濡れ女はストーカー1~なんか鼻で笑われたんですけど~

濡れ女はストーカー1~なんか鼻で笑われたんですけど~

濡れ女はストーカー

~私目玉焼きは一つ目小僧さんから来てると思うの~


「なぁ、もしお前がもしだよ
道を歩いているとしてなんかの拍子に女の子にだよ
何も言わず微笑みかけられたとしたらどうするよ」


俺の同僚は時々変なことを言う

意味深な事を聞くと最初はよく考えて答えていたのだが
どうやらあまり意味がないらしい

こいつは自分の趣味のオカルト知識を披露したいだけなのだ

「さぁ何もしないんじゃないか」

「そっけない答えだよ、つまらないね
だけど今回はそれで正解ということになるのだろうか
しかし面白くないそれでは人生楽しくないだろう」

早口でまくしたてられる
こいつはよくしゃべるやつなのだ

「あぁまったく天狗にあった時どうすると聞いたら鼻をへし折る
と言っていてあの勇者のような君はどこに行ったのだ」

そのせいで昨日は一晩中酒を飲みながら
天狗の強さについてしつこく解説されたから今日は
うかつなことを言わないようにしたのだ

「まぁいいんだ今は天狗の話じゃないしね
微笑みかえすだろう君は優しいからね」

一瞬何のことかわからなかったが
最初の質問のことだと思い出した

まぁとあいまいな返事を返すと

「あぁ君は今重大な間違いを犯したよ!」

火がついたように話し出す

彼はこの答えを待っていたのだろう
俺がこう言わなければしつこく言わせようとするに違いない

「もしそれが濡れ女だったらどうするんだ
あぁ君はなんておろかなんだ 
しょうがない私がその対処法と恐ろしさを教えてあげようじゃないか」

こうなったら長いのでほとんど俺は話を聞いていなかった
だが適当に相槌を打つだけで酒をおごってもらえるのだ

それに彼といるのは意外といやじゃない


そんなことを思いながら話を聞き流すついでに
そう言えば昨日の帰りにであった小さな女の子思いだしていた


~~



夜の十二時は確実に回っていたが
酔いも回っていたので
もう世界が回っているという感じだった

その子はそんな暗闇の中人気のない
道で一人だった

いつもなら近くに親がいるのだろうと声などかけないが
酒が入っていたのもあったのだろう

声をかけた少女はじっとこちらを見て
微笑みかける

その時なぜかあいつが語っていた天狗の話に
幻を見せる天狗もいるといっていたのを思い出した

天狗に事を恐れているみたいだと自分のことだか可笑しくなった

なにぶん酔っていた
はっと自分のことを鼻で笑うと少女のことも忘れ
千鳥足で帰った


そういえば少女はどうしたのだろうか
無事ならいいが


~~


私は周りを見て特殊な生き物の類なのだと知っている

まず100年もすればみんな姿かたちを変えてしまう

私はもっと生きているがずっと変わらない

きづいた時からずっとこれだ

私は人を殺すために生きているのだろう

私にはあらがえないルールがある

先ず姿を見せるのはならべく夜にすること

次に人に微笑み微笑み返した人に憑りつくこと

最後にこれが厄介なのだが

人の前に出るときは常にこれでもかとびしょぬれでないといけない


別に私は何もしない憑りつくだけだ

しかしそれだけで人はストレスを感じて
衰弱していくのだ

人は私を恨むのだろうか

しかしこれが普通のことでこうあるべきと教えられた
変えようとは思わない

それに別に恨まれても仲間が増えるだけだ

若いお兄さんが千鳥足で歩いてくる
だいぶ酔っぱらっているみたいだ


微笑みかけた


しかしお兄さんは微笑み返そうとしない
目の焦点もあったないみたいで見えてないのかもしれない

なぜかホッとしている自分がいた
罪悪感からだろうか
そんなものに意味などないのに

お兄さんは、はっと鼻で笑ってどこかに行ってしまった
私を嘲笑ったように見えないこともなかった

確かに笑った微笑みだと言えないこともない
微笑みは口を開けず笑うことだ

しかし完全ではない

この場合どうすればいいんだろうか

笑われたから憑かなければならない
プライドがある、プライド

だけど微笑み返してもらわないと取り付けない
これは由々しき事態だ

とりあえず明日は後をつけることにしようと結論づけた
だが微笑んでもらってないので憑りつくことはできない

しかしあとをつける事ならできる
そのぐらい自由だ

こっそり後をつけて隙をみて微笑み返してもらうのだ
それにそんなに悪い顔じゃなかった
