ミステリー童話『シンデレラ』
俺は昼は探偵、夜は殺し屋の仕事をしている。
このご時世、昼も夜もあくせく働かなくっちゃオマンマにも女にもありつけない。
きょうの仕事は、
見知らぬ老婆から依頼を受けた。
この国の王様が、主催する舞踏会に出席してくる一人の女が、ターゲットだった。
殺しの理由は聞かない、知りたくもない。
ただ金をもらって目的を遂行するだけだ。
今日の舞踏会に出席している女たちは、
どうやら、
この国の王子の結婚する相手を探すパーティらしい。
俺が殺すその中の一人の女の一人の側に近づいて、
毒が入った注射器でその女の身体に、
一刺すれば、仕事は終わりのはずだった。
ところが、俺がターゲットに注射器を撃ち込む所を他の女に見られちまった。
殺し屋が殺しの現場を見られたらかはには、見た女も生かしておくわけにはいかない。
その女も、殺さなければ。
俺は必死で目撃した女を探した。
その女はいつのまにか王子と一緒にダンスして踊っていた。
今は警護が厳重で、側には近づけない。
女が王子から離れた時を狙うしかない。
ところが、いつまでたっても王子は、その女を離そうとはしなかった。
あげくに突然、女は王子から逃げるように離れ、王子は女を追いかけて行った。
女は姿を消した。
あとには、
女が髪に飾っていたダイヤモンドのティアラと、ガラスの靴が残っていた。
王子もその女の行方を探していた。
王子よりも先にその女を探し出さなくては。
俺は、女が残していったというガラスの靴を作った職人を探した。
あの日、あの女は、
あの現場で、ガラスの靴なんて履いていなかった。
もしも、履いていたら俺がその足音に気づかないはずはないのだ。
あの女は、あの女の足の形を型どったガラスの靴をワザワザあそこに置いていったのだ。
勿論目的は、王子に自分を探させるためにだ。
俺は国中のガラス職人をあたった。
そしてとうとうその靴を作った職人を探し出した。
その職人が言うには、
一人の老婆が、女の足型を持ってきて、この足にピッタリのガラスの靴を作って欲しいと、頼んでいった。
と、話していた。
一人の老婆?
俺の依頼人も一人の老婆だった。
その老婆は、同じ人物か?
俺は、仕事の後金を受けとるために依頼人の老婆に会うことを思い出し、
俺がやった殺しの現場のことについて、それとなく聞いてみることにした。
老婆と会う時刻。
俺は嫌な予感がしたので武器をもって金を貰いに約束の場所に行った。
そこへ老婆は現れた。
そして、俺に金を手渡すと、
あの娘の事は、忘れても大丈夫だ。
あの娘は見たことを誰にも話さないだろう。
と、
言い、俺は金を受け取った。
お前が殺した女は、王子のお妃候補の女だった。
これであの娘が、王子のお妃になるだろう。
と、老婆は言った。
これから先は、お前はお妃様のために働くのだ。
次の仕事は、
娘が二人とその母親を殺すのだ。
と、依頼を受けた。
その依頼もどんな事情があるのかなんて知らない。
ただ一つ後からわかった事は、
あの老婆は、実はあの娘が変装していたってことだった。
姥皮という死んだ老婆の皮があるらしい。
あの娘は、その老婆の皮を何処からか手にいれババアの皮を被って変装していたのだ。
あの娘は、俺はおろか王子まで手玉にとってこの国のお妃になっちまったって事だ。
お妃の地位を手に入れるためには、何でもありって言うことさ。
ミステリー童話『シンデレラ』