰を開けた

「智美・・・あとつけられたでしょ?」

2階の窓から外を見てた真美がそう言って近くの棒を拾った

「大丈夫10人位なら想定内」

智美は顎に手をやり妖しく笑った

「貴女達に危害を加えるつもりはない、話し合いに来た」

先程のキャップの女性が叫んだ

「大勢集めてよく言うわ」

春奈が呟いた・・・どうも実質的リーダーは彼女らしかった

「貴女一人で入ってきな、2階の203教室に居る」

春奈はそう答えると近くの棒を手にした

会談・・・

「改めて自己紹介します私は大原優子、西の港のリーダーです」

暗くなった為ランタンの明かりに照らされた優子はエクボの似合うカワイイ女性だった

「キング鼻の下伸びてる」

智美が肘で俺をつついた

「キング?あぁ・・・そう呼んでいるのね・・・どうかしら私達と共存しない?」

「共存?」

「そう、キングを共有する代わりに私達が守ってあげる」

「断ったら?」

「こちらにも考えがあるって事ね」

春奈と優子の間の空気が張り詰めた

「ばっかじゃないの?」

智美は俺に抱きついた

「失格者を決めるのはキングだよ?私を傷つければ月末キングに殺されるのは貴女達よ?」

これはブラフだ、でも正直悪い気はしない・・・シャンプーの香りがした・・・

「へぇ・・・・まぁ今すぐって事は言わないけど考えておいて」

優子はクスリと笑うと教室から出て行った

夜が来る・・・

「ばれたかなぁ?かなぁ?」

俺を突き飛ばして智美が言った

「まぁバレたと考えた方が自然じゃない?」

里奈がクラッカーを食べながら言った

「ちゃんと演技しなよキング、せっかく智美が大サービスしたんだからさ」

真美も食事に戻った

「ちぇっ」

俺はペットボトルの水を飲んだ

「で、どうする訳?今夜・・・」

「俺は隣の部屋・・・」

「ばっかじゃないの?隣の部屋になんか寝かせたらキング明日の朝にはどっかのアジトで目覚めるよ」

里奈も結構キツイ性格らしかった

「手足縛る?ロープならあるし」

物騒な事言い出したのは真美だ

「そうね、そうしようか」

「てかなんで俺そんな扱い?」

「え?一応男だから」

春奈が当然の様に答えた

「あぁ・・・てか信用されてねぇなぁ」

「今日会った人間をどう信用しろと?」

「私は信用するよ?だってキング強気に出ないし・・・今のキングの力なら私達なんてどうとでも脅せるじゃん」

春奈と俺のやりとりに智美が割って入った

「なぁ・・・皆で共存ってのは無理なのかな?」

「無理よ・・・月末には誰か死ぬんだもん・・・誰だって生き残りたいもん」

智美がため息まじりに言った


ゆっくりと1日目が過ぎていった・・・

2日目・・・

「朝、毛布に居なかった時には裏切られたかと思ったよ」

