Devilishness

★Devilishness 2002.3

あたしは愛を探し求める。
キャンドルの灯りと、月明かり、ランタンの灯りの下で白に銀の糸のローブを翻し、黒の唇はまだ男の唇を探し求めている。狂った薔薇の様に妖艶に舞っては子猫の様に笑う。しなやかに。
黒い毛皮を張り巡らせたアンティークのソファに腰を滑らせて切り株のテーブルの上のワインを飲んだ。火にかざして年月を重ねた葡萄酒の輪は滴り落ちる。今日も火炙りにされた母の灰をなぞって微笑む。
今日も魔女は媚薬の瓶の数を増やす。透明の小瓶を選んで作り出す。
大きな壷の煮え立つ仲に深紅の薔薇を浮ばせ、煮え立った時に煎じたハーブを入れる。金色の蜂蜜を大さじ2杯に、秘伝の薬を一滴、赤子の血を一滴、少女の血を二滴垂らす。一週間月光と春の夜風に晒した熟すリンゴの擂った物を入れ、大きな勺でゆっくりかき混ぜる。再び深紅の薔薇を浮ばせての繰り返し、20回の行程。
その壷の中の薔薇の花弁を取り出して、甘い透明のシロップに浸して4日間氷で冷やす。それを砕いて溶けた頃にピンクの液体になったら細かい薔薇の花弁を取り除いてはシロップに黒猫の髭とカラスの羽根を燃やした煙で燻した薔薇の葉を浮ばせて一夜で取り出し、青の洞窟から垂れた水で薄めて小瓶に入れて、一週間の夜を月光に照らす。
「完成ね……。」
今日も魔女は月光浴をしながら沸き立つ池に薔薇酒を入れて浸かる。キャンドルを浮かべて、周りの花の木の葉を摘んでは浮ばせて、満月が雲に隠れると池を朧月を見ながらたなびく様に。温かく吹く風を泳ぐ。黒のシルクのバスローブに包まって部屋までの御影石の石畳の道。
林を進む時、いつでも魔女は思い出す。少女の時代にママと歩いた昼下がりのこと。いつでもテラスの椅子に腰掛けては、白ワインに柘榴の実を一つ一つ落としながら男の話をする母。
その日も魔女のママは離れた町から赤子を連れて来ては少女の魔女にテーブルの下で子猫と共にあやさせては、甘い甘い蜜と毒の入ったミルクを造っては赤子に飲ませていた。木漏れ日が赤子を死へと導く。
紫のローブを翻して母は嫌う太陽の陽射しを目を細めて見つめた。金の糸が輝いた。
ハープの弾き方を少女の魔女に教えては優しく頭を撫でる。
そんな母の事を。
部屋に戻ってから冷めない内に林檎と薔薇を擂った。そして湧き水で薄め、檸檬の汁を絞った水を体中に塗ってからお香を焚く。
ラム肉をハーブで炒めて、ワインを入れて、香草を入れて黒胡椒を振り掛ける。オリーブオイルの鍋から皿に移しては、檸檬のスライスとサニーレタスのサラダ、リキュールをグラスに注いで食事をとってから一日の日課として今日も林を散策する。
明星の白い月と、遠くの朝陽の昇る前の紅の空は段々青白くなり白の陽があらわれる。今日も魔女の甘い薫りに吊られて陽が昇ると共に目覚めた蝶が舞っては、目覚めた花を余所目に寄って来る。
一ヶ月前に注文を受けておいたジュエリーを小箱に入れて依頼者の自宅まで馬車で届けに行く事も兼ねる。今日のその自宅はこの国の城の王妃だった。
魔女はジュエリーを作って生計を立てている。蛇をモチーフとして、オニキスの石、ブロンズのジュエリーは、イヤリング、ネックレス、ブレスレット、アングレット、リング、香水容れセットを全て揃っている。そして、カラスをモチーフにしたシルバーのジュエリーに黒のダイヤ、そのカラスのカフス、タイピン、リング、短剣と鞘に掛け帯は王妃から王への贈り物だった。
城に到着して、王妃の部屋に通された後にセットを取り出して王妃の前で包装を施す。
金の織り込まれたシルクの布の上に作った細かい装飾のボックスにシルク綿を敷き薔薇のポプリを乗せてから再びシルク綿、そして黒ビロードをかぶせてジュエリーをセットする。布に包んで豪華に薔薇の装飾をして白に金縁のクッションに乗せて微笑んで王妃に差し出す。
「さあ、このラム皮に王へのメッセージを御筆なさって下さい王妃。」
「ええ。」
羽根筆と黒インクを差し出す。
「今回も素晴らしい出来よ。」
「光栄です。」
姿鏡に映し出される王妃に魔女はジュエリーをつける。
「王妃。とても、お美しくございますわ。」
袋に金貨をもらって馬車で帰る。
その途中で、母が火炙りになった大広間に出る。吟遊詩人が琵琶を持って語り歌を歌っていて、ゼネブ神の像の噴水に差す陽に照らされている。その広場に馬車を停めて隅で広がる出店の一つに行く。
