たとえ死刑だとしても
ここは都内にいることを忘れさせるくらいに緑で溢れかえっており、朝はランニングや散歩をする人達、昼は子供達の遊び場として近隣の人々に親しまれている森林公園である。しかし、夜中になると人通りは全くなくなり、虫の泣き声だけがただ鳴り響く。
そんな夜中に1人の青年がポツンと立っていた。そこはその森林公園の中で1番樹齢が高いとされる大木の前だった。いつも通り人通りは全くない。その青年の前には少女の遺体が転がっていた。
青年は震えていた。少女を殺すつもりなんてこれっぽっちもなかった。しかし、人の命を奪ってしまった。自分は不幸という星の下に生まれてきたのだと悟った。
思えば生まれた時から不幸だった。自分を産んで体の弱かった母はそのまま他界してしまい、自分も母に似て幼少の頃は病弱だった。4歳の頃から9歳まで学校も行けず、ずっと入院生活だった。いつも病院のテレビでウルトラマンや仮面ライダーを見ては憧れていた。自分もあんな風に強くなりたい。たくましくなりたい。そう懇願してばかりの病院生活だった。小学4年生になって初めてランドセルをしょった。期待を膨らませ行った学校では、片親で長い入院生活だったという理由でいじめられた。しかし、少年は長い入院生活で憧れていたウルトラマンの様に強くなるため、体を鍛えた。近所の空手道場に通った。ただ友達は出来なかった。中学に上がり少年は昔病弱だった事が嘘かの様にたくましく育っていた。中学3年の頃には180センチほど身長があった。ただ、ケンカばかり繰り返し、常にツンとしていたため、周りには避けられていた。中学の卒業式、最後にクラス全員一言ずつメッセージを言うことになった。少年はクラスメイトにこう言った。
「お、俺は今はこんなんで、信じられないだろうけど、昔はすげー病弱だったんだ」
周りのクラスメイトがクスっと笑った。しかし全く気にせず少年は続けた。
「幼稚園の頃から小学4年生まで入院生活だった。1人で外に出歩くことも何も出来なかった。そんな俺にとって病院で見るテレビの中のウルトラマンや仮面ライダーが全てだったんだ。あんな風に強くなりたい。病弱な俺はそう強く思った。だから退院してからは体鍛えた。でも友達をどう作ればいいのか分からなかった。本当は…本当は、強くなるなんかより友達が欲しかった。一緒に公園で走り回りたかった。野球やったり、ドッチボールやったりできる友達が欲しかった。それなのに、俺ケンカばっかで、男子には不快な思いさせて、女子には怖い思いさせた。本当ごめん。以上」
先ほど笑っていたクラスメイトももう笑ってはいなかった。
たとえ死刑だとしても