10年後のシンデレラ

この間NHKで放送されていた番組で
やっていた10年後のシンデレラという企画が面白かったので
私も書いてみました。

私はシンデレラです。
皆様ご存知の通りのシンデレラストーリーで王女の座を手に入れた私ですが、
一つ気に入らないことがあるのです。
何かだなんてお聞きにならないでください。
当然この名前ですの。シンデレラってどういう意味かご存知かしら?
灰かぶりよ。灰かぶり。全く失礼しちゃうわ。
一国の王女様の名前が灰かぶりだなんてお笑い話もいいところじゃなくて?
そういうわけで私は今国民に名前を募集しているのよ。
いい名前をくださったならあなたにだってたくさんご褒美を差し上げるわよ。
王子様に考えてほしいところだけどダメなのよ。
彼ったら「いい名前だね」だなんていうの。
これだから世間知らずのおぼっちゃまは嫌だってのよ。
甘やかされて育ったから感性がズレているんだわ。きっとそうよ。

そんなこんなでお城にはご褒美欲しさに朝から晩まで国民がやってきました。
一人目は「ガラスの靴姫でいかがでしょう」といいました。
「そんなのあんまりだわ」
二人目は「カボチャの馬車姫でいかがでしょう」といいました。
「カボチャなんて私好きじゃないわ」
三人目は「リンゴ姫はいかがでしょう」といいました。
「可愛いけれど高貴さがないしそれになんだか誰かとかぶっている気がするわ」
そうして四人目五人目と多くの国民がそれぞれシンデレラの物語にちなんだ名前を送るのですが、
なんせこの物語というのがそもそも貧乏な美女が王女様になるまでを描いた物語なものですから、
当然貧乏時代のことばかり書かれていてきらびやかなお城での生活については何にも書かれてはいないのです。
「国民は悪くないわね。これはペローを呼びつけてやるしかないわ」
シンデレラは自分の物語を語りついだ人間に新しい物語を書かせることにしました。
ところがせっかく呼びつけたペローは何も悪びれず言うのでした。
「自分はグリムさんの物語を子供向けに書き直しただけでございます」
これは確かにその通り。ですがグリムなんかに書かせた日には血みどろのホラー童話の出来上がりです。
それでは誰もシンデレラに寄り付かなくなってしまいます。
「子供向けに直したなら今度は私の名前だけでもかえて伝えることができるでしょう」
困ったシンデレラはそういいました。
するとペローは難しい顔をしていいました。
「恐れ多くも王女様このシンデレラというお名前は確かにそのまま読み上げれば
 灰かぶりという意味でございます。ですが考えてもみてください。
 このお名前はそういった困難な状況から自らの力で立ち上がり
 美しく王国を支える王女様にまで上り詰めたあなた様のすばらしい物語を思わせる
 何ともすばらしいお名前ではありませんか」
まさに目から鱗でした。
「ああ、そうですわ。私ったらこんなすてきな名前になんてくだらない考えだったのかしら・・・」
シンデレラは反省し、そして自分の名前を考えにやってきた国民全員に少しずつ豪華なご褒美を分け与えました。
そして間違っていた自分をただしてくれたペローと、
真意はいまいちつかめないけれど自分の名前をよいと言った王子様に、
深く深く感謝したのでした。

めでたしめでたし

10年後のシンデレラ

まぁ、私はシンデレラはグリム童話派ですけどね。

10年後のシンデレラ

シンデレラの二次創作です。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-22

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