practice(68)


六十八




 大きな踏み台を支える力強い手に跨り綺麗に切った,四角形の晴れ間から見える鉛筆の経線の書かれ方には棚のような感触もあって,使った後の木屑は作られたものの匂いを残していた。新鮮な匂い,そう形容していいのか,このためらいに加える孤の運動は手をめいっぱいに伸ばした,拭き掃除の意味になって組み立てのつなぎ目が分かる。ほんの一部の,もっと一部。材料と材料の接合部分に見てとれる,架空の直線に添えられた矢印は外に向かって一回くるりと踊っている。けど,その先が読めない。
 糊付けされたシーツ。白シャツのお腹の上で眠るお話上手の猫が砂も落とさずに牛乳パックを蹴っ飛ばしているから,軽く軽く。
 葉っぱの脈絡にぶら下がるのが使うことのない木槌のレプリカであったとしても,雨を含むような壁掛けの紙も包んで持って来た。スティック型の雨漏りも,大胆なかたつむりの案内板も手荷物にならない。心を込める網戸の静かな王冠の形。跳ねた寝癖の,歩くような速さは傘の上で遊んで,傘の下ですすむ。すすむ,拾う足跡(そくせき)の目盛りが定規の赤い線になる。せっかちなヤドカリはいない。
 等間隔は近い。
 物干し竿に掛けたチョッキが風になびいて,とんとん拍子の落ち着きには素描の在り処がノックをして,佇んで,記号をなぞって閉じ込める。
 塩味のスナックの空き袋には,二つ折りした紙を束ねて。フェルマータとそこに。











 

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-21

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