「あら。ごきげんうるわしく。」
店の主が魔女に気付いて微笑み掛ける。微笑みを返す。
広場で踊る。差し出す木箱に銀貨が投げ込まれる。駆けて来た親子を迎える。
「どの医者に見せても症状がなかなか良くならなくて……」
「おまかせを。」
部屋に戻って馬車に乗せた子供に調合した薬を飲ませて毛布で温める。
「様子を見ていてあげて。症状が軽くなってきたらミルクのパン粥のあとにこの薬を飲ませてあげるといいわ。」
「ありがとうございます!」
親子は魔女に頭を下げて自宅に入って行った。すぐに母親が出て来て馬車の去って行く所を呼び止めて、作っておいたハチミツパンと林檎のジャムを籠に入れて手渡した。
「まあ……。よろしいのに。ありがとう、」
魔女は町の者達から昔の時代から尊まれている。そお逆も居る。
魔女と呼ばれる女達は、町から外れ人々を避け、自然の中で生き、独自の行き方で法に縛られることなく生きる女達のことを指した。その為に美にも健康にも厳しく発想も生活習慣も一風変わっていた。
それらの女達は男を手にする為に自らを磨き、オーラのうちに、作戦の内に男を操る事が得意だった。
魔女達は老いる前に誰もが自らを一生涯に捧げた男に殺させる。
林に生きる女。時として、女は鬼に豹変する姿は悪女、魔性そのもので、魔女と呼ばれた。林の鬼の女は人の言う儀式というものを行なう。新月の夜のことに限った。
平地で松明を燃やし、舞いながら自分と違った、もしくは自分を殺そうとした若い男を生きたまま薬を飲ませ炎で燃やす。その灰を部屋の壁に重ねる。終始微笑んでいる。それらの姿を人々が見る事はないものの、噂は流れて来ている。事実行なう女もいれば行なわない女もいた。この魔女は行なった事は今のところは無い。
母やよく少女の魔女を連れて行なっていた。その、若い男の燃えていく炎と月明かりの眩しさに照らされ魔女の微笑む妖しい舞は確かに鬼女だった。
それはまだ普通に等しい魔女だ。普段はよく人々のために役立ち、日常少し掛け離れた生活を送る。
稀にいる女は、独自で編み出す毒を嫌いな他人達に飲ませ狂わせて死んで行く様を愉しんだ。自分よりも美しい仲間の魔女や、自分に難癖をつける人々や、気に入らない王政をする王や議員を。
魔女はよく城の晩餐会に呼ばれる物だ。そこでの待遇に気に入らないと、それらの女達は王に共に踊る事を申し出て、美しさで魅了し、そして王妃の前で王は魔女に本気になった刹那に王はその女に毒の仕込まれた短剣で刺され魔女は屍に火を放ち甲高く笑いながら舞う。それらの女はよく火炙りにされ殺される。
それでも、魔女にとって火炙りにされて死ぬというのは一種の名誉だった。世間から、魔性の女として後世伝えられる度胸ぐらい無いのならローブドレスを脱ぎ捨て去ってというのが魔女だからだ。
今、この国に魔女と呼ばれる女は一人だけだった。
それまでは10人いた。魔女を含むままをあわせる10人だ。この国には10の林があって、その一つ一つに住んでいた魔女達はそれぞれが仲間だった。
編み出した薬や美、健康法を伝え合い、魔女だから王族と親しくなれるうちに仕入れる情報を交換し合い、妖艶な宴を開く。上弦の月の夜のことに限った。
その頃少女だった魔女は10人の女達の男の話の内容をただ薔薇水を飲みながら静かに聴いているだけだった。
10人の魔女達の間には一つの掟があって、破った魔女は全ての悪事を国に売られ死刑にされる。王を殺す魔女や人々を殺す魔女以外の行く末の一つだった。
その掟というのは他の魔女の手中に収めて捨てた男を自分の男にするという、魔女から言わせれば美のブライドを捨てた女を仲間から恥として排除するという物だった。
魔女のママはその方法で9人の女達に国に売り飛ばされて、赤子や少女達を殺して来たことを国に知らされ、火炙りにされて死んだ。
魔女の火炙りという物は、縛られてはいない。高い格子、広い檻が広場に置かれ、そしてそこに自由に動ける魔女は閉じ込められて鋭い棘の茨は裸足を刺し火を放たれ、9人の魔女達はその周りでハープを弾き、美声で歌い、炎の中の魔女は苦し紛れに踊り死ぬ。
その10人の魔女の姿を少女の頃、じっと立ちすくんで見送った。
