SS04 コンパクトな神様

これは私の神様論。

 私の考える神様には手がない。足もない。恐らく実態も。
 あるとすれば多分首から上だけだ。
 だから彼らは私たちを見守ることはできる。
 耳を澄ませて事情を知ることも。
 但し口はきけない。
 そういう非情な存在だ。

 なんで非情かって?
 彼らは宇宙を作り上げた。
 どうやったのかは分からないが、無からこの世のすべてを生み出したのは神様だけだと私は思う。
 それは創造主だけが持つ力と言えるだろう。
 だから宇宙で起こるすべての現象を、出来事を、そしてその運命すら見通しているはずだ。
 なのに彼らは決してそれらを教えようとはしない。
 ただ閉じた宇宙の外側から私たちをじっと見詰めているだけ。

 なのになぜ人は神を崇めるのだろう?
 福音があれば感謝し、災難が降り掛かれば、それは乗り越えるべき試練だと決め付けて耐え忍ぶ。
 私が思うに、彼らはきっと困惑しているはずだ。
 何もしていないのに、何にも応えていないのに、謂われなき感謝や懇願、非難を浴びるのを釈然としない気持ちで眺めていると思う。
 しかも世に溢れる神様、仏様はなぜか皆、人の形をしている。
 全知全能の神が人と同じ姿形をしているなんて、とんだ思い上がりだとは思わないんだろうか?
 私にすれば、まだ得体の知れない不気味な容姿の方が納得がいく。
 もし彼らに実態があるのならば、それは人知の想像を超えた存在だと思うから。
 それでも縋りたいのなら、その得体の知れない者たちに縋ればいい。
 悲劇も幸せも彼らと共有すればいい。
 そして祈るのならば彼らを心の中に思い浮かべて祈るがいい。

 そうだ。私はいいものを知っている。 
 このなんだかよく分からないマスコット。
 掌にすっぽり収まるコンパクトサイズは、祈りを込めるのにちょうどいい。
 しかも一つたったの二百円。

 奥さん、そこの綺麗なお嬢さん。とってもお買い得ですよ。
 これ。

SS04 コンパクトな神様

SS04 コンパクトな神様

これは私の神様論。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-12

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