三題噺 予算 聡明 比較
三題噺です。単語帳を適当に開いて、出てきた単語を3つ出して1時間30分で書くという遊びです。単語は予算 聡明 比較でした。
予算 聡明 比較
予算 聡明 比較
ある朝の出来事だった。
若様!と大声を出し、屋敷の廊下を走る一人の初老の男がいた。その男はスーツに蝶ネクタイ。おそらくこの屋敷の執事であるのだろう。
そして、若様と呼ばれる者がいるらしき部屋の扉が開け放たれる。
「若様!大変です!国の予算が足りませぬ!何者かに盗まれたようです!」
部屋の中は暗く、様々な衣類などが脱ぎ捨てられている。その光景を見るからに若様はまだ寝ていることがわかる。
扉の開けられる音に反応したのか。部屋の奥にあるベッドの中でなにかがもそもそと動いてこっちを向く。
「…う〜ん。朝から騒々しいぞ。じいや。」
おそらく、若の言っているじいやとは執事のことだろう。
その反応を見て、まだ寝ぼけていて今の状況を理解出来ていない若に少しムッとしながら、じいやは続ける。
「そんなことを言ってる場合ではありません。国の資産を何者かに盗まれました。」
「でも、全部盗まれたわけじゃないんだろー…。」
そういって、若は片手を上げ手で立ち去るようにじいやに指示をだす。寝ぼけているにも関わらず、そのような行動は取れるようだ。
「仕方ありませぬ。明日のパレードは中止ということに…「ちょっと待て!」
パレードの中止。その言葉に反応したのか、若はじいやの言葉を遮り目にも止まらぬ速さで上体を起こしじいやに詰め寄った。
「詳しく話を聞こうじゃないか!なあ。じいや!」
それを見たじいやは部屋の明かりをつけこうきりだした。
「実は今朝、取り引きに使う予定の物や金貨を宝物庫の中から幾らか盗まれていたのです。」
「でも、それがどうしてパレードの中止と関係があるんだ!」
いつの間にか椅子とテーブルを出していた若はそこに座ってじいやにそう返した。そこにはしっかりとじいやの分の椅子まで出ている。明かりをつけるまでのほんの数秒でこれだけのことが出来るなんて、この人は一国の王子よりも別のことの方が向いているのかもしれない。若はじいやに手で座るように合図をする。それに答えるように、じいやは会釈をして椅子に腰掛けた。
「それは単純です。パレードをやる分の予算を盗まれてしまったからなのです。」
「よし!犯人をとっちめてやる!」
そう言って椅子から立ち上がり拳を胸の辺りで握っている若を見ながら、じいやはやはりこの人は兵士などの方が向いているのでは、そう改めて思ってしまう。だがそのような行動的な側面がこの国を救ってきたことは事実。今回も若を信じて何処までも着いて行くことをじいやはここに誓った。
「しかし、どうやって犯人を見つけたものか?」
そう首を傾げる若にじいやはこう言った。
「町外れの賢者様に聞くのは良いかと。なんせ、あのお方は聡明なお方ですぞ。」
「それだ!」
目的が決まれば行動が速いのがこの二人。すぐに出発の用意を整え、彼等は城を出た。
じいやはそのままの格好。若は青のTシャツ、上にオレンジのカーディガン、そして青のズボンを穿いてオレンジのバンダナを巻いている。
「若様。その格好は?」
「いかにも、旅人チックじゃないか?」
目を輝かしてそういう彼をじいやは呆れた様子でスルーした。
そうして、賢者の元へ到着した。そして、賢者の家の扉を若は思いっきり蹴り開ける。
「たのもー!」
「若様。それは如何なものかと…。」
じいやは若のことをかなり心配そうに見ている。道場破りか何かではないのだから、その開け方や聞き方はないと思う。
そのように入って来た若とじいやを見て、奥からじいやよりももっと年のいってる老人が出てきた。
「ふぉっふぉっふぉ。何の用ですかな?若様。」
そう言った、賢者らしき老人はそのように二人に尋ねる。
「今朝、城の宝物庫に盗人が入り、このような物を残していったのです。」
そう言って、じいやはある紙切れをポケットから取り出し賢者に渡した。その光景を見た若はよっぽど許せなかったのか。大声を上げた。
「なんで俺にはそれ見せなかったの⁉︎」
「いえ、若に見せてもわからないでしょうし。賢者様は聡明なお方ですから。」
その言葉に納得したのか、少しムッとするも若はその場では感情を抑えることが出来た。
「それで、どのような内容ですかな?」
そのように賢者は催促する。歳の割りにせっかちのようだ。
「あー。そうでした。」と言ってじいやは紙切れを若にも見えるように見せる。そこにはこう書いてあった。
『カチコチ山とフリーズマウンテンを比較しろ』
その二つの山は若達の暮らす城からも見えるこの国の名所だ。
「なるほど。わかりましたぞ。」
最初にこの謎を解いたのは賢者だった。
「わかったのか!?」
若がそう聞くと賢者は静かに頷いた。そして、ゆっくりと話しだす。
「これ自体には何の意味もない。これは我々の視線を逸らしたいだけ。つまりこの真逆の場所に犯人はいる。ということは。」
「ということは?」
思わず、若とじいやは賢者の言葉を繰り返していた。
「あそこじゃ!」
賢者が指を指して言った場所はカチコチ山、フリーズマウンテン。その二つよりももっと高く険しい場所だった。
「魔王城…。」
じいやは口からその言葉が零れ出たことに言ってから気付いた。それほどまでにそこは人々に恐れられてる場所なのだ。
「いや、その麓のあそこの小屋じゃよ。」
「は?」
じいやは今の自分はとても間抜けな顔をしているのだろうと思った。それもそのはず、張り詰めていた緊張の糸が一気に緩んだのだから。その様子を見た賢者は続ける。
「第一魔王がそんな小さいことするわけないじゃろ。」
はぁとため息を吐き、じいやは安堵する。あんな所生きて帰れないと確信していたからだ。しかし、その安息も次の若の一言で崩れ去る。
「じゃあ、ついでに魔王もぶっ倒すか。」
「「は?」」
またも、じいやはそう呟いてしまった。しかし、今回はじいやだけではなく、賢者も一緒だった。
「そうと決まれば、早速行動だ!」
「お、お待ちを若様あああ⁉︎」
そう言ってじいやの腕を引っ張り走り去る若。一国の王子とは思えないその行動力がやがて全世界の人間を魔王から救うことになるが、それはまた別のお話。
三題噺 予算 聡明 比較
まあ、ぐだぐだでしたでしょうが最後見てくださりありがとうございました。