心の殻
大学2年、俺、那智浩太は振られた。不幸ばかりの自分に嫌気がさしていた。そんな心の傷を描いた小説。
俺、那智浩太の心の傷、それは治っていくのか!
彼女と別れた。
たった数日前のことなのにもう数年も前のことのように感じる。
付き合った時間は短かったが幸せだった。大学2年になりずっと付き合っていきたかったがだめだった。
いや、別れたことに関しては俺の失態なのだろう。タイムマシンがあったらよかったのにと心から思う。
しかし、それは出来ないことだ。ハイデガーも言っていた、
「人間は根源的に時間的生き物である。」と。俺たちは過去に変えることはできないのである。
俺はいつからこんな運命にした神を、世界を恨んでいるのだろうか。いつから恨んでいるのかと聞かれるときっと7年前からなのだろう。そうあの頃から少しずつ変わっていった。考え方も行動も。
―――――7年前―――――
あれは中学に入って初めての夏だった。
俺、那智浩太はまだ世間知らずで、自分ひとりで何でもできると思っていた。勉強もスポーツも秀でてこそいなかったが人並みには出来ていたし、ルックスも標準的、誰とでも仲良くなることができ、友達も多かった。とりあえずわかりやすく言うと調子に乗っていたのである。
(なんてバカだったんだろう⋯。あんな簡単に人を信じるなんて⋯。俺って単純すぎじゃねーか⋯⋯⋯。)
おっと感情が入ってしまった、話を戻そう。
とりあえずそのころ初めての彼女ができた。出会い方はどこかのドラマのようだった。
俺は塾に遅刻しそうでかなり焦っていた。その日はテストがあり遅刻するわけにはいかなかった。
(でもそんな日に限ってアクシデントっておきるんだよなー⋯。)
なんてぼんやり考えながら自転車に乗っていたら、前から迫ってきた自転車に気がつかなかった。
「キャッ!!」
(えっ⋯。女の子⋯?)
ぶつかった。そりゃもう全力で⋯。
「ごめんなさい、大丈夫ですかっ!」
俺は急いでいたこともあってかなり焦っていた。
「だ⋯大丈夫です。私こそごめんなさい、ぼんやりしてて⋯。」
(よかったー、怪我はないみたいや。)
「あっ⋯いや⋯俺もぼんやりしてて。やばい!ごめん、急いでて!」
「私も!」
そのときはお互い名前も知らないまま別れた。塾には何とか間に合い無事テストを受けることができた。まぁ、わかると思うが、女の子のことが気になってぜんぜん集中できずに無残に散った⋯。
(あーぁ、あの子かわいかったなー。名前くらい聞いとけばよかったな⋯。)
そんな後悔を抱きながら一週間が過ぎた。
その日はなんの予定もなく、家でゴロゴロ過ごす気分にもならず自転車でサイクリングに出かけた。まさか、そこであんなことになるとは⋯。
心の殻