赤と黒

地下格闘場「シンデレラファイト」

都心から少し離れたS駅改札に希恵は居た

「坂上希恵さん?」

平日の昼間ともあり待ち合わせらしい人もまばらで

待ち人もすぐ希恵に気づいた様だった

「貴方が・・・」

「『陣内ジム』の陣内ミチロヲです、こっちが由梨」

キャップを被った女性をミチロヲは紹介した

「どう思う?」

「そんなに強そうには思えないけど?」

由梨の挑発的な視線に希恵は真正面から対抗した

「まぁ所属の条件とか色々あるからジムに行こうぜ」

ミチロヲがそう言うと由梨はミチロヲにくっつく様にして歩き始めた

「情婦が・・・」

希恵は小声で吐き捨てる様に言った


『陣内ジム』は駅近くの雑居ビルの地下にあり、広いとは言えなかったが

2面のリングとサウナ・シャワー室を備えた立派なモノだった

「坂上希恵、関東中学空手選手権2位か・・・」

かすかにシャワー室から水の音が聞こえてる・・・由梨が使用しているのだった

「高校へ進んでから空手は?」

「辞めました・・・でも自信はあります、この大会も準決勝で左足挫いちゃったので

勝てませんでしたが万全なら絶対に・・・」

「試合で1敗でもしたら俺の奴隷になるって電話で言ってたけどさ・・・本気なの?」

ミチロヲはテーブルの上に履歴書を置いた

「はい・・・その代わりそれまでは自由で居させて下さい・・・」

「まぁ希恵さんカワイイしそれ位のワガママは聞いてもいいよ・・・たださ、借金って言ったって

それは彼氏が背負ってるモノだし、自分の彼女にこんな賭け闘技場を教える

男だぜ?ここで引き返すのも手だとは思うけど?」

「いえ・・・これしか・・・ないんです・・・」

希恵は決意を固めた目で言った・・・

スパーリング

シャワールーム隣のロッカールームにはいくつかロッカーが置いてあったが

使用されているのは由梨が使ってるらしい1つだけだった

そこで道着に着替えジムに戻ると由梨がリングの上で柔軟をしていた

Tシャツにハーフパンツ、フィットネスジムで軽い運動をする様な格好だった

「今から由梨とスパーリングしてもらう、まぁ腕試しって感じかな」

ミチロヲが言うと由梨は柔軟を止め立ち上がった

先ほどはキャップに隠れていてよく見えなかったが素顔は猫・・・というより

猫科の捕食者を思わせる目をした美形の女性だった、女子高だったら

同姓にモテそうなタイプだった

「無敗で20連勝して地下のクィーンになるって言ってるんだって?」

由梨は均整のとれた肉体に細いがバネのありそうな手足をしていた

「ルールはオープンフィンガーグローブ着用、あとは危険があるので裸足で上がる事、

当然凶器、目潰し噛み付きは禁止・・・いいね」

希恵が柔軟を終えるのを待ってミチロヲがマウスピースを渡した

「本番はタップかKOだけど今回はあくまで希恵さんの実力を見るだけだから俺が止めたら

試合終了でいいね」

リングに上がった二人は頷いた

「あれ?道着着て試合するの?」

「空手ですから」

「ふーん・・・まぁいいか・・・」

由梨はニヤリとしてからマウスピースを口に入れた

スパーリング②

細かくステップを踏む由梨と慎重に動く希恵・・・

ファーストコンタクトは希恵だった

相手との距離を詰めるべくミドルキックを牽制に放った

希恵はこの右ミドルからの連撃を得意にしていた

しかし直後これが「空手の試合」ではないと思い知らされた

由梨は片手で希恵の肩の道着を掴んだ

「ちっ」

道着で肩が回らない希恵は体制が崩れた

その隙を由梨は見逃さず襟を持って腰の回転でマットに投げた

その投げはダメージを与えると言うよりマットに転がす投げだった

「やばいっ」

希恵はとっさにマウントを避ける為に丸く身体を縮めた、マウントを取られれば

空手しかやってきていない希恵に勝ち目はない

しかし由梨はマウントをとらず希恵の腕を持つとそのまま十字固めに入った

「そこまで」

ミチロヲの声で由梨は離れた

「話にならないわね」

由梨はさっさとリングを降りた

「待って・・・」

「これが実戦なら貴女はミチロヲさんの奴隷よ?ミチロヲさんも莫大な損害を受けてる

弱すぎるわ」

由梨はミチロヲが渡したミネラルウォーターを飲みながら言った

「由梨は来週デビューのまだひよっこだ・・・希恵も来月デビューしてもらう、それまでにここで少しは強く

なっておく事だな」

希恵は何も答えられなかった

由梨デビュー戦

新宿都庁近くの地下にある格闘場「シンデレラファイト」は異様な熱気に

包まれていた

女性が傷つくのを見るのが好きなサディストやここで一攫千金を夢見る

博徒達、第3試合に由梨の名がコールされた

「相手はレスリングですね・・・」

ミチロヲと希恵はリングサイドから試合を観ていた

「希恵ならどうする?」

「とにかく相手のタックルを警戒します・・・相手がレスリングなら捕まらなければなんとか・・・」

「そうか・・・」

相手は童顔で髪の長い少女、手足の筋肉は鍛えられておらず「型を習っただけ」という感じがしていた

「動く」

ミチロヲの声より早く由梨が仕掛けた、相手・・・唯の着ているワンピースの水着を掴むと強引に上体を引き起こしロープへ押し付けた

「決着だな」

由梨はそこから飛びついての三角絞めに入った・・・

敗者への制裁・・・

「初戦勝利おめでとう、完全勝利だったな」

控え室に入るともう私服に着替えている由梨にミチロヲはペットボトルのお茶

を投げた

「楽勝」

由梨はフタを開けると一口飲んだ

赤と黒

赤と黒

  • 小説
  • 掌編
  • 成人向け
  • 強い暴力的表現
  • 強い性的表現
  • 強い反社会的表現
更新日
登録日
2014-04-04

Copyrighted
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  1. 地下格闘場「シンデレラファイト」
  2. スパーリング
  3. スパーリング②
  4. 由梨デビュー戦
  5. 敗者への制裁・・・