ゆめ

いつか見た、夢の話をしよう
幼いころに描いていた、途方もない夢の話

朝がくるのが嬉しかった
夜に眠るとき、どんな夢が見れるか楽しみだった
つぎの朝に夢を忘れていたって
胸は高鳴っていた

ある日、僕は旅にでて
大きなドラゴンと空を飛んだ
またある日は
妖精と切り株のうえでダンスをした

ぜんぶ ぜんぶ
覚えていようとしても
いつも いつも
この両手からこぼれ落ちてしまう

夜に見る夢は 魔法使いからの贈りものだった
一夜限りの あるはずのない世界

いま 僕は 夢を見ない
一緒に空を飛んだドラゴンも
一緒にステップを踏んだ妖精も
みんな棄ててしまった

朝がくることを喜びはしない
夜がくるのを恐れている
迫る闇に 暮れていく陽に
酷くおびえているのだ

だから
せめて
いつか見ていた夢の話をしよう
あのころに戻って
ドラゴンも 妖精も みんなを思い出そう

透明なままではいられないことを知ってしまったけれど

いつか見た夢の話をしよう
そうすれば
僕たちはいつでも あのころに戻れるのだから

ゆめ

ゆめ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted