息苦しき世界  前半

息苦しき世界 前半

改めまして、秋月 終夜です。
この話は原作者の私の実際に体験した話を元に編集しフィクションと混ぜ合わせたものとなっております。
多少、気分を害する恐れがありますのであらかじめご了承くださいますようお願いいたします。

プロローグ

プロローグ

僕には母親というものがいた。父親というものだってあった。
だが、いつしか親同士の仲が悪くなりお互い会わなくなっていった。
会えば怒鳴り合いになるからだ。
それからだろうか、母親は父親がいないのを見計らい男を家に連れ入れるようになった。
一日かえってこなかったりすることもたびたびあった。
幼い僕にはそれが何をしているかなんて分からなかったからわずかに残った食となる残飯を一人で食べる日が続いた。
ある日それが父親に見つかって怒鳴り合いになった。すごい形相で怒鳴り合う姿に初めて涙を流した。母親が部屋を出ていき帰ってこなくなった。
毎日僕が泣くからうるさい、と父親が僕の頬を殴る。泣き止む事は簡単だった。
だが空腹に意識が途絶え僕は部屋で倒れた。

暗き部屋


目が覚めるとそこは真っ暗な部屋だった。
周りには人が(落ちて)倒れていて口からなにかでていた。
ところどころ白い粉のようなものが落ちていて部屋はすこし臭っていた。
倒れている人々が唸り声をあげて自分の体に傷をつけたり笑いながら自分に針を刺したり異様な光景が目の前に広がっていた。
六歳の僕には刺激が強すぎて泣くこともままにならなかった。
年齢層も広いようだった。僕と同じくらいの子から父親や母親なんかよりずっと年上の人もいそうだった。

甘い誘惑

しばらくそこに立っていると部屋の奥から甘い香りがする。
その場にいた人たち もそれを嗅ぎ取ったようだった。少し反応がみられた。
僕は興味と好奇心が恐怖よりあったためか自ら覗きにいくことにした。
歩くと軋む床。その床に寝そべっている人たち。
六歳の自分がそこの頂点にたつもののように感じることはそう難しくなくむしろ容易いことだった。
ほんのりとランプの光が奥の部屋からふりそそぐ。
そこを覗くとまるで本にでてきそうな緑に覆われた部屋だった。
つたが部屋中を覆いそこには燃えてしまうんじゃないかとハラハラするようにひとつのガスコンロにぐつぐつとなにかが鍋の中で煮え立ってる音がした。
そこに一人の男が、その部屋の奥から白い粉のようなものを持って現れた。

父親がやっていたのだからすぐに分かった。麻薬だ。
男はその薬を片手いっぱいに盛ると鍋にいれた。
クックックッと不気味に笑う男に初めて恐怖を覚えた。
その恐怖に怯え、後ずさった時後ろにあったガラス瓶(酒のはいってたもの?)が自分の足にぶつかり倒れた。
音で気付いた男はゆっくりとその顔をこちらに向けた。
目を大きく見開き煙草をくわえた口から大きな赤く滲んだ歯がこちらに覗かせた。
ゆっくりとこちらに近付く男。
恐怖で声がでずただただ震えるしかなかった。
男は突如しゃがんでしゃがれた声で言った。
『初めましてだね、坊や。ここはちょっとした施設さ。見捨てられた子供やホームレスとして道にいるような輩を面倒みてるところなんだ。怖がらないで。君も捨てられたんだ。今日お父さんが君をここに連れてきたんだよ。』と、笑う。

悪夢の始まり。


謎が解けた。栄養失調と空腹で倒れた僕を父親はここに運んできたんだ。
だから、僕はここにいて周りには倒れた人たちが。。。。
え?なんで。なんで倒れてるんだろう。あきらかに様子がおかしい。
六歳の僕にはわからなかった。なんで僕は無事なのに周りは自分に傷をつけたりさけんだりしてるんだろうって。
不思議だったが狂ってる。それしか言い様がなかった。
そこから僕の悪夢の毎日が始まる。。。

始まる一日

朝、虫の死骸までもが落ちている床から起床。
朝食としてくばられるのは施設の管理人、というかもはや飼育員みたいな感じなのだがそいつらの食べ残し。
まわりでは毎日二人ほど死んでいってる。
僕はなにも考えずただ少ない残飯にかぶりつく。
服もあたえられずボロボロになっていく。
入浴は三日に一度程度、バケツにたまった雨水を大事に使わなければならなかった。
髪は伸び、もともと顔が母親似の僕は施設の仲間からも女に間違えられた。
ここにはいる前からもってた包帯。家に代々伝わるもののだったらしいがなぜかここで目を覚ましたときには手ににぎらされてた。伸びた髪を束ねて家から一度だけ届けられた僕の荷物を隅においた。
荷物は服が何着か入っている鞄だけだった。
僕は常にTしゃつ短パンのみしかきていなかった。
他の服はサイズが大きい長袖のシャツとネクタイとジーンズ、革靴がいれられていた。
だが、同じ服を着た。雨水で服を洗い寝てる間にほしていた為とくに支障は無かったのだ。

人形


麻薬の密売がされているが為にここの住人の気性は荒かった。
最初は罵られる程度だったがエスカレートしていきサンドバックと僕は化した。
痣が痛んで動けない日も多々あった。
『これじゃあ前と変わりないじゃないか...』
一年たつ頃にはもうすでに身も心もぼろぼろだった。
施設は意外と広く全部屋合わせると500人程がその場におかれていた。
歳ごとに部屋割りがされるようで僕のいる部屋には10人ほどいた。
みんな孤児なのだろう。
なにをされても僕は言い返すことや、やり返すことをしなかったのをいいことに全員のストレス解消道具となった。
僕が来て二年がたつ頃にはすでに息耐えるものもいて部屋には半分ほどしか残っていなかった。
最初僕が来たときから居た人はふたりほどになった。
途中から入ってきた人のほうが人口的に多かったのだ。

膨らむ気持ち

こうして三年が経つ頃、既にこの生活に慣れていた僕は気に病むことも少なくなっていった。
成長を遂げるに連れて身長も伸び新しくもともとあったあのTシャツとネクタイ、革靴を身に付けることにした。
髪は切ることができず伸びていく一方だが既に愛着すらわいていた。
だが、いくら生活に慣れていても親を恨む気持ちや施設生活から抜け出したいという気持ちは日に日に大きくなるだけだった。

脱出

前々から抜け出すことを企んだ。
何度も何度も。
だけどそれは全て、失敗に終わっていたのだった。
だから、今度こそは準備を怠らないようにと時間をかけることにした。
ここから抜け出す作戦を考えることに一年を費やした。
すでにこの時、僕は10歳くらいだった。
この頃になるとこのくらいの歳の子は皆働かされていた。
暗い部屋で町に売り出す品物を作らされていた。
主に衣服だった。
運んでる最中に汚してしまったものやしっぱいしてしまったものは自分達に配給として渡されていた。
そんな失敗したものでも嬉しく思い着る自分が嫌だった。
だから、なるべくその品物の残骸となったものに手をだすことは少なかった。

そんなことをしているうちに自分に向けられていた暴力が無くなっていった。
もともと手先が器用だった為仕事も一番できていた僕を見下す奴はほとんどいなかった。
嫉妬による嫌がらせもあったがそんな下らないことをしてるやつになんて見向きもしなかった。
僕には、抜け出す作戦を練っていることのほうが重要だったからだった。
そして施設にきて五年が経とうとしていたのだった。
ついにチャンスが来たのだ。

息苦しき世界 前半

お読みになっていただけて光栄です。ありがとうございます。
どうでしたでしょうか。
こんな私ですが作品に掲載された画像は私の絵なんです。(照)
プロフィール画像は私の最愛の友人に書いていただいたものです。
よければ、他の作品、後半もお読みになっていただけると光栄です。

息苦しき世界 前半

作者の実話を元にした話。 ぜひ、リアルな世界へ飛び込んでみませんか?

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-30

Copyrighted
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Copyrighted
  1. プロローグ
  2. 暗き部屋
  3. 甘い誘惑
  4. 悪夢の始まり。
  5. 始まる一日
  6. 人形
  7. 膨らむ気持ち
  8. 脱出