屋上で景色を眺めていたら智美が上がってきた

「裏切らないよ・・・結構うれしかったし・・・」

「春奈達を悪く思わないで・・・不安なのよ・・・私もそう・・・」

智美はフェンスによりかかった

「なんで昨日知り合ったばかりの人達を信じられるんだ?」

「信じてなんかないよ、ただ判るだけ・・・ただそれだけ・・・いっそ昨日言ってたみたいな

関係になれれば良いんだろうけどね、中々気持ちはね・・・」

「あれ?俺マイルドにフラレタの?ショックだわぁ」

「ち、ちがうよ、そういうんじゃなくて・・・・もうっ」

智美は真っ赤になってふくれるとフェンスから離れて階段を降り際俺に向かってあかんべーをした

「・・・だってさ・・・どう思うよ?」

俺は景色から視線をズラさずに言った

「別に?決めるのはキングじゃない」

建物の陰から出てきた優子はそう言ってキャップを被りなおした

「たださ・・・負けたとは思ってないから」

すれ違いざまに優子は呟いた

「いつでも来ていいからね」

優子は背中を向けたまま手を振った

優子・・・

優子が俺に話したプランは単純にして効果的だった

自分が俺と交際し、その影響力を背景に島の散り散りのグループを

1つにまとめる・・・

智美も言ったが俺と「そうなる事」が最も有効で安定する方法だった

例えば今現在も智美達を取り込む、又はグループに入りたい人は沢山居るだろう

狭い島だしヘリポートの一件もある、俺がここに居る事は周知の事実だろう

そして智美が大きなアドバンテージを持っていると誤解もしているだろう

智美達の生命線はそこである、そこがバレたらあっという間に俺を浚いに

他の大きなグループが動くだろう・・・

多分これだけ浅い日数だ・・・8割がたブラフと読んでいるだろう・・・でもあと2割が確信持てない今

の現状では牽制しあうしかないのだ

逆に言えば動かない理由・・・根拠は「同じボートでここに来た」という不透明さと

「ボート内で智美と話していた」という薄い疑惑・・・恋心を抱く可能性・・・を否定できない

ただそれだけだった

逆に言えばその情報を他のグループは共有しているという事だった

そして今のやりとりを優子がどう扱うか・・・

そこが今後の動きを決める焦点だった・・・

会談

俺達が住んでいる教室の体育館、元々が小学校だったらしく大きさは特に大きくも

ない、ましてやそこに30人前後の人間が集まれば手狭に感じる

「ここはあくまで中立という事で私「小柴景子」が進行させてもらうけどいいよね?」

真ん中に立ったキレイな女性が言った、多分事前に決まっていたのだろう、反論もなかった

やはり最大派閥は優子グループ、10人を超える大所帯だ

続いては恵理グループ、ここも10名位いる

景子のグループは5名位か?

