wine red

ワインのレッド 2007.9.20

行きたいままに進むだけ。
失った物は奪ってでも取り返す。
死んだってそう。
最後に残るのは自分だけだろうと。
まともに向き合う事も、無いままに

酔った心を癒すもの。それはひたすら酔うこと。
感情おもむくままに、飲んでのまれる殻になる。
残るものは、わだかまった不安だけだ。

「なんでよ」

女は刺のある声で鋭く聞いて、「そんなものどうでもいい」男は身を返した。

暗い部屋で窓から射す灰色の光は頼りない風で女の横を照らした。

立ち尽くしてスモークが蛇のようにのたうち、そして女はそれを目で追っては男の背をそのまま睨んだ。

「じゃあ出て行ってよ。ここから出てもう二度と帰ってこないで」

「ああ。お前にはもう会いたくねえ」

ふん、と女は鼻で息をつきドアを開け閉めて出て行った。男は逆側のドアを開け廊下に出ると歩いて行った。

新しく火を着けジッポーを仕舞い歩いて行く。

気持ちよく煙を吐いて闇を見つめる。剣呑と見つめる。

目を閉じ両腕拳を横にかざして歩いて行く。

何かを掴み取るように

俺だけ見えない。

目を閉じると俺だけ見えない。

あいつは俺を愛して無い

「糞、なんだよそれ・・・」

車に乗り込み後にする。どうでもいい空が灰色に広がる。カラスが飛ぶ。俺も飛ぶ。

男は去り女は窓際から睨み見てワインボトルを投げつけた。

男はシカトし進めて行った。

ヒステリックな音を立て、割れては太陽の射した光が存在を持たせた。

男と女の間を表した様に。芝に染み込んでは虫達が横を歩いて行った。


ワインのレッド1

どうででもなればいい・・・


世の中なんざ、華麗に回ってステップ。どうだっていい、惨めなお前だ


しゃらくせえ


どうでもいいからさっさと退けよ


邪魔だ。


俺の行く末



ちょっと、冷静になる



死ぬ。


血を見る。痛みを痛みとして心にしっかり突きつける。麻薬なんかで誤魔化さねえ。
しっかり痛みとして受け止める……M


吐く。


酒の瓶を空けて心は闇雲に殻になるばかりで、俺は虚しく空ろにさわぐ。
オレハ、マタ、デカケル、クダラナイサイコウノセカイ、
消え果て・・・・・


コイビトヲツクル



怒鳴る
衝動 
馬鹿な女
死ね
屈服させ、
怒鳴り叫び天に雄たけび上げたい
泣き喚きたい
悲しみたい
全て
消え果てぬ内に
お前と俺
俺と過去
過去と全て
全てで成り立つ俺など・・・・
しねばいい