事前に魔女達というのは仲間内でも手にした男の名前は公表しない。魔女のは母をれが捨てられた男だったとは知らなかった。よくある事だった。男の話や特徴で見破れなかった母の男を見る目が無かった事でもある。
それでも、その時は違った。その魔女は3人の女に気に入られていなかった。名を公表しない事を利用して、1人はそれは昔自分が捨てた男と言って、殺した。
ママは10人の魔女の揃う歴代でも最も人から尊まれ、類稀なる美を持っていた。
成人していくに連れ美しくなって行く魔女の母はその方法を全て9人に明かさなかった。他の女達も普通は秘密にすることでも、その3人は気に喰わなかった。
少女の魔女は1人に引き続く2人を断定できずに、9人全員を誘い出した。
体外から侵入する毒を沼に入れ、新しく見つけた肌が今より更に白くなる沼と言って、先に自分が入って9人を誘い出した。少女の魔女の体には余すことなく油と蝋が塗られていた。素肌の魔女達は、少女のあざけり笑いのうちに苦しみもがき、顔を歪めて死んで行った。
他の女の美を妬むというのは、魔女に最も恥ずべき事だったからだ。
その沼は今となっては少女の魔女がタールを流し込み火を放って毒気を無くし、丹念にタールを取り除いて普通の沼に戻って今もどこかに存在している。
今日も魔女は香油に火を灯して10の魔女の魂を弔う時間に入っていた。
ハープを奏で、レイクエムを唄い、10の灰に聖水をふりかけて深紅の薔薇を手向ける。
魔女のママは赤子や少女の血、を主に使っていたためその血を。
他の9人達はそれぞれがまた違った。1人は若い男の髪を煎じた物。1人は自らの血、1人は若い女の皮、1人は菩提樹の枝や根、1人は黒真珠を溶かしたもの、1人は天然咳を砕いた物、1人は人骨を摩り下ろした物、1人は蝶の鱗粉、1人は馬油。
魔女は殺した仲間の美や薬、健康法を記した帳が必ずあって、それを独占出来るものの、自分に合わないものももちろんあっても利用する権利を持てる。それでも9人を殺した魔女は9人の秘術帳を燃やした。それでも伝えられるママの秘術は受けついて行く掟が親子の間のただ一つの決まり事だ。
魔女は10人とは違って、薔薇と月光を主に使用する。それに少し母の技をつけくわえていく。
一つの魔女の媚薬は継承されて行くごとに製法に関る材料は一つ一つ増えて行くという事になる。元は今の行程もその血筋の初代の魔女の編み出した飛躍に煎じたハーブを浮ばせるというものだった。今の魔女は11代目だ。魔女は短命のため、継承者はすぐに代替わりする。最長生きた魔女は34才だ。16の少女の魅力、21の女気の出始める魅力、25のセクシーな魅力、32の大人の魅力、それでも42の貴女の魅力の頃には魔女としての女は落ちて行く。
今、魔女の年齢は25だ。ママは28才で殺された。その頃7才だった。魔女は子供を産んでもその後のケアで完璧にもとの状態、もしくはそれ以上に戻る。男の子が生まれた場合、殺してその後産まない魔女もいれば、その息子をウィザードと呼ばれる者に育てる女もいる。
魔女の男盤の様なものだ。
ウィザードは人間狩りの才能に優れる。女を使う術を心得ている。薬などを使わずに頭脳と生まれ持った美と逞しさで女を操り、人々のために全く生きること無く、城の王に頼まれて要人を暗殺する術を叩き込まれ、独自でも編み出す。ウィザードは土や沼の泥のミネラル、洞窟の岩石の栄養や川の苔などで美を保つ。そして城に呼ばれる時や女を探し求める時以外は人々の前に現れる事は無い。普段ウィザードは醜い仮面をつけている。
今、子阿国にウィザードは2人いる。9人の内の息子が一人で、その男は今21だもう一人は最近その道を選んで林に住み始めた12才の少年だ。ウィザードは必ず一匹、自分で捕まえた獣を連れ歩いていてる。
魔女とウィザードは掟で愛を共にしない事が決められている。もし林で互いが出会ったとしても声を掛け合うことも無く互いに立ち去る。
ウィザードは暗殺に関わる者として仮面をつけているという理由の他に、もう一つあった。ウィザードには表情が無い。幼い頃から表情を現さなく訓練をしている。それが鋼の精神にもなった。その表情は美しい。ウィザードは手中にした女の前以外で仮面を取ってはいけないという掟が根付いていた。
今日も魔女は話を散策していた。目的地に向かう為だ。