「話ってのはさ、何ていうか・・・平等じゃないな・・・って事なのよ」

景子は腕を組んで春奈を挑発する様に見た

2日の午前中・・・全員の関心事とはいえよくまとまったもんだ

「それでわざわざ大勢でここまで?ご苦労様だよまったくさ・・・」

春奈は笑った

「私達はキングを監禁しているわけじゃない、彼の意思でここにいるのよ」

まぁ間違ってない、しかし春奈が言ってる意味は違う

「そうね・・・それならキングの意思でこちらへ来ても問題ないわよね」

俺の頭の中でピリピリと「警戒音」が鳴り始めた・・・この女は相当に頭が切れる

「そうね」

春奈も気づいた・・・だから言葉を削ったのだった

「私達は合意に至ったんだけどキングに小屋を与えてそこで暮らしてもらおうって・・・

身の回りの世話は各グループから曜日毎に公平に出してね、夜はキングが好きな様にすればいい」

一斉に拍手が起こった、これも織り込み済みなんだろう

「なんか誤解してない?彼は人間の大人よ?まず彼の意思でしょう」

春奈は智美を見た、やはり仮初めの関係に過ぎない・・・

俺は泣きそうな表情でコブシを力いっぱい握っている智美の肩を叩いた

「とても良い話だと思うし感謝もしてるよ、遠慮なくそうさせてもらう」

智美は項垂れた

ブラフが砕け散った瞬間だった

ヘリポート

昼のヘリポートで事件が起きた、なんと新しい女性が二人運ばれてきたのだった

騒然とする中俺はそそくさと食料を持って帰ろうとする里奈を見つけた

声をかけた俺をちらっと見て里奈は歩き始めた

「智美さんは?」

「話しかけないで」

「ちょっと待てよ」

「私で良かったわね、春奈や真美だったら殴られてるよ裏切り者」

走ればいいのに早足な辺りに里奈の本心が見えた

「話位聞けよ」

「言い訳なんて男らしくないよ」

はたから見れば俺と里奈の痴話喧嘩だった



教室に戻るとやはり痛い視線が飛んできた

「あの時はあぁするしか他に手はなかった・・・決して皆を裏切ったわけじゃない」

「さてどうだか・・・」

真美が豆菓子を放り投げて食べた

「さっきの進行してた人も結構キレイだったじゃない?お好きにすれば?」

「好きにするさ」

廊下の足音に気づいたのは俺だけじゃないようだった、どうもドラマの様に

セリフとタイミングは合ってなかったが・・・

「お迎えにきましたよキング、さぁ恵理さんがお待ちです」

「悪いな、俺は俺の自由にさせてもらうよ・・・俺はここで食事をする、

恵理さんよろしく」

俺はそう言って近くの椅子に座った

王としての自覚

迎えを帰らせても智美は口をきいてくれなかった・・・

単純に会話の絶対数が少ないのだった

「さてと、お邪魔虫は消えますか」

里奈が立ち上がるとあとの二人も笑いながら立ち上がって教室から出て行った

「何ふてくされてんだよ」

「ふてくされてなんかない」

「顔に書いてあるぜ?」

「元々こういう顔なんです」

俺はますますふくれる智美を見て笑った

「まぁ・・・あれだ・・・俺はチェスボードの上に置かれた駒なんだよ・・・

自分の意思だけではどうにも出来ない局面も多い」

「私だって分かってる・・・あそこはあぁしなければ私達の立場が危うかったって・・・

でも嫌だったんだもん・・・不安・・・キング持っていかれるの・・・不安・・・だったし・・・」

「俺もな・・・不安だよ・・・この先の事・・・」

俺は窓の外を見た

王としての自覚2

「お熱い所悪いんだけどさ、ヘリポートまで来てくれってさ」

春奈が教室に駆け込んで来た

ヘリポートは騒然としていた、新しく来た二人の片方が持たされていたスマホ、

それが問題だった

「・・・というわけでこの島から「あがり」以外で出ようとしたら容赦なく撃っちゃうんだからねっ

君達の考えなんてこの全知全能の「ベルお姉さん」にはお見通しなのだぁ」

スマホの画面では教育番組の「お姉さん」っぽい服を着た涙ほくろのある女性がオーバーアクションで繰り返していた

「皆落ち着いて、絶対なんとかなるから」

優子は必死に爆発しそうな雰囲気を押しとどめていた

「悪い遅れた」

「あっ、キング・・・」

優子は体を寄せてスマホを一緒に観た

「大丈夫か?」

「なんとか皆は抑えてくれてる」

「違うよおまえだよ」

「え?」

「平気な訳無いだろ女の子なんだし」

「あ・・・うん・・・」

優子は少し体を離した

「皆聞いてくれ、多分この動画の言ってる事は本当だと思う・・・

イカダで脱出を試みて殺された人が居るって事だ・・・

逆に言えばこの島に居れば安全って事だ」

「どこがだよ、あんたが毎月二人殺すんだろーが」

どこかから声が上がった

「だったら今死になよ・・・ほらっ自分の意思でさ」

景子が言った

「生き残りをかけたサバイバルやってんだよ、嫌ならさっさと崖から飛び降りなさいよ」

恵理の声だった

「私達のキングが傷付いたり悩んだりしてないとでも思ってるの?そんな人なら生き残りをエサに

私達をどうとでもできるんじゃない?むしろそんな人であったなら・・・皆そうは思わなかった?