怒りをくすぶらせて怒鳴って無様に俺を表現し様が、
うみになけさけぼうが、うみにさけぼうが・・・・・

悲しくうねるばかりで・・・


くだらないっていわれて良い、だから良い。


出かけよう


「本気かよ」

バーカウンターに肘を掛け相槌を打った。酒を飲み下し喉を焼くと、足を引き寄せ放った。

「お前等いつからそんな仲になった」

「元からだ。あの女、俺をこけにしやがって・・・」

「女にそのつもりはねえって」

横に男が来てバーテンに酒を注文すると横の人間を見てからスツールに座った。

「火、あるか」

「ああ」

カウンターに背をつけ男は愛嬌ある笑顔で聞いた。

その顔が気に食わなかった。

頭突きして男は倒れた。背を掴んでバーテンは止めさせる。一蹴りしてまた座る。

「マザーファッカー、何が気にくわねえんだよ。え?」

男は顎をおさえ血唾を吐いて立ち上がり、またスツールに座った。

「マシェルと別れて来たんだよ」

「お前、俺の昔の女に何してやがる」

男はやれやれ笑って首を振った。

「お前につき返すつもりならこの事はいわねえ」

顎を上げて目を細めると男は笑うことをやめて、はっと息を吐き捨てた。

「どうでもいいが、前触れなしに切れるのは無しにしろや」

酒が来たのを軽く掲げて飲んだ。

「俺は冷静に対処する性質だが、お前は違う。そうだな。お前にあの女はにあわねえ」

「分かってる」

男は横顔を見てから、おかしそうに笑って、手を振り掲げた。

「まあ、せいぜいいい女でも探しな」

そう言い歩いて行った。

「糞食らえ・・・」

言い捨て、サイドを見た。いつかは現れる。俺の横に。


ワインのレッド2

あたしとあなた。


貴方とアタシ。


酒に酔って酔いつぶれて抱き合って、抱き合ってコロシテシマイタイ

お前になど捧げるアイなどナい・・・・・

ないのに、おぼれてく


冗談じゃないわよ!!!」

怒鳴り叫んでいた。天が一度それで揺れてあたしは目を上に向けた。

あんな奴はもういらない。あたしは全てを庭に放り出して灯油を掛けると煙草に火を着けそれを放った。はかれた煙の先に炎がくすぶり、一気に燃え上がった。

目を細めてしばらく見ていた。

革に身を包むと白シャツにプラチナブレスレットが光り、バイクに乗り込むと指だしグローブをはめた。

走らせて行くと一気に海に出た。

浜辺に転がってサングラス越しに青の空を見た。

到底、ありえない。

「お前なんかいらねえよ」

そう呟いて目を閉じた。

あたしがもしも地球に生まれてなかったらあいつを泣かせることが出来た女はいただろうかって思う。

海の水の様にだ。



ワインのレッド3

外に出よう。出られるなら


馬鹿みたい



世の中なんて


よってるだけ


分かってる





誰か





止めて













あいして













まさか、JBに再会するなんて予定じゃなかったから、女は悪態をついた。

「よう。お前の男が嘆いていたぜ。最高な色男の俺を失望させやがってってな」

「関係無い。消えなよ」

その腕を捕まれキスされると、唾を吐き捨て股を蹴り上げた。その日2度目倒れて女はバーに入って行った。

「スプモーニ」

「おう。さっきまでいたんだぜ」

「知らない」

つんとしてスツールに腰掛けるとホールを見回した。

「ねえ。何がこの世の享楽なのかしらね。馬鹿みたいに奴らは踊ってまるで芋虫みたいに空間を壁にしてのたうってる」

「今日は踊らないつもりか?」

「芋虫に見せるような踊りは馬鹿みたい」

「そうか」

「ええそう。蝶みたいにみんな舞えばいいのに」

「どうでもいいのさ。美なんてな」

「そうね」

女は顔を振り向かせてから言った。

「あたしは別れたって思って無い」

「同じようなこといってたぜ」

「ふん。勝手な男」

吐き出してから、煙るホールを眺め回す。

いい男を見つける。

そちらに行く。

声を掛けようとしたが、しばらく様子を見た。時たま男はふくろうのような目でホールを見ては、閉じ反らして女に気づくと上目で見てきた。

「よう。お前、どこかで見たな」

「ガディとよくいたから」

「ああ。あの狂犬」

「そう」

魅力的な目の男は女を射抜くと手を差し伸べた。

「もしかしたら、暇してるのか?俺も暇してる。女が俺から逃げた」

「放流したんでしょ」

「かもな」

女は髪を掻き揚げてからうなじよこの傷を見せた。

「あたしと彼は同じ物がある。付けられる?」

「狂ってるな」

抱き合うとき、ナイフを互いの頚動脈に突きつける。

血がほとばしって、愛を感じる。

馬鹿みたいだが、最高にいい時間だ。

髪をさらりと下げて、遠くを見た。

「壁の花は似合わない女だ」

「あなたもそう」

互いに微笑み合うとのたうつ芋虫たちのセンターにたった。

鮮やかにスピード感のあるダンスを踊っては、互いを魅了しあった。


ワインのレッド4

不器用よ



いけない?



