悪魔のささやき

聞こえてしまった。悪魔の声を


 七ヶ月前
いつものように私は、居心地の悪い仲間たちと
猫をかぶりながら 心の無い笑いを浮かべていた。
そんな ある日 転入生が新しくクラスにやってきた。
名前は「米田 弘美」 マイタ ヒロミ
なんとなく 静かな雰囲気で、どこと無く 落ち着いているようにも見えた。
話し方から、元気なこってわけでもなさそうだ。

そんな中、彼女の席は 窓側の前から三番目
私の席からほど近く斜め左手前にいた。

クラスの男子は、ちゃかしだし
クラスの女子は、ひそひそとなにかを話している。

昼休み 
私は、いつものメンバーと一緒に
教室で話をしていた。

今日の話題はこうだ
「隣の席の サクラちゃんが男の子ばっかみているどれだけ男の子すきなのか」
いつも、誰かの悪口を言っていないと我慢できないのか
毎日誰かのことを口にしている。そう思うと 私も実は影で悪口を言われてるんじゃないかと不安になって
しょうがなかった。

一人はいやだから 嫌われないようにくっついて歩く。
すかれたいがために 誰かを悪く言う。
なんて息苦しい世界なんだ なんて小さい世界なんだ なんて醜い人間たちだ
そんなことを思い 一人外を見ていると

一人の女の子
「ちょっと、話聞いてるの?無視してるの?」
少し怒り気味の口調で私に、背を向けた。
「いや、そうゆうわけじゃないんだけど、少しぼーっとしててごめんね?」
そう 誤ってみるものの彼女は
「いいよ。わたし達だけで話すからあんたは一人でいていいよ。」
そんな事を言われてしまった。
あぁめんどくさい でも、一人はいやだ
私は許してもらおうと必死で輪の中に入ろうとした。
こんな自分が醜くてしかたがなかった。
どうして私はこんなに弱いのかな?
こんなに臆病なんだろ。
強く生きたいのに

そんな私に リアルをみせてくれたのは、
弘美ちゃんだった。
彼女は、一人を恐れなく
前だけを見て生きている。
そう感じさせてくれたのは、ちょうど六ヶ月前だった
私は、あの日からなかなか輪に入ることが出来ずにいた。
なんだかもうすべてがいやになり 私は トイレで一人
涙していた。
そこに 弘美ちゃんがやってきた。

「ねぇ なんでないているの?」
彼女は私に聞いてきた。
「なんでもないよ」
冷たくあしらった
「そんなに一人が怖い?」
なんでか腹が立った。
「こわいよ!?一人になるのはものすごくこわいよ!あなたになにがわかっるっていうのよ」
そんな事を 弘美ちゃんに怒鳴り返してしまった。
なんでかものすごく 彼女の雰囲気 話し方 歳の割りに大人っぽいところ
すました顔 なにもかもが私の苛立ちを引き出してきた。
こんな子嫌いだ…

私はシカとして、トイレを出た。
なんだよ…あんなやつ
そこで、周りでこんな案があがった。
 「米田さんのこと いじってやらない?」
そんな事を笑いながら話す友達。
少しだけ抵抗があったけど、私も嫌いだとその話にのった
それから、毎日のように弘美ちゃんに対するいたずらがはじまった
最初は数人だったもののクラスの3分の2が弘美ちゃんをおもちゃにあそんでいた。
私も最初は抵抗があったもののなぜかみんながやっているので怖くないという気持ちになってしまった。

あぁ楽しい
なんて楽しいのかな 周りが嫌いだったけど
なぜだか前以上に友達という関係が深くなった気がする
共感するものが前よりも多く身近で感じることができるからかな…
やめれない。

醜く腐っていく心と知っていてもやめることの出来ない私がいた。
でも、みんなと楽しく遊べるならそれでいいという気持ちにもなっていく。

きっと私は地獄いき そんなことを考えながらすごしていた。
あれから半年が過ぎた、さすがの弘美ちゃんも耐えれなくなったのか
前よりも学校に来る回数がどんどん減ってきた。
そうなったことでクラスの苛立ちも徐々に生まれ 「いじめ」を無視していた人たちに目が向けられた。
私はそのときこう感じていた。

「人は、誰かを下に誰かをいたぶりつけ 自分のほうが偉いんだと 自分のほうが優れているんだと
 こんな人たちは要らないんだと…」そう確信した。
誰かの上に立ってこそ人間
誰かを突き落としてでも上へ上へと上がっていきたがる。
そうでなければ 自分は社会に必要に無いごみ
今 私たちはそんなごみを始末しているんだと
そう 洗脳されてしまったのだ この狭い社会に
この馬鹿くさい世界に。

一ヶ月後

10時24分 米田 弘美 学校の屋上から飛び降り自殺。
まだ、14歳というあまりにも早い人生に自ら幕を降ろした

そこでようやく 自分たちがしてきたことに罪を感じ
悪意と罪悪感で周りの空気はいっぺんした。
自分は悪くないんだと 自分は見ていただけなんだと
みんなが自分の許しを神に祈り始めた。

だけど 気づくのが遅すぎた。
学校の教師 会長達はいじめは無かったと全否定し
親の育て方のせいなのだとそういいつけた。
お金で解決しようと弘美ちゃんの両親に和解をもとめた。
親御さんは、了解したうえにいじめはなかったとマスコミに報道した。

なんて 残酷な世界なんだ。

私は、許されないことをしたのだとようやく理解した。取り返しのつかないことを
私の机の中に一枚の紙切れが出てきた。
その紙切れは手紙のようだった

「この手紙を読んでいるということは、私はもうこの世には居ないということですね?
私がなんでこうして手紙という形で あなたに届けた理由を今から話したいと思います。
私が こうしてみんなから受けた 「いじり」はきっとあなたたちからしたら遊びだったんだと思います。
もしも、強い人間だったらこんな無駄な命の捨て方しなかったんだと思います。
でも、私には耐えられなかったんです。本当はもう少し自分の人生 将来に夢を描きたかったんですが、先に 心が持たなくなってしまいました。
きっと 私が死んだことによって 今頃 クラスのみんなは焦りに戸惑い罪悪感 後悔 そんな沢山の感情に身を包んでいることでしょう。
でも、私はあなたたちを許そうなんて一度でも考えたことありません。だから こうしてつたえるの 後悔と罪を犯した心と罪悪感をもって
一生生きていきなさい。自分がなにをしたかどんなに醜い人間か 大丈夫。人は心をもっているんだから 暖かい涙を流せるのだから…
これから苦しんでいる人がいたなら しっかり回りに流されず 自分らしく生きてください。
あなたはきっとこれからの行いで 地獄にでも天国にでも行くことが出来ます。だからしっかり つぐなってください
これを読んで 一人でも多く 優しい人になれることを願います。
さよなら。 」

そう書かれた手紙が机の中に…
なんて なんて残酷なことをしてしまったのか…取り返しのつかないことを。

その夜から私は眠れることはなかった
後から聞いた話ではこれはクラス全員と教職員ともども弘美ちゃんの親御さんにも届いていたということだ。



end

悪魔のささやき

悪魔のささやき

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-20

Copyrighted
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