一人の男の後姿に出くわした。その近くに少年もいて、美しく野性的な態で小壷に泥を掬い入れている。男は木の枝に立って、望遠鏡で城下町をウィザードの日課として眺めている様だった。
「………」
魔女は音を立てない様に沼に近づく。少年は気付いて笛で男に報せる。男は木の上から魔女を見下ろした。魔女は気にもとめずにローブを脱いでいつもの様に沼に浸かっては薔薇を浮ばせる。
少年のウィザードはまだ女の裸は見たことが無かった分、ただただ美しい者、そいう観念がある先にもしたたか焦っていた。それでも互いが作業や日課を止める必要は無く、互いを空気の様に扱う事が決まりだった。
その互いの掟があるのは、更なる悪事の阻止の為だ。互いが手を組めば王政を滅する考えを持つものも出て来る。互い国あっての存在だ。世捨て人というものも、自分の満足する生活をするためには金が必要になる。
関らないために互いの生活法や術は互いが知る事は無い。
魔女は沼の泥を静かに掬い上げる少年を横目で見ながらも心の中で頭を傾げた。一体何の為に泥を使うのかを知らないからだった。自分なら崩れた壁を補修する所だった。
「Hag lost in meditation.
It isn't rose color. Even though beautiful.
Cuz' choose death.
Voodoo shaked in mysterious world.
Even tough irrational argument.
But happy for voodoo.
Necromancer chanting.
what of that?
This chant is how meaningless time.
Witch turn just glitter.
While Necromancer were chant.
I'll live in love and love and live,
Be under a delusion of optimistic magic.
Still I choose the beauty of nature. Is good.
We gone advance. even if it a joker.
It is beautiful joker. In love.」
鬼女は思索にふける。それは色のバラされていません。にもかかわらず、美しい。Cuzの'は死を選ぶ。ブードゥーは神秘的な世界で振盪。さえ厳しい不合理引数。しかし、ブードゥー教の幸せ。降霊術師は読経。それの何?どのように無意味な時間この聖歌です。ネクロマンサーは、聖歌たものの魔女はただ輝きを回します。私は恋に生き、愛し、生きていく、楽観的な魔法の妄想の下にある。それでも私は、自然の美しさを選択します。良いです。たとえそれはジョーカー我々は事前に行った。それは美しいジョーカーです。恋に。
鬼女は瞑想にふける。死を選ぶから薔薇色でなくとも美しい。
ブードゥーは神秘的に揺れる。厳しい不合理引数にも関らずそれが彼等のしあわせ。
降霊術師は祈る。それが何だ? なんて無意味な時間の聖歌。魔女は輝きながら回る。ネクロマンサーは聖歌を歌うけれども。
私は恋に生き、愛し、生きていく楽観的な魔法の瞑想の元に在るが、それでも私は自然の美しさを選ぶ。それは良いこと。
私たちそれを行って来た。例えそれがジョーカーなら。美しい道化。愛に。」
「美しい歌声だな。」
「………」
いつもの様に歌っていると男が言った。望遠鏡で下町を眺めたままだ。
「風の様に話すのね。ありがとう。」
「思った事を言ったまでだ。空気が死人の顔を通る事や人々の口を縦横無尽に駆け回ることに生命以外の理由は無い。それと同じだ。」
「女を褒める男の心理にもさほど意味は無い?」
「空気は口さえ閉じれば、息を閉じれば無くなろうとも思った事は消えはしない。」
「ありがとう。うれしいわ。」
「ああ。」
ウィザードと話したのは魔女は初めてだった。沼から上がってローブを纏って2人を背に帰って行った。
少年のウィザードが着いて来た。男は気にもとめずにいた。
ウィザード同士の行動は何をしても互いには関係無い。行き過ぎる事が無い限り。
「今日は月食だ。月が無くなると魔女はどうなるんだ?美しさをお磨くことが出来なくなる。」
「月がなくても方法はいるわ、ボーイ。」