なにがあったとかさ、なにもなかったとか、どうでもいいよ・・・


悲しいから飲むとか



嬉しいから騒ぐとか


違うって


どうでもいいって



あんたなんか消えろ



好きだよ



そばにいて



本当は好きだよ



そういえる夜に出会えたから



会いに行こう


今すぐだって構わない


ていうか、お前がこいよ





アイシテル






ストロベリーを手に掴んで思い切り握りつぶすと5個分が真っ赤に滴った。

男を残して部屋を出るとサニタリーに来て鏡を見た。

死んだみたいな顔してる。

「あんた、最低みたいよどうやら・・・」

自分に呟いてみる。乾いた笑いを響かせて見る。無表情になる。かみそりを手にする。

ベッドに戻って男の頬をさすって傷つける。

「じゃあね」

キーを持って部屋を出る。火を着けて放ちたいけどやめておいた。飼ってる猫が可愛かったから。

涙が流れる。顔が歪む。あいつがいない。この体が向うところは他に無いのに。バイクを走らせる。

どこに向うかは分かってるのに。

マーケットで銃弾をそろえてから女が聞いてきた。

「この前、あんたの男が下のホールに他の女探しに来たけど」

「なにそれ。撃ち殺していい?」

「ふん、他の子3人くらいで出て行った」

「確実だね」

網の中の女の視線があがって、その方向を自分も振り返った。

彼は無視して、女のいるカウンターに来ると金を放った。

「バイカル」

「ねえ。仲でも悪いの?」

「いつ結婚してえ程惚れたって言ったよ」

「さあね」

彼女は男の横顔を横目で睨み見上げるとカウンターに腰をつけ、せせら笑うと一気にこめかみに銃口を突きつけ殴り散らした。男は彼女の腕を掴んで網に叩きつけて顔を押し付けた。女の硬い頬が網におしつけられてきつく頭を押し付ける男の手を睨んだ。

それを離して彼は彼女を抱き寄せて離すと腕を引いて連れて行った。

バイクに乗ると女を後ろに乗せた。

女のバイクは道路にふっとんでいた。男がやったんだろう。

「ガキみたいな真似」

「さあね。しらねえよ」

バイクは走り出し、女は走行中足を外して降り立つと男に中指を立て歩いて行った。

男はやれやれ首を振ってすすめさせた。



ワインのレッド 5

知って
知り合って

死んで
しなれて

飲まれて
飲んで

馬鹿みたいよ


泣いていい?


     ひとり・・・・・・・・・・・・・・




あいじょうがゆめはてて、どうでもよくなって、飲みに向かってよい果てて
昔のようには行かずにいつもから回り
泣けても遅い

さようならって、言ってから夢なんて無くて、


昔の懐かしい場に向おうとする



一度は愛した・・・?心わかった?わからない

あなたがいればいいなって、おもう


だから、会いに行く



思い出に


仲なんか取り持ちたくない。

「目が寂しいって訴えかけてるぜ」

頬にばんそうこうをはった男は女の顔を覗き見た。女は顔を反らして男の魅力的なフクロウ目を逃れた。

「今日のイベントはくだらないなんて言うなよ」

「最高?」

「まあまあ」

どうでもいいよ。こうやって気分をハイにしようと足掻いたってどうせ終わるだけなんだから。昔みたいに素直になれた時代なんか既にガキ時代もいいところだ。
喧嘩したら仲直りするものなんだって言葉は廃れてる。

「思い切りはしゃごうよ」

男の手を引っ張ってバーから出た。

カジノに向って走らせて行く。面倒な事全てちゃらにして思い切りはしゃぐ。
動く金。馬鹿みたいに嬌声上げる奴ら。腰を引かれて煙るキセルに悪態を付く。ディーラーに目配せする。全て……

女は腰から銃を抜いて馬鹿みたいな世界をやっぱりぶっ放した。
チップが舞って火花が飛んでシャンデリアが揺れて黒服たちはサングラスの下の鋭い目で舌を打って女を撃った。

女は崩れて他6人も女に撃たれて倒れた。叫び怒号を上げて涙で顔を怒らせ打ち付けて、女が殺した中にはフクロウの目をした男も含まれていた。

黒服は女の背を蹴って顔を覗き込んだ。息はある。

「連れて行け」

女と死体の数は消えて行った。

女は目を覚ますと意識が遠い。

目の前には別れたはずの男がいて、彼女を見下ろしていた。

「死ねてないじゃないあたし……」

「生かされただけだろ」

「あっそ……」

女の冷たい頬にキスを寄せてから、ナイトテーブルに金を置いて男は出て行った。

「どこに行くのよ」

「さあね。お前みたいな危ねえ女には着いて行けねえんだよ」

男は女の顔を見つめ、何の表情も表さずにしばらくしてきびすを返した。

男は暗い部屋に女を残し、出て行った。

女は半身を起こしたまま、涙を流しつづけた。



ワインのレッド6

何かが悲しくて崩れて



あたしを追い出して欲しい



惨めにして欲しい

愛するあなたにだけなら

死ねばいい

なんで?



aisitekurenaino





愛ってくだらないって自分が良く分かってるけど
のぞんだっていいじゃない
体なんかどうでもいい、
そんなものくそくらえで、切り裂きたい、
手にナイフもってなら体でつなごうとする関係なんか、切り裂いて、切り裂いて、切り裂いて、




