悲路至(ひ・ろ・し)

ネット婚活に登録している、46歳。まもなく47。
30代の頃に結婚して離婚して、現在は独身、子供なし。
出会いを求めていないといえばウソになるが、求めているというには、
いざ恋愛が始まったら、またそれを継続させるだけの気力があるか
どうか自信がない。
体力もない。ほとほと呆れる。
僕だって男なのだと夜の街に行ってみれば、呑んだ勢いで来たって
男として自信をなくすような結果となり、下着をあげながら情けなく、
帰りの電車の中では涙を流して眠っていたようで、はっと目を覚まして
頬に流れる涙を感じ、ふとこんな年代になったことを想う。

学校を出て入った会社で、高村 弘と言う上司がいた。社内の広報誌の
編集部長を兼ねていたが、そこではみな、名前をもじって遣っていた。
営業事務の朱里(あかり)さんは、「灯」、寡黙な経理マン、誠吾氏は
「静」を「せい」と読ませたり。
中でも高村 弘氏は「ひろし」に「悲路至」という字を当てていた。
当時は、「なるほど当て字か」くらいにしか思わなかったが、もう20数年
前の話である。
高村氏、誠吾氏も定年退職されたと聞くし、朱里さんは、あのころまだ
20代前半だった。
今はどうしているだろう。そんなことをふと思う。

悲路至(ひ・ろ・し)

悲路至(ひ・ろ・し)

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 成人向け
更新日
登録日
2014-04-06

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