「俺は名前は捨てたけど、子供扱いされるのは好きじゃ無い。」
「失礼。殿方。」
はっきりした口調の少年のウィザードは木の実を射止め落としてから獣に上げた。
「その子には名前はつけてあげたの?」
「悪魔。」
「なかなかの名前だわね。」
ウィザードは特定の名前が無い。それでも従える獣には海賊が船に神の名前をつけることと同様に名前をつけるものだ。魔女は代々受け継ぐ名を持つ。こお魔女の名はアゲハ=クライドだ。魔女は他人に名を明かさない。集会の時は仮名だ。この魔女の通り名はローズだった。クライドは昔の血筋は王家の女王だった。女が王政を執り行なう国の女王はその風変わりな性格のうちに民に葬られる寸前だった。今はその国はどこにも無い。
「砂漠に言った事はあるか? 駱駝や盗賊やスフィンクスがいる。cactusや砂丘、オアシス、密林、星、月、熱に浮かされる愛、死、何でもあるんだ。ただの砂漠じゃない。魅了、愛の宮殿、愛の迷宮、凄く素敵だ。」
「ええ。一度王に招かれたわね。素敵でアキゾチックな夜に浸れたわ。」
「あの人と俺も海賊の奴等と行ったけど、あっちの女はあんたと同じでなまめかしかった。舞を踊ったんだ。あんたも舞うのか?」
「ええ。舞いは女を自信に満ち溢れさせ、美しさを引き出すわ。」
「女は美しくなるためなら何でも試すって聞いた。」
「他の者達は何でもしていたわね。時にグロテスクな事さえこなしてしまう。」
「あんたもそれでそんなに綺麗になるのか?」
「そこまではしはしない。あたしは薔薇が好きなの。」
「あのさっきの深紅の綺麗な花だろう? 俺は見たのはあれで二度目なんだ。昔見たのは真っ白の奴だった。あれは女の血で染めたのか?それとも柘榴の実で染めたのか?」
「愛で染められた花よ。薔薇はね。」
「じゃあ、棘は女の魅惑の媚薬が仕込まれた武器なんだな。」
「ええ。」
ウィザードは普段口を閉ざす。よく喋るウィザードだ。
「これ以上あたしといたらいけないんじゃないかしら?彼の獣がそこにいる。」
少年のウィザードは振り返っては走って行った。魔女は帰って行った。
50年前の事。魔女とウィザードが愛し合った。魔女は王家撲滅を企て、ウィザードはお受けを殺そうとしたものの、ウィザードの長に2人は殺され、魔女の血筋は絶たれた。
ウィザードの死刑は魔女の死刑、火炙りとは異なる。
生きたまま城の柱に毒虫と共に埋められる。口の中の毒虫は徐々に体のなかで繁殖して行き内側から生きた体を食べて行く。
それでも滅多に魔女程ウィザードは死刑にはならない。女とは違ってしっかりわきまえ、滅多な事はしない。女には物事への絶対的な愛情はあっても大きな権力への忠誠心は無いものだ。
好奇心旺盛な少年のウィザードは後から男のウィザードにきつく言われて行動を慎む事にした。
月食の翌日、下町で死体が挙った。国の要人だ。その男は広場の中心で血まみれになって仰向けになり、片腕を天に掲げて目をカッと見開き舌を出して青白くなって死んでいた。国中の民は青くなって死体を取り囲み見おろした。心臓部が抉られ、獣にその心臓は食われていた。背には魔紋が刻まれている。
「……ウィザードだ……。」
城側から黒い大きな2頭の馬に引かれた馬車が着き、誰もが口を閉ざして道をあける。国の要人の死体は馬車に乗せられ去って行った。その場には魔女もいた。
「………。」
薔薇の花のみの蜂蜜の壷を今日も仕入れていた所だった。木の影にあの男のウィザードが静かに佇んでは陰から闇に消えて行った。魔女は逆方向に進んで行った。
血生臭い匂いを流すために湖に来た。ローブのまま浸かる。
岸に上がったら、そのまま岩に身を預け眠りについてしまったらしかった。陽が濡れる頬に落ちた。
目覚めると一人の少女が見つめていた。最近病気を治してあげたあの時の少女だ。
「こんんいちは。症状は良くなったの?」
少女は頷いた。
「それは良かったわ。」
「どうしたら魔女になれるの?」
「……あなたにはあんなに優しくあなたを愛する母親がいるじゃない。」
少女はうつむいて黙ってしまった。
「何かがあったの?」
「ウィザードに殺された人を乗せたお城の馬車にあたしが轢かれ掛けて……ママ、あたしをかばって車輪に……。」
「--まあ……、なんて事……。」
「お城の王様はあたしに頭をお下げになられて、王妃様はあたしを養子にしてくださるっておっしゃられたけど、でも断ったわ……。」