おわりよ

すべて終わらせるのよ

茶番だったって言ってよ

また続けなきゃなんないの



男が黒服たちにおとしまえつけられた話は後から知った。

男が女だけは殺すなって言ったんだって。

で、殺されたって。

あのあいつの最期の表情を、打ち消したかった。どうしてもだ。

あたしは海に討ち捨てられていたあいつを見つけて力ずくで引っ張り出した。

溺れそうになって死にかけた。

大して泳げないどころか、この州の川は海を手前にして尚且つやばい。

「馬鹿な奴……」

これが嘘ならいいって、別に思わないけど、引き上げて見て後悔したかもしれない。

周りにパトカーが来てあたしの肩を引いた。後ろに行ってあたしは空ろな目であいつの死体を見ていた。

バイクに乗り込んで、思い切り走らせた。トレーラーに突っ込もうか、ビルの窓突き破ろうか、線路走って轢かれようか、そのまま生きるか……

ただいえることは、海が汚すぎたって事。あいつにはそぐわなかったから、あたしは思い立った。

海を綺麗にする為に慈善活動しようって奴。

あたしは計画を立てた。あたしの不意切れで男を殺したギャングに慈善パーティーを持ちかける為に伝を使って開催させる。

金をギャングの会計士が計算する前にギャングから奪う。ちょっと拝借するぐらいだ。

失敗すれば殺されて終わるだけだ。それでもいい。



ワインのレッド 

辺りを見回す。

冷静になる

風景は風景のまま

あたしは夢の果てを追いかけて、

手を差し伸べて

追って、

捕まえて

泣きつくと、

包括されて

ぬくもりを



俺に泣きつきがむしゃらに泣いて

泣かれて俺も 泣いて

きっとずっと、泣きたかったんだろう

俺もお前も出会ってから相当長く憎み合っても愛し合って

互いを互いの夜に探しては消えて

空ろに泣き喚いて全てをこなごなにしたお前

つば吐き捨て去った俺

お前と俺 似てる

ワインの瓶を白にして弾丸ぶち込んでは血みたいにはじけ白ワインが広がる

二人壁にもたれて見つめては、

目を転じてキスしあって愛くるしい笑顔 ぶん殴りたい笑顔 笑顔

笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔

絶滅しかけた俺達の間のしゃらくせえ笑顔が戻っては つぶす


もう、全てが幻だ



まともに向き合うことも無いままに


ワインのレッド ラスト

『結婚したい程惚れてるって誰が言ったよ』
そのまま言ってくれれば良かったじゃん
『自分の命投げ出しても護りたいほど本当は愛してた』って、
『お前なんかの何に惚れたかしらないが、惚れちまったんだ』ってさ、

素直じゃ無いんだなあ……

涙を流した。

豪華な会場。

煙が渦巻いた。

死んでいく奴ら。

撃つあたしたち。

機関銃が唸って、倒れて行く。

金に穴が空く。

金に血が舞う。

あたし達は全てを奪って行く。

金。命。人。自分の心。


荒野に出て、一人で泣いて、仲間達は呆けて、あいつは死んだまま、

あたしはコヨーテを振り仰いで目を閉じた。

血のついた札をよこされ、涙をぬぐって顔が染まった。

ジープを走らせて、札が舞った。

「全てつぎ込むの?組合に」

「うん」

「少しは残してよ」

「これだけでも足りないのに?ああいう活動ってさあ、20億はくだらなくかかるんだよね。海綺麗にするって」

「マジ?」

「うん」

「ぎりぎりじゃん」

「あたし、綺麗になった海みたら、そこで泳ぐよ。あいつが消えた海だけどさ、一緒に泳いでる気になりたいから……」

空から目を離して、風に目が乾いて、膝を抱えて肩を振るわせた。

「俺達がついてる。だよな?」

何度か頷いて、顔を上げて寄り添うと、水色の夕焼けを見つめた。
巨大でクリスタルみたいで、綺麗だ。

「いいな。こういうのって」

そうつぶやいて、見つめつづけた。

見つめ続けて、口ずさんだ。

AMORE MIO SO PER TE 
DI PENSO A TE…… 
FIORE咲き乱れた……
FELICE 貴方があたしにいつまでも愛を置いているという事
何度も心のなか囁いた
MIA SOLE……


*
Amore mio so par te あたしはあんたのための愛を知ってる
di penso a te..... あたしはあんたのこと、考えて……
fiore 花
felice しあわせ
mia sole..... あたしの太陽……

wine red

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  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-04-02

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