コンビニの帰り

皆さんはどんなとき、温かく感じますか?
皆さんはどんなとき、笑いますか?
皆さんはどんなとき、ありがとうって微笑みますか?

温かいとは

 「温めますか」

コンビニ それは人それぞれの利用の仕方がある場だ。

 軽食をとるために立ち寄る者もいれば、夕飯代わりに弁当を購入する者もいる。それから、エロ本を立ち読みしたり熱々の肉まんを買ったり...今日はそんな者たちのコンビニをのぞいていこう。

 

 
 「どうしよっかな」

 彼は工場にでも勤めているのだろうか。作業着を着用して弁当を眺めている。手にはプチ富士山といった感じで大量の弁当が抱えられている。職場の先輩などにも買っていくのだろうか。おや、レジに向かって歩きだした。どうやら購入するものが決まったようだ。それにしても持ちきれるのか。まだ若い男性だが、力はとてもといっていいくらい無さそうで少々頼りない。案の定、顔を真っ赤にして肩を震わせながらレジに歩み寄っている。購入したはいいが、これをどう持っていこうか。店の外まで出すのも困難なようだ。

「外までお持ちしましょうか」

 レジの店員が天使のように優しく声をかけてくれた。彼は目を丸くして一点を見つめている。わずかな時間ではあったが、彼は弁当を外まで持っていくときを温かく感じたそうだ。そして、最後は互いにありがとう。

 工場についた頃には弁当は冷えきっていて冷たかった。だけど、彼の心はまだ温かかった。



 温かいって何だろう。あれから彼はそのようなことを考えるようになった。カイロを使うことか。こたつに入ってみかんを食べることか。いや、どれも違う。暑い夏でも感じるであろうあの温かさは忘れられない。そして、あのときの笑顔...何でやってもらうんじゃないのに自分がやってあげるほうなのに笑顔になれたのだろう。あの店員は...。人間って不思議だな。今日も彼はあのコンビニに来ている。そして、弁当を選ぶのだ。何故だか、ここにいると心の底から温かくなる。そう考えているうちに、生まれたばかりの赤ちゃんと幼稚園くらいの男の子を連れた母親が入ってきた。男の子は店内を「ビューン」と言いながら走り回っている。子どもっていいな。だがふと目線をあげると母親の困り顔があり、大変だなとも思える。上と下...目線を変えるだけでこんなにも世界は変わるのか。

「あっ」

 店内は一瞬静まり返った。男の子が転んだのだ。母親は赤ちゃんを連れているため何もできない。店員もレジから離れられず泣き声だけが店内に響き渡った。どうしよう...誰もがそう思った。五月蝿いなと睨む者もいた。だが...

「立てるかい」

 重い弁当を持っているのにも関わらず、彼は男の子のもとに歩みより、そっと手を出した。男の子は泣くのをやめ、コクリと首を縦にふった。右手で涙をぬぐうと、男の子の口からは「ありがとう」という言葉が出た。そこまで大きなことはしていない。普通のことだけど、やっぱり心は温かかった。そして、男の子の顔を見ると...ほら。



 お兄ちゃんの手...温かかったな。嬉しかったな。僕もああやってみたいな。

 

 あの店員もこんな気持ちだったのかもな。やったあとって...温かい。心も体も...温かい。あの男の子にも伝わったかな。こんな風に、他の人のこと助けられるかな。助けてもらえるかな。

 

 コンビニ それは人それぞれの利用の仕方がある場だ。

 

 軽食をとるために立ち寄る者もいれば、夕飯代わりに弁当を購入する者もいる。それから、エロ本を立ち読みしたり熱々の肉まんを買ったり...温かかったり。

コンビニの帰り

続く

コンビニの帰り

私は日常で誰にでもおこりうることを書いています。自分だったらどうするか。そんなことを考えて読んでみてください。 ※この回は私のブログで1~3話として一度公開されています。次回からはまだ未発表です※

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-18

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