血は赤く人は食しやすい

名もなき子

どこどこここはどこ?みえないなにもみえないくらいくらいくらい。
おててはうごかせないし、あしもなにかにこていされててうごかせない。
こわいよ、ここはどこなのぼくはどうしちゃったの?
ぼくはとってもこわくなっておもわずこえをあらげておおごえをだした。
でもでもぼくにこたえてくれるものはいない。
あたりまえだよね、ここにはぼくしかいないようだもの。きこえるのはじぶんのおとだけ。
ほかはなんにもきこえないだけど、だけど…
だれかはわかんないけどいるんでしょ?わかってるんだよそこにいるんだったらへんじしてよ。へんじしなきゃわかんないんだよ。
それともおみみがきこえないひとなのかも?
だったらぼくがうごいたらみんなきがついてくれるのかな。
うごかないからだをなんとかごういんにぼくはうごかしてみると、おとがでた。なにかにあたっているおとだ。
きっとここあたってるのはかべかなにかなんだろう。はげしくうちつけたからだのふしぶしがとってもあつくてやけどしたみたいになってる。
でもぼくはかまわずうちつけた。たすけをよぶために、いっしょうけんめいやったんだ。
でもでもとちゅうからそんなことしてもいいのかなっておもうようになった。
ぼくはいきていてもしかたないすてられたこってやつだよ。
だからもしかしたらこれはどれいがはなしてたおむかえってやつかもしれないじゃないかってそうおもう。
だとしたらおとなしくするべきなのかな、でもここくらいしせまいしとってもきゅうくつ。
はやくここからぬけだしたいよ。だからぼくはたたくんだこのかべを、ぼくのいきはすっかりあがっていたけどね。



『おいおい後ろで暴れてんぜ?いいのかよ兄弟このままにしちゃってよ?』


もういちどぼくがこえをだしてあばれようとしたらうっすらとこえがきこえてきた。
ここではないとなりにかべがあるかんじでこえはすんごくこもってた。
でもこえがするだけでことばはうまくききとれない。むーなにをおはなししているのかとってもきになるかな?かな?


『いいんだよ、どうせこいつもお嬢の献上品さ。勝手にさせておけ。』


ふたりのこえがする。ぼくはうれしくなってよりかべをたたくんだけどきがついてくれないのか、はんのうはみられない。
むーぼくにきがついてるならたすけてよ。こんなせまいのぼくいやなんだ、からだがあつくてあつくてしかたないんだ。
はやくおそとにでたいよ。おそとにでてつめたいかぜにあたりたいんだよ。
だからおねがいここからだして、わるいことしないから。ぼくいいこにしてるから、いつもみたいになぐってもはんこうなんてしないから。
おこらないから、だからだからすこしだけだよすこしだけ。
くらいのせまいのこわいんだ。ひとりぼっちでさびしいんだ。
あけてよあけてよ、ふたりならそれもかんたんにできちゃうよね?



『…にしてもお嬢は悪趣味でさぁ、こんなものをご所望とは。俺には到底理解できませんね。』

『いうなッ割と羽振りのいい仕事じゃねぇか、あまり詮索しない方が身のためだぜ?取り分が減っちまう。』

『へいへい、分かりましたぁ分かりましたぁ不平言わずにそそくさと運ぶ、それが俺たちの仕事でしたからね。』

『そうだとも!分かればさっさと運んじまうぞ?こんな気味が悪い物、もう持っていたくもねぇからな。』


ふたりのかいわはとてもたのしそうにきこえた。ぼくもまぜて!とってもおもしろいおはなしがあるんだ!
えーとね?ぼくってみーーんなからきらわれちゃってね?おはなししてくれるひとは「どれい」だけだったんだ。
ぼくってすんごくさびしがりやでね。もっといろんなことはなしたいんだけど、にげてくの。
みんなぼくのまえからいなくなって、ぼくはついついすみっこでないちゃうんだけど。
でもいいんだ、なれてるから。さびしいのはなれてる、でもそうやっておはなししているのきくとぼくもはなしたくなるんだよ。
だからぼくをわにいれてよ、そしてたのしいこといっぱいしようよ!
いまはなにもみえないけど、きっとおそとのけしきはみえるはずだからここははしりっこでもする?
それともおかしなかおがっせん?あれはとってもおもしろかったから、ふたりにもおすすめだよ?
どうかな、そろそろここをだしてくれてもいいんじゃないのかな。
ぼくやくにたつし、ここにとじこめててもたからのもちぐされってやつになっちゃう。
くされるのはいやだよ、とってもくさいのだもの。ぼくのところはせいけつにしてるけどほかのところはおはながまがりそうだったからね。
じまんじゃないけど、ぼくとってもきれいずきだからふたりのからだをあらってあげてもいいんだよ。
だからここを、あけて、はやく。



