メビウス

メビウス

始めての投稿です。
みなさんに楽しく読んでもらえれば嬉しいです!

プロローグ

こんな世界に、私は、憧れていたのだろうか。

愛も、希望も、未来も、全部。全部、憎しみに作り変えて。

私のせいで、この世界は滅びるんだ。

でも、まだ終わらせない。

「xxxxxxxxxxx」

赤使いにご注意を

夏は、もう消えかけていた。
かろうじて残っているこの暑さには、私の気を苛立たせるものがあった。
こんな日には、つい、思い出してしまう。何年も前に私が住んでいた世界のことを。

「空ぁ、どの服がいいと思う?」
「んー?れななら何でも似合うよ」
「えー。心愛はどう思う?」
私の周りでは、乙女が2人、服選びに精を出している。
特に何処かへ出かけるわけではない。おそらく夏休みの宿題もどっさりとあるだろう。
だからテストでいい点が取れないのよ、と心の中でつぶやく。
「そんなことする余裕があるなら宿題すりゃいいのに」
「そうよ。だいたい今日は…って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
少し声が大きくなってしまったのには、まぁ、いろいろな事情が詰まっている。
そんなことより…っ!
こいつがここまでデリカシーがない奴だったとは。一緒に暮らしているとはいえ、女子の部屋に入るなど言語道断!警察に突き出してやろうか。
「宿題なんて私には必要ないも〜ん」
「へぇー。れな、頭の良さには自信あるみたいだね…」
遼はれなが困っている顔を見るのが好きだ。この間、遼がそう話してくれた。何故だかれなは、遼の期待を裏切らない。しかも、もう何度も同じことを言われ続けているというのにれなはいっこうに改革を見せない。学習能力の低さがここに現れている。可哀想なことだ。
「これ終わったら宿題するから!いいでしょ、趣味なんだから」

「「趣味ねぇ…」」

理解不能だ。お手上げ。降参。れなの趣味に付き合えるのは心愛ぐらいだ。
「変な趣味」
前言訂正。心愛"だけ"、だ。

「今日、何か予定あったっけ?」
「え、何で?」
「さっき空ちゃん言ってたじゃん。『だいたい今日は…』って」
あぁ、うん。言った気がする。私も、記憶力だけは自信がない。すぐ忘れてしまう。

「私のことも、忘れちゃった?」

ぞくっとする空気の中、あの人が私に話しかけていた。

ここまで一気に書いて、少し休憩をとった。
執筆には慣れているが、今回は少し別だ。今までの作品とは一味違う、と我ながら思う。あらすじで表せない内容で、つまり、「突飛」なのだ。

水を飲んで、再びパソコンへ向かう。
「ナニコレ…ッ⁉︎」
パソコンの画面を見た瞬間、私の口から反射的に言葉が出てきた。
そこに映っていたものは、さっきまで私が書いていた原稿と、後ろを向いて何かをしている、4人の人だった。
ショートパンツに茶髪の元気な女の子、青髪の涼しげな少女、緑髪にカチューシャをつけた女の子、それに…紫髪の"猛"に似た男の子。後ろ姿だから、本当に似ているかどうかは微妙なところだが。
どこか見覚えがあるようで、無い。それよりも疑わなければならないのは、これが現実かどうか、だろう。
私の声が聞こえたのか、私の気配を察したのか、4人はこちらを向いた。
「あ、あの、その……」
緑髪の女の子が声をあげた。
目を逸らし、考える。
これは何かのウイルスなのか?
ウイルスだとしたら、再起動するに限る。ウイルスじゃないとしたら…これはそもそも考えられないので気にしない。
とにかく、一度作品を保存しなければ。
保存しようともう一度パソコンに向き直った。しかし、そこには彼らの姿はもうなかった。
「なんだ、夢か…」

私の作品は、"赤使い"という不思議な少年少女の物語だ。
赤い目を持つ彼らは、かつて世界が滅びようとした際に力を手に入れた。己の欲望のままに動く人間と、少しかけ離れた存在。それがこの赤使いたちだ。
…この後はまだ考えていない。ハッピーエンドかバッドエンドかも考えていない。
でも、絶対に自分の思いのままに書くと決めた。それだけは絶対に守らなければ。
もう1時過ぎ。今日は少し張り切りすぎたようだ。これ以上起きていても無駄だ。さっきのちょっとした事件で、考えていた展開も、考える気もうせてしまった。寝よう。そして、また明日、考えよう。
這うようにベットへ移動し、そのまま…寝た。

小説バトル

清々しい朝。目が覚めて体を起こすと、カーテンの隙間から光が漏れていた。ベットからおりてカーテンへ向かう。窓を開ける。
眩しい朝日とともに爽やかな風が吹き込む。
「ふぅ…。今日もまた頑張りますか!」
クルリと後ろにあるパソコンに向き合う。その時…
「ふぁ〜…。いい朝ねぇ。でも、ちょっと眩しいかな」
「え、あの、どちら様で…すか?」
三つ編みを後ろでクロスさせたスッキリとしてまとまっている、少しお嬢様風の髪型。裾がふわっとしたブラウス。これまたお嬢様風のスカート。だが、口調はそうでもない。少し高慢な感じがする、といった感じだろうか。
「私?私は幽霊よ!」
ゆ、幽霊…って!
「でたぁぁぁぁ〜!!」
「うわぁぁぁ!!大きい声出さないでよ!びっくりするじゃん!」
「そ、それはこっちのセリフだって!」
見知らぬ人の家に勝手に入ってきて大きな声を出さないでだなんて一体どういうつもりなのか…。ん?そうだ!この人、不法侵入してるってことだ!だから大きな声を出さないで欲しいのか。
「あ、あのさ…。私、不法侵入とか…関係ないよ?」
「勝手に入ってきてること自体不法侵入じゃない!!」
「いや、だって私人じゃないし。」
目が丸くなった…ように感じた。人じゃない?やっぱり幽霊なのか?それより、なぜ何も言っていないのに不法侵入の話をし出したのか?幽霊になると心が読めるようになる…とか?
「ねー、なんか言うことないのー?」
「何が?」
こんなことがあるなんて。小説や空想、漫画、アニメなんかにありそうなシチュエイション。こんなこと…。
私、これは幻だと思う。絶対そうだ。ありえないし。
「昨日からどうしたんだろう、私…」
そうつぶやくと女の子は首を傾げて、
「どうしたもこうしたもないでしょうねー。昨日なんかあったの??」
と、気安く聞いてきた。
なんなんだ、この子…。
「いっけない!こんなことしてる場合じゃなかった!」
もうういい!こんな変な幻は気にしないようにしよう。
今日は、小説作成部のメンバーで集まる日だ。部と言っても5人しかいないけれど。メンバーは私、猛、桃華、大智、楓。部長は私で副部長は猛だ。部の活動は単純。小説の作成とその発表。
「私忙しいの。幽霊ならとっとと成仏しなさいよー」
「私と話す余裕はあるみたいじゃない。それと、私幽霊じゃないんですけど」
自分で幽霊って言ったくせに。あれは嘘だったの?なんだか胡散臭い人。人?幽霊?あぁもうなんなの!気にしちゃダメ、私!
「ふふ〜ん ♪そんなに私のこと気になるなら教えてあげてもいいよ?」
「は?何言って…」
「私はあなたの物語の精霊・八神瑠衣。又の名を書物の使徒・ユイ。本日は天照大神様の命を受けてこちらへ参りました」
急に真面目くさった口調で話し始められて、つい聞く耳を持ってしまった。

メビウス

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メビウス

小説作成部。小規模ながら、帝王学校の生徒からはかなりの反響をもらっている部。 そのなかでも、部長である小池鈴美は全国でもトップクラスの少女作家だ。 そんな少年少女たちの、宿命と未来をかけた壮絶な小説バトル!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-24

Copyrighted
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  1. プロローグ
  2. 赤使いにご注意を
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