でも優しいから・・・「私達のキング」は優しいから皆不安なんでしょ?」

景子は俺を抱きしめた・・・それが・・・彼女の言葉は毒りんごだと分かっていても

俺はその甘美な味覚に身を任せてしまった・・・真に肉体を腐らせる毒は同時に美味でも

あるのだ・・・

2日目・・・夜・・・

「結局さ・・・言ったモン勝ちじゃない?恋愛って・・・」

俺は睡魔に襲われ薄れ行く意識の中、智美の声を聞いてた

「キングに「好き」って誰が最初に言うのか?って意味では私は絶対的に有利な

わけなんだけどさ・・・」

「言っちゃえば?少なからず嫌いではないでしょお互い」

真美の声がした

「付き合っていく間に気持ちがついてくる事ってあるわけだし」

里奈は窓を開けた、夜の風の香りがした

「なんか卑怯だなって・・・さっきへリポートで思った・・・

今そういう気持ちもないのにそういう事言っちゃうのは卑怯だな・・・って・・・」

「そんなんじゃ他のグループにとられちゃうよ?」

春奈は笑った

「そうなったら仕方ないよ・・・」

智美はそう呟いた

3日目・・・

「共闘?」

朝学校を訪れた優子は意外な提案をしてきた

「そう、一時キングを預けるから手を組まない?」

「昨日は好き勝手言ってきた癖に随分勝手だね」

真美が机に座ったまま言った

「無理にとは言わないけど敵は同じでしょ?」

優子は近くの椅子に座った

「智美どうする?」

「うーん・・・良いんじゃない?こっちにマイナスもなさそうだし」

春奈に俺の横に座っている智美が答えた

「恵理のグループにも話はつけてあるから・・・」

「仕事がお早い事で・・・」

春奈が嫌味っぽく言った

「私はこの島を1つにしたいの、その為にはキングの力は絶対必要・・・

今は利用させてもらうわ」

優子は俺を見て言った

朝食・・・

「少しは何か話せば?」

沈黙に耐えられずに俺は言った

「沈黙の美女ってのもオツなものじゃない?」

恵理は黙々と食事を続けた・・・


事の発端は1時間前に遡る

「・・・それがさ恵理と共闘する代わりにキングと食事させるって約束しちゃったんだよね・・・」

「はぁ?」

申し訳なさそうに言う優子に真美が言った

「ほら、食事は自由なわけで・・・1回でどうこうってわけでもないし・・・」

「今回の共闘、俺達・優子グループ・恵理グループ、3つ揃わなきゃ意味がない・・・仕方ないだろ」

俺が立ち上がると智美は不満そうに見た



「わりとアットホームなんだな・・・」

恵理の拠点は学校近くの集会場だった、そこに長テーブルを置いてメンバー全員で食事をしていた

「お気に召されたのならいつでもどうぞ」

「正直共闘の話、恵理さんは受けないと思ってたよ」

俺はパンをかじった

「ムカつくもんアイツ・・・排除するまで手を組んでも良いかなってさ」

恵理はちぎったパンをスープに浸した

「今キングが居るグループは私達を攻撃しないけどアイツはして来そうだからね、優子もそう

感じたから共闘路線を提案したんじゃない?」

恵理はパンを食べ終わると伸びをした

「正直こっちには利点しかないからね・・・そりゃあ手を組みますよ」

春奈の考え・・・

この島は基本的に温暖である、というより丁度良い位の温度なのである

夕方の屋上は心地よい風が吹き抜けていた

「屋上に呼び出すなんて、告白だったらやめてよね」

春奈は笑いながら近づいてきた

「たまには二人で話したいと思ってね」

「あら偶然、私もそう思ってたのよね」

春奈は隣に立つと風になびく髪を抑えた

「どうして共闘を飲んだ?はっきり言えばここだけがリスクを背負う話だぞ」

「やっぱね・・・」

春奈は笑った

「キングはさぁ・・・なんで踏み出さないの?」

「え?」

「智美はあんな性格だしさキングが踏み込まなくちゃ始まらないよ?」

春奈は笑った

「これでもあんた達の事結構好きだし信頼もしてるんだよ・・・キングは簡単には

流されない・・・ってね・・・」

「そりゃあ・・・だな・・・」

「私は今のまま・・・誰が島を仕切るとかなしに皆で自由にこの「サバイバル」を生き抜けたら・・・って

思ってんだよね・・・あたしらは5人でさ・・・誰も足さないし誰も引かないで・・・」

「あの景子っていう人だってちゃんと話したら案外良い人かもしれないじゃない?

キングに抱きついたり誘惑したり・・・それって皆やりたくても出来ないのに

堂々とやっちゃったからイライラしてんだし、アドバンテージ抱えられたと焦ったんでしょ?

