青い鳥と妖精

 青い鳥はいいました。
「あなたはどこへ行きたいの? 僕がつれていってあげましょう。この背に乗っておいきなさい」
 緑の森はひろがってここからは先はみえません。なので少女はいいました。
「こわいわ。この先には何があるの? ママにこの鍵を届けてといわれているの」
 青い鳥は頷きました。
「それでは僕が見てきてあげる。それまでじっと待っているんだよ」
 彼は小さな羽根を羽ばたかせぱたぱた飛んでゆきました。
 少女は羽を魔法でうしなっていて、飛ぶことができない妖精でした。薔薇のママは少女に鍵をあずけて羽根を得にこさせたけれど、青い鳥が味方をしてくれたのでした。
 ほどなく帰って来た鳥を羽根を失った少女はみあげました。
「羽根の箱をもった職人さんはみつかった?」
「みつかったよ。でもあちらは雨が降っていたんだ。だから、しっかり僕の羽毛につかまって落ちないでね」
 少女は鍵を背中にくくりつけ、青い鳥の背にのってまだ晴れた空へ飛びました。
下をみるとママである薔薇がツタの手をあげ少女を見送ります。
「いってらっしゃい。いってらっしゃい」
 空の飛行は冒険でした。妖精の少女はそんなにたかくは飛びませんので、花のちかくにいればいいのです。
 薔薇のよこから離れたのはきょうがはじめてではありません。羽根をなくすまえにであるきうばわれてしまったのです。くすくす妖精の羽根をもった銀の玉はわらいふよふよ飛んでいってしまいましたので。
 霧みたいな雨がふってきました。青い鳥は森へおりてって一枚はっぱをついばみました。少女はその葉をかぶせてから雨をしのいでとんできます。
少女は花畑いがいの場所をしりました。林や泉、湖や草原。とても綺麗な場所ばかりです。
 小枝にとまって緑のしたで休憩です。
「もうそろそろ悪戯をした銀の光りがたくさんあつまる洞窟だよ。いってみるかい?」
「こわいわ。きっと羽根でかれらはあそんでる」
「それじゃあ、羽根をつけてくれるおじいさんのところへさきにいくかい?」
「おねがいします。鳥さん」
 青い鳥はたくさん羽根をやすめましたから、ふたたび小雨のなかをすすみます。
 しばらくすると、草のたくさんおいしげったところに来ました。森のなかは葉で雨がぽたぽた少しするだけで、まだまだしのげるみたいです。なので少女は傘にしていた緑をはずし、森の中をみまわしました。
「ほら。こちらへおいで」
 青い鳥があるいていき彼女も草をかきわけあるいていきます。洞穴があいていて少女はもぐらがでてきてスカートのすそをつまみました。
「おじいさん。こんにちは。この鍵をもってきたの。わたしの羽根をちょうだいな」
「おいで。おいで」
 もぐらは小さなめをしばたかせて促しました。洞穴はまっくらで何もみえませんが、もぐらにはみえているみたいなのです。入り口をふりかえると青い鳥がみています。
「いってきます」
「いってらっしゃい。いってらっしゃい」
 奥へついたのでした。少女は鼻をもぐらにあててとまったのでそれが分かりました。
 まっくらな中はカチャリと鍵のおとがして、かたんと箱があいた音がします。
「おじいさんおじいさん。わたしに合う羽根みつかった?」
「ちょっとまっておでよ、妖精さん。はてどの箱だったかな?」
 少女はふあんになって暗闇をみていました。しばらくするとあちこちで箱があく音がしますから。薔薇の妖精たち専用の箱がいくつもあってすべて調べているみたい。
「みつかったよ。さあお外へおいで」
 また今度は引き返していきもぐらと外へでてきました。
「これは綺麗な羽根だねえ」
 青い小鳥は感心し、ピンク色の羽根をみつめました。
「ああ。この羽根のいろだわ。おじいさん。どうやってつけていただける?」
「これにはちょこっと技がある」
 もぐらは少女のせなかに羽根をもっていきました。
 そしたら蜘蛛をひっつかみ、糸をぐんぐんだしてきてちくちく草のさきでぬいはじめました。いたくもかゆくもありません。蜘蛛はふたたび巣にもどっていって少女はそれをみあげました。
 ほどなく羽根がつきました。
「雨が止むまでとべないだろう。中でなにかのんできなさい」
 晴れた空をみあげると、もぐらのおじいさんにみおくられ青い鳥と妖精はとびたちました。
「さようなら。ありがとう」
 鳥が道しるべになって、洞窟へとやってきたのです。
 そこには銀の光たちが羽根を舞わせてあそんでました。
 季節ごとに妖精の羽根は生えかわります。赤ちゃんから大人になるまで50回もかわるのです。なのでそのとき銀の光がかきあつめ季節のおわりに宴会をします。
 少女の羽根だけ違いました。まだ子供の銀の玉がまちがえて可愛い羽根をとっていったのです。なのでそれをとりかえして妖精の箱にいれるのです。
 妖精は羽根をみつけました。彼女は鳥ととんでいきピンクの羽根を抱きかかえます。
「これがわたしの夏の羽根」
 鳥はうなずきほほえみました。
 銀の玉たちはうかれさわいで小さなふたりに気付きません。しずかにそっとでていって、洞窟を逃げていきました。
 暗くなるまえ洞穴にきてもぐらに羽根をあずけました。それをまたまた「どれだったかなあ」と殻の箱をさがしては、みつけてその中にしまいました。
「また羽根をおとした妖精がいたら、これをつけてあげなけりゃ」
 四季のおわりに妖精たちはあつまって、花飾りをまとっておどります。それで手をつなぎ弧になって季節の羽根がぬけおちていく。
 冬の雪のうえだったり、初夏の草の上だったり。秋の茜の紅葉うえ。
 もぐらがはんぶんあつめて箱に、はんぶん綺麗なもの好きな銀の玉があつめてはたくさん遊んだこころで元気に仕事をするのです。夜の星をひからせて、朝露のひかりを輝かせます。
「鳥さんどうもありがとう」
 森のいりぐちでスカートのすそをつまんでお辞儀をしました。青い鳥はほほえんでおみやげの薔薇をくちばしに空へ飛んでいきました。
 ママのところへきた妖精はピンクの羽根をみせました。
「これは若いママがつかった羽根ね」
「とてもよく似あっている?」
「とてもよく似あっている」
 少女はよろこび踊りだし薔薇の廻りをはばたきました。秋の薔薇はまたきれいで、やさしい香りをただよわせ夜のじかんへはこびます。
 薔薇の花びらにくるまり少女はねむりにつきました。

青い鳥と妖精

青い鳥と妖精

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 幼児向け
更新日
登録日
2014-04-05

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