顔は関係ないんだけどっ


楽しい毎日になる気がした


鼻歌が夜の街に流れる


~~


「つまりだね濡れ女ってのは
相手に微笑みかけてそれを返してしまうと
憑りついてしまうんだ」

さっきは子供を押し付けられるとか言ってたじゃないかと思うが
口をはさむのはあまり良い態度ではないだろう

シーザーサラダをほうばりながら
うんうんと頷く

俺の礼儀正しい態度に満足したのか
上機嫌になりながら口を滑らかにする

「ふっふっふ、最も良い対処法を教えてあげよう
それはね、笑わせてしまうんだ
相手に微笑ませない!これが一番だと思うね」

なんだそれはと思ったがいちいち言っていたら話がとんでもなく
長くなる

「そういえば俺はこのまえマスクをかけた女に
私きれい?と言われたぜ」

「それはもしかしたら口裂け女かもしれないな!なんて答えたんだい」
興奮したのかどんどんと机をたたく

「そうかもな、お前が口裂け女が追いかけてこれなくなる
じゅもんをおしえてくれていたろ
だからガロキキラドと三回唱えといたよ
そしたらポカンとしていたな」

同僚は珍しく深いため息をついた

「それはそうだろうね、可愛そうな女の人だ
それに口裂け女の呪文を間違えているよ
普通の女の人でもたとえ口裂け女でもポカンと
するしかないと思うんだがね」

まったく君は変人にもほどがある
といって微笑む

「おまえにだけは言われたくないな
お前が変なこと言うからつい言っちまったんだよ」

「それでその人とはどうなんだい、そのあと会話ぐらい
したんだろう」

「どうって別に、そういえば公園で会うから挨拶はするかな」

「朝ジョギングすんだっけね?」

「あぁその時に会うんだ」

それはおかしくないかいと同僚は考え込みはじめる

「なあ、そんなことよりあれ見えるか」

「ん?見えるね」

俺が指差した先には中学生みたいな女の子がオレンジジュース
を飲んでいた

「たしかにここは飲み屋だけれどおしゃれな店だから
珍しくはあるけどね」

「なんか見覚えあるってか、、、」

それ以上は言うか言うまいか迷ったが
俺がおかしいと思はれるだけだろう


そう俺の目にはその女の子がこれでもかというくらい
びしょびしょに濡れていたように見えたのだった


この店にはマスターと俺たちそしてその女の子しかいなかったが
こいつはともかくマスターは常識をわかってるはずなので
そんなことはないだろうと思い直す

「そういえばあの子君のことを一日中
つけていたようだけど?」

「は?さすがにそれはないだろ」

「いや君はなかなかに美形だから」

「真顔がこえぇよってか気持ち悪いよ」

それはひどいと思わないかいといってしゅんとして立ち上がる

今日はおひらきみたいだ 

「ごちそうさん」

「気にすることはないよ」

帰り際にマスターがその中学生をバスタオルで
ごしごしと拭っていたようだけど気のせいだろう

「気のせいではないようだよ」


「心を読むなよ」

っていうかやっぱ濡れてたのかよ
突っ込めよ誰か

「君は本当に人の話を聞いてるのかわからなくなる時があるよ」

昨日の話じゃないかと呆れられた


たんたんたたたと着信がくる

「俺だ」

「私はケータイを持っていないよ」
それは困らないのかと思うが別にそんなのは個人の自由だ

「もしもし」

「「わた」」

電話を閉じる

「なぜ電話を切ったんだい」

「いや最近しょっちゅうかかって来る間違い電話だ」

「かわいそうに」

なぜか憐れむような顔をしてやがる

その時あの中学生が走ってきて俺になぜか微笑みかける
今思えば変な奴だ

だがその時俺は酔っていたんだ

思いっきりほっぺを引っ張り変顔をしてやった

驚くほどとても寒い空気があたりを包む

やるんじゃなかったと後悔しても遅い

びしょ濡れ中学生の乾いた笑いが夜の街にこだまする


気を使うなよ
帰ってから泣いた



一話目 完

次回~プライドはささみフライと似ている~

濡れ女はストーカー1~なんか鼻で笑われたんですけど~

濡れ女はストーカー1~なんか鼻で笑われたんですけど~

濡れ女がストーカーになっちゃう話 あなたが道で女の子に微笑まれたらどうしますか とても短いのでサクッとどうぞ

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-11-18

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