私達にとってはどうでも良いじゃないそんな事・・・

私達には智美が居るんだからさ・・・

だからどうでも良い火種を抱え込みたくなかったのよ」

春奈は空を仰いだ・・・

学校・・・

それから数日して大きく変わったのは所謂小グループのいくつかが学校に住み始め

干渉はし合わないが1つの大きなグループとなり、全体は大体4グループに分かれたと

いう事だった

最大派閥はやはり優子グループ

ついで恵理

春奈

景子グループだった

「まぁいいんじゃない?教室余ってんだし」

それが春奈の意見だった

「来週だね・・・月末・・・」

真美が夕食の時に呟いた

「そっか・・・月頭から居るわけじゃないもんな・・・」

俺は答えて少し考えた

「結局何も出来なかったな」

「ん?」

智美がマグカップでスープを飲みながらこちらを見た

「誰を選んだら良いんだろ・・・憎くもない・・・親近感さえあるこの島の仲間なのに・・・

他の38人を生かす為に2人を選ばなきゃならない・・・」

俺は教室を出た、何故か誰とも一緒に居たくはなかった

「キング・・・」

その女はまるでそれを待っていたかの様に暗い廊下に現れた

綺麗な黒くて長い髪をした女だった

「これが「セレクター」です、一覧で女性のサムネを表示して番号を打ち込めば月変わりの0時に首輪の

爆弾が爆発します・・・指定受付は末日の前日の23時59分までです」

女はスマホを俺に渡した

「それはこれからこの実験終了まで使うモノですので大事にお使い下さい

ちなみに充電は「振動発電」ですので身につけていれば大丈夫です、使うの1ヶ月に1度ですし」

「お前は?」

「「観察者」とお呼び下さい・・・ちなみにそのスマホで私に連絡も出来ます、何かありましたらご連絡下さい」

ついに姿を現した「主催者」・・・しかし今末端の彼女をどうにかしたとして何も変わりはしないだろう・・・

彼女は「交換可能な部品」だからこの島に居るのだった

逃げちゃえば・・・

「こんな所にいらしたのですか・・・」

海を一望できる丘で観察者は俺に言った

「どこに居ようと自由だろ」

「あらかじめ言っておきますがくだらない自己犠牲はやめてくださいね」

「自己犠牲?」

「そう・・・自分が死ねばいいっていう自己犠牲・・・」

俺は心を読まれた気がした

「貴方が死んだ場合全員を殺します」

観察者は冷静に言った

「それでは期日までの判断を・・・」

観察者は用は済んだとばかりに居なくなった



「考え方変えてさ「私たちの為に人を選ぶ」って考えたら?」

夕食の時智美がそう笑顔で言った

「ありがとう・・・でもこの痛みは俺が自分で背負わなければいけない痛みなんだよ」

俺はそう答えた

月末が近づいていた・・・

風が変わる・・・

夜中に起きた爆発音を俺はどこか他人事の様に聞いた・・・

屋上を吹き抜ける風は少し冷たく、手に持った缶ビールは

うっすら汗をかいていた・・・

今死んだ二人に罪はない・・・恨みも・・・そして「交流」すらなかった

彼女達がどのような女性でどんな生い立ちだったのか俺は知らない・・・

知ろうとも思わなかった・・・知るのが怖かった・・・

「これで良かったんだ・・・」

俺はビールを一気に飲み干して屋上の床に叩きつけた


「三人?」

ヘリポートのコンテナから出てきたのは「二人」ではなく「三人」だった

「だれか自殺したんでしょ?馬鹿じゃないの?たすかった命なのに・・・」

隣に立った景子が言った

「死にたい奴は死ねば良い・・・それは前にも言った筈だ」

景子は自分に向けられた非難の視線に答えた

「甘いのよ・・・皆心のどこかで思ってたんじゃないの?「本当は死なないんじゃないか?」

でも実際死んで取り乱した・・・そうね私もどこかでそう思ってたわ・・・

でもさ、あの爆発音聞いた時に思ったんだよね「始まった」って・・・」

「始まった?」

景子は質問した恵理を見て冷酷に笑った

「そう・・・「本当のサバイバルゲーム」が・・・」

景子の一言で波の様にざわめきが起こった

命の価値・・・

「死にたければ死ねば良いって・・・それは貴女が綺麗で自信もあるから

