practice(63)



六十三






 如雨露を止めた時間だった。
 土のこげ茶が湿り気を帯びて,無色透明が濃くする茎の周辺は静かに音を食べる。むしゃむしゃ,を思うのは虫に近い触れ方をしているせいで,ここではやっぱりごっくんと喉を潤すべきなんだろう。一口貰った珈琲よりも沢山飲んだ氷入りの牛乳で,早く早くとコップの縁に口をつけたように。甘い食パンと風は吹いてきた,塩味のゆで卵が美味しく望める青の,渡り鳥が組む隊列を窓の枠で時々に見失いながら,よく噛んで,席を立って,踏み台に乗った洗い物には追加の枚数とその日の課題が与えられて,光がひねくれる確率と,すくすく生きる薬草の関係を計りながら,優しい小言を耳に挟みながら。縫製したばかりの前掛けで拭うものは好きな花だけじゃない,新しく加えられた青虫の編まれ方には固さも感じて驚く。それから後ろの紐をほどいた後の,まとめた灰色の髪に刺されたヘアピン。金色で綺麗な一つ。小さく畳んだものを渡して,励みと学びに促される,朝の挨拶は短い。
「玄関を開けるのも仕事です。」
 なら,飛び出すのは私の領分だ。予想したより強い陽射し加減に低い影の自分を敷いて,出したばかりの植物のような時間に帽子のつばが広がった。そこに浮かぶ気持ちは隠して,楽しげに見つめて。汽笛が鳴る前に戻るのもまた,一つの仕事なのだから。
 屋内から聞こえる,いつもの鼻歌は私が見つけた昼過ぎを告げる。それも術(すべ)だと信じられる,動きと位置の関係がある。
 例えば試みる『賢さ』の定義,その前のよく晴れた時間。厳しくて,高い音が苦手ということは加えてもいい。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-16

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