人間とは、実におもしろい
人は生きて苦しみ、『死』を苦しむ。それは、人のさだめであろう。常に苦しみや悩みに惑わされながら、足掻き、もがいて、生をなして、そして死ぬ。人の一生など、決してめでたき、ありがたいこととは言い難いであろう。
しかし、それは人の世から遠く離れた所から見る者の言い分で、人間一人一人その身から考えるとすると、果して通じるであろうか。
人間は、生と死の輪廻から抜け出さなければ、解脱を得られないと言う。だが、人間が必ず誰しも『解脱』を渇望しているとは限らん。激しい感情、深い絆……そんな人々を縛りつけるいろんなものが、逆に人から強く求められるかもしれん。
そんなものに強く縛り付けられることによって、安心感や幸福を感ずる人が存在する。彼等はそんな不確かなものを永久だと信じ込み、それに頼り、更にそれを支えにして、たくさんの苦難を超えてきた。たとえどんなに苦しもうと、どんなに悲しもうと、笑い合える日がきっとくると信じて、生きることを楽しんで、そして死を恐れずに死んでゆく。
そんな者たちは、解脱など求めていない。いや、むしろ解脱したいと考えたこともないだろう。
世界は醜い。世界は美しい。人間がいるからこそ、なおのこと……
人間というのは、実におもしろいものだ。
人間とは、実におもしろい