言えるのよ・・・私達は毎日死ぬ恐怖と戦っているの、そんな苦痛から

逃げたいと思っちゃダメなの?」

それは何回か見た事のある名前も知らない女性だった

「どうせ死ぬならその命役立てなさいよ・・・提案よ、自殺したい人はキングに

名乗り出るの・・・そうすれば「その月死ぬ枠」は埋まるわ?どうかしら

キングもその方が気が楽でしょ?」

景子が挑発的に言った

「ダメだ、それを認めてしまうと弱い立場の人間が無理やり立候補させられる

可能性がある」

「意外にバカなのね・・・弱者が強者の糧になるなんてこの島の外でも普通に行われているじゃない」

俺は景子の頬を叩いた

「何するのっ」

「強がってんじゃねーよ、本当は自分が選ばれるんじゃないかって怖がってるくせに・・・」

「何言ってるの私は・・・」

「悪役を演じれば島がまとまるもんな、韓国や中国の反日、ナチスのユダヤ人迫害・・・

アイツが悪だって指さす事で人間はまとまりやすいもんな」

「私はそんな事・・・」

「悪役は俺だけで十分だ・・・月に二人罪も無い女性を殺す冷酷な殺人鬼・・・それで十分だ」

俺はその場に背をむけた・・・

それぞれの・・・

「おっす」

俺が屋上で考えていると里奈が後ろから声をかけてきて

振り向く俺に缶ビールを投げて渡した

「珍しいな里奈が単独で来るなんて」

この頃になると俺達は奇妙な「仲間意識」が芽生えお互いを呼び捨てにしていた

「ウチのお姫様はスロースターターだからね」

自分の分の缶ジュースの口を開けて金網によりかかった

「ねぇ私に乗り換えない?」

「え?」

「冗談冗談、ドロドロは苦手だよ」

里奈は一瞬真面目な顔をした後笑った

「智美はさ、真面目なんだよ・・・本当は今どうすればいいのか分かってるのに

ちゃんと自分の中で解決してからじゃないと動けない・・・」

「頑固なだけだろ」

俺は笑って里奈の隣に立った

「キングのさ、言いたい事考えてる事・・・間違ってないよ?

でもそれは理想だよ・・・

いいんじゃない逃げても・・・平気なわけないじゃん人殺しなんて・・・

全部自分一人で背負って自分嫌いになっちゃう位なら逃げちゃいなよ

キングの事を一番理解してるのはキングなんだよ?

嫌いにならないで自分を・・・」

里奈はまっすぐに俺を見ながら言った

「里奈・・・」

ガタン

その音に気づいた時にはもう遅かった・・・

本音・・・

逃げ出した智美に追いつくのは左程難しくなかった

「何、何の用?」

それよりも機嫌を直す方が大変そうだった

「里奈かわいいもんね、いいんじゃない?里奈に乗り換えれば

結局何も変わらないしね」

「待てって・・・」

「結構プレッシャーなんだよね誰かさん私以外には凄く優しいし」

「だから話を聞けって」

「嫌なんだもん・・・私だってどうしたら・・・キングがどうして欲しいか位わかるよ

でも嫌なんだもん、気持ちがついてきてないのに・・・まだハッキリできない

のに上辺で優しくとかしたくないんだもん・・・」

「俺も同じだよ」

俺は近くの机に座った

「智美には気を遣いたくないんだ・・・ありのまま・・・自然体の俺で居たいんだよ」

楽園島

楽園島

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-04-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 1日目・・・
  2. 数時間前・・・
  3. ヘリポート
  4. 教室・・・
  5. 会談・・・
  6. 夜が来る・・・
  7. 2日目・・・
  8. 優子・・・
  9. 会談
  10. ヘリポート
  11. 王としての自覚
  12. 王としての自覚2
  13. 2日目・・・夜・・・
  14. 3日目・・・
  15. 朝食・・・
  16. 春奈の考え・・・
  17. 学校・・・
  18. 逃げちゃえば・・・
  19. 風が変わる・・・
  20. 命の価値・・・
  21. それぞれの・・・
  22. 本音・・・