『…やっぱりさっきからうるさくて仕方ないですぜこれ。』

『なら少し、見てみるか兄弟。どうなってるのかお前も気になるだろう?』


ん?まっしろなひとすじのひかりをかんじる。
やっとあけてくれるみたいだよ。とってもうれしいね!はやくあけて、あけて、あけて、あけて。



『…いいんですかい?勝手に見ても。知りませんよ俺』

『別にかまいやしないだろう。いつもいつも運んでやってんだ、運んでいる品の確認くらいしてもおかしかねぇだろう。』



こんどはまぶしいほどのひかりをかんじた。
いいよ、いいよ!そとだそと。ようやくしんせんなくうきをすえるんだね。どこなのかもあかんないけどひとまずあんしんだ。
すくなくともまっくらなせかいではないだろうから、はやくみてみたいなぁおそと。


『…んっこれは』

『これはひどいですねぇこれやったの人間ですか?本当に』


まぶしくてまぶしくてまぶしくてなにもみえないけど、たしかにおそとのかおりがした。
かぜがふいてるみたいであつかったのが、すっかりひえてあつさなんてけしとぶようだよ。
こまかいひょうじょうはみえないけどふたりはこちらをみて、とってもおぼろいたようにみえる。え?ぼくのかおになんかへんなものでもついているのかな。
だとしたらとってもはずかしい。はやく、てあしのこうそくはずしてくれないかな。
そしたらおもうぞんぶんおかおについたへんなものもとりのぞけるんだけど。



『うっ吐きそう。うげー』

『やめてくださいよ?汚い、不潔すぎますよ。』


とおもったらひとりがえずいた。むーぼくのかおをみてえずくなんてきぶんよくないなー
あいかわらずなにをいっているのかはさっぱりだから、もしかしたらぼくのしらないことばのひとたちなのかも。
だったらぼくはよりきもちわるくうつるのかもしれない。ちょっときずつくよ、つらたんだよ。


『こんなやつは、よ。こうするのが、一番いいんだ。へへ今楽にして、やるからな。』

『一体何を、っておいそれは!』

『へへははっははははははははははははっはあははははははっはははあああああ』


めがうえをむいちゃってるひとりのおとこのひとがぼくになにかをなぐりつけた。
つぶれるぼく、なにかがぐしゃりとおとをたてる。
でもいたくはない、なぜかとってもあついだけだ。ひにあぶられているようなそんなかんじで、ぼくはもだえる。
あついあついあついあついあつい。しんじゃうしんじゃうしんじゃうしんじゃう。
いまだにつづくおうだにぼくはなすすべもなくつぶれるはいやろっこつ、かおもぐちゃとなっているにちがいない。
またもめはみえなくなってきた。まっかにそまっていく、いしきもとおざかっていく。
やっとでられたとおもったのに、さびしいおもいをせずにすんだとおもったのに、このまま、このままぼくはしんじゃうのかな?
てんにのぼるっちゃうのかな?そんなのとてもさびしいじゃない。だからぼくはじぶんのあかしをのこすことにしたんだ。
それはちいさなちいさなあかしかもしれない。でもきっとまだみたこともないほかのひとのたすけになるとしんじて、ぼくはぼくは…


「・・・っ。」



森の中で一つの小さな小さな命が散った。それはとっても小さくて、まだ自我もできたばかりの小さなでも確かに存在した生命であった。

血は赤く人は食しやすい

血は赤く人は食しやすい

深い森にあるとされる館、そこの主である姫は変わり者として有名だった。 曰く人を食す化け物だと、曰く人殺しの快楽に落ちた犯罪者だと、曰く人を美術品に仕立て毎夜眺める奇人だと。 どれもこれも彼女が普通でないことを物語っている。そんな彼女にかかわることになるある数人の男の子たちのお話。 ※多人数視点。一人が死んだら次の物語が始まる構造をしております。 現在名もなき子→ となってます初の試みではありますがよろしくお願いします。

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-04-02

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