「あのね。ガール。確かにあなたが城の者として今から生きて行く事はとても大変な事だけれども、魔女になるという事もとても大変な事だわ。」
「でも、あなたの様な女性になりたいわ。みんなを救いたいの。」
「魔女というのは、初代は誰もが一人で全てを考え生きて行く。人には頼らない物なのよ。それならばお城に引き取ってもらった方がまだ良かったというのにあなたは断ってしまった。人を心から救いたいというのならば、あたしよりも医者を頼りなさい。」
「美しくなりたいの。ママもいつもあなたのお母様の時から憧れていたけれど、魔女やウィザードが行なうみたいに初代として家族を殺せなかったわ。あたしも殺せなかったけれど唯一の家族のママは殺されてしまった……。」
「あなたに一つ聞くわ。王を、母親を殺してしまった者を憎んでいる?」
「……確かにこの事は悲しいけど、でも王を憎むという事はあってはいけない事だし、それに王あってこその民だから……。」
「どうやらあなたは悪い女にはならなくて済むかもしれないわね。あなたの住むところだけは今から案内してあげるわ。あちらの林よ。」
林を歩きながら魔女同士とウィザードの掟を少女に教える。
「……埃まみれね……。」
「16年間そのままだったものだから。」
「16年も……。」
魔女は箒で蜘蛛の巣と家具の埃を払って小窓を開け放った。古いハープが輝く。
「一人で生きて行くの。ここでね。ウィザードの場合は原に羊を飼って食物を得るけれど、魔女は第一に金がなくては食物は手に出来ないわ。手に職がつくまではお金を工面してあげる。まず手に職をつけて、金が出来て、その内にもいろいろと美や健康法を試して人々との交流を根付かせておくの。そしたら充分金が手に入って、常連となる人も捕まえれば魔女として本格的に進んで行くわ。」
「分かったわ。」
「ガール。通り名は何。あたしの通り名はローズだったわ。」
「んー……。」
「自分の主となる物を何する人が多いわ。まだ決まる様子も無いわね。ゆっくり試して行く間に決めればいいのよ。じゃあ、今からあたしと共に町に行きましょう。」
魔女は、魔女になった事を町の者に報せて認めてもらわなければならない。
広場に着いた。黒い布を敷き、4隅にキャンドルを立て、中心に座り、短剣を人たち指に押し当ててラム皮に心にすぐに浮んだ紋を綴る。それが魔女の紋になる。それは後から前の魔女の家のドアの紋を外し、自らが木や石に彫刻し掛ける。金が手に入れば豪華な紋にも作り変えられる。今の魔女の紋も金属製の綺麗な装飾だった。
「お認め頂けたかしら。皆様。」
魔女という物は、国民のために時として役に立たなければすぐさま死刑、火炙りにされる。
それは普段人と関らない事で国民を恨む者がいるだめだった。
その日から少女は林で住み始めた。
しばらくして、少女は魔女の所に駆け込んで来た。大火傷を負って。その場で死んだ……。
遠くの林から細い煙が上がっていて、駆けつけると既にウィザードが2人で消火活動をしていた所だった。
「何があったの。」
「あのガキが焚き火をしていた火が窓枠に乗り移った。炎の灰を美の主にしようとてもしていたんだろう。事実、こいつが池の横でガキがそれを見かけた。」
「Girl burnt to ashes. Gather one's ashes. It is so junk.」
少年のウィザードは先に身を返した男の後ろについて行った。そのまま唄いながら去って行った。
「You do worthless. Hey Rose? Do be stop helping! Ha-ha!」
仮面の下の表情の無いあざけり笑いが魔女を一人にした。
「By intention? rose. Beauty rose witch……」
唄は遠のいて行った。魔女は自分の林の方向を見て肩をすくめて歩き出した。馬に乗って帰りながらつぶやいた。
「燃えてしまっては少女の新鮮な血がとれないじゃないの……。」

Devilishness

Devilishness

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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