「痩せたいですか?」に釣られたデブのお話

まだまだ日本では認められていない男性同士の恋愛を助力する、ある有名なゲイ雑誌がある。その雑誌の広告ページに毎回載っている、とある広告があった。

よく目立つ文字で「痩せたいですか?」と、書かれている。

男性同士の恋愛といっても、様々な人がいる。

デブ専と言われる、デブばかり愛する人。
細専と言われる、細身の人ばかり愛する人。

この広告は、ゲイで、かつデブな人に向けられた広告だった。

痩せたいですか?に続き、「新作ダイエットサプリのモニター募集」と書かれている。
条件はこうだ。

・7日間、サプリのモニターとしてサプリを飲み続けて欲しい。
・当社が用意する部屋で、研究スタッフと7日間、共同生活。
・モニターの結果にかかわらず15万円を報酬としてお渡しします。

これにつられるデブは少なくないが、この広告には重大な罠が仕掛けられていた。

それは、共同生活するスタッフは、みなデブ好きの野獣ばかりということ。
果たして、金に釣られたデブと、デブが好きなスタッフ、どのような共同生活を送るのでしょうか……

高木豊(仮名)

僕は高木豊(仮名)、例に漏れずあの雑誌の愛読者で、例に漏れずあの広告に応募した肥満さんです。身長は165センチ、でも体重は121キロ。年齢は21歳、現在フリーターで、ちょうど仕事が切れたので応募しました。

痩せるサプリ飲みながら、スタッフさんと共同生活して7日で15万円って、日給2万円以上ということで、かなりの魅力を感じました。

筋肉のないブヨブヨの121キロに、どれほど効果があるのかは、わかりませんが…
僕はよく、スベスベ肌だねと言われます。頭部以外の体毛が薄く、色白。家に引きこもりがちだったので、焼けることがなかっただけですけどね。

さて、そろそろ約束の時間です。
都内某所、公園で15:00集合……とはいえ、こちらからは写真付き書類を送付しているのですが、スタッフさんはどんな人かわかりませんので、声をかけられるのを待つだけです。

僕は同性愛の雑誌を読んでいますが、実はまだ経験がありません。声を掛けたことも、かけられたことも、そういう知り合いができたことさえなくて、スタッフさんはたぶんノンケ(同性愛者ではない人)だと思いますが、こういう待ち合わせはドキドキします。

「豊さんですか?」

背中から声をかけられた、完全な不意打ちに、動揺が隠せません。

「あ、あ、はい。スタッフさんですか?」
「あぁ豊さんですね、よろしくお願いします。俺は株式会社ヤセプロ(痩せるプロジェクト!)の共同生活担当スタッフの、白崎悠といいます。早速ですが、これから一週間、生活していただきます部屋へご案内しますね。」

驚きました。
白崎さんも、僕に負けず劣らずの色白の巨体でした。よくわかりませんが、確実に三桁はあります。僕はデブ専デブというジャンルに位置し、自分と同じように太った人が好きです。ノンケでも好みのデブさんと共同生活するなんて、夢みたいです。

僕は案内されて、都内のとあるマンションへと立ち入ります。
そして始まったのです、予想だにしなかった共同生活が……

1日目

14:00、マンションの一室に到着。
寝室、居間、台所……お風呂、トイレ。実にシンプルな構成の洋室です。寝室だけ、畳の和室でした。

白崎さんは、荷物を片付け始めていて、僕もそれにあわせて荷物を片付けていきます。

「豊さん、こういうのは初めてですか?」
「え、あ……はい、少し緊張してます……」

ほんのり、タバコの匂い。白崎さん、タバコ吸うんですね。
僕は吸いませんが、なんだかタバコの匂いって男!って感じで好きです。

「あはは、緊張しなくていいですよー。それと、俺あんまり敬語得意じゃないんで、豊さんも敬語ナシでいいですよ。同い年ですし。」

とはいえ、さすがスタッフとだけあって、こちらが敬語を崩すまでは敬語を辞めないところは、ビジネスの香りです。では、早速……

「じ、じゃあ敬語やめるね。白崎さん、何歳?あと、僕とあんまり体格が変わらないけど、何キロなの?」

「悠でいいよ。……んー、もうすぐ21になるよ、履歴書見たけど、同い年!だから派遣されてきたのが俺だったのかもしれないけど。あと、俺は168センチ118キロ、豊くんよりちょい軽いかな?変わらんか…」

笑いながら荷物を片付け終わると、悠さんは僕をじっと見つめてきた。

「じゃ、悠…くん、でいくよ。呼び捨てはあんまりしないんだ」
「そう?俺は豊って呼ばせてもうね?それにしても、俺もだけどこれくらい太ると服とか選べないよね」

スーツ姿の悠くんは窮屈そうだったスーツを脱いで、シャツになり、居間の椅子に座る。ベルトの上に乗るお腹、筋力を感じない柔らかそうで豊満な胸。パンツは、ぱつんぱつんで余裕がなく、太股が今にもはち切れそう。

「うん。今日はパーカー着てきたけど、ほぼスウェットだね。…あんまり選べないし、オシャレできない。スーツもサイズ大変じゃなかった?」
「大変大変、サイズないからさ。あ、そうだサプリの説明だけ先にしておくね。サプリは常温保存でいいんだ、このケースに入れて布団の枕元に置いておくよ。寝る前に二錠、水で飲むかそのまま飲んでくれたらいい、それだけ。」

「それだけで痩せられるの?」
「そのモニターだよ、だからまだ実績がない新作なんだ」

苦笑を返してきた悠くんが、可愛い。

「痩せたいですか?」に釣られたデブのお話

「痩せたいですか?」に釣られたデブのお話

  • 小説
  • 掌編
  • 成人向け
  • 強い暴力的表現
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2014-04-07

Copyrighted
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  1. 高木豊(仮名)
  2. 1日目