おとしもの

おとしもの

道端におとしものを見つけた
そのおとしものの主はわかっていて
僕は空に向かって叫ぶ

おとしものを取りにこいよ

当然来てくれる訳もない
僕の目の前の
空と同じ土留め色をしたおとしもの

空は
自分からおとしものをしたりするくせに
僕らからの呼びかけには応えてくれない

気分屋だなぁ

だがそれは僕も同じで

君を抱きしめる腕に力は籠るのに
心では君を憎み、拒絶し、突き放す
淋しさを得て、生を実感する

君を憎み、拒絶し、突き放すのに
心では君を求め、愛し、ぬくもりを探す
君を抱きしめる度に、死を実感する

心と身体が反比例して、
僕の意思なんてそっちのけで動くから
僕は2つに引き裂かれ、
ぐちょぐちょと踏まれ、
挙句の果てには
このおとしものの色のような
美しい色の灰になって
空に融けていくのだろう

それはとても甘美な響き
それはとても美麗な末路

おとしもの

愛と哀と藍とI

僕に足りないもの。
それはー…。

ありがとうございました。

おとしもの

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted