恋情。

恋情。

初めまして、千歳と申します。
初投稿ですが、よろしければ見て下さい。

『何故、人は誰かを愛するのですか?』
一人の少女は、首を傾げて聞いた。先程までは本を読んでいた筈なのに、あまりに急な質問をしてくるものだから、答える側としてはとても困る。
『…え、っと……』
答えにつまる私を、少女は黒い瞳で覗き込んだ。
きっと、私が嘘をついたって、この子には通じないだろう。
それならば、と私は正直に答えた。
『…ごめんね、私にもわからないや。』
すると少女は、悲しそうな顔をしてまた私に聞いた。
『…それじゃあ、貴方は、恋をした事も誰かを愛した事も無いのですか?』
その言葉を頭の中で反芻する。
勿論、私は恋をした事もあるし、誰かを愛した事もある。

では何故、貴方はその理由がわからないのですか?

何も言っていないのに、彼女がそう言った気がした。
けれど、本当に何故なんだろうか。私にも理由がわからない。
…子供ながらに難しい質問をしてくるなぁ。と、私が軽くはにかむと彼女はまた首を傾げた。
『どっちなのですか?』
『…うん、勿論恋をした事はあるよ?』
『なのに、愛する理由はわからないのですか?』
やはり少女は聞いた。
私に、何故と聞いた。何故恋をしているのに、愛する事の意味が分からないのだと、静かに聞いた。

『…いいんじゃないかな、それで。』

私が呟くと、少女はまた何故?と問う。
『うーん、そうだなぁ…。 君は、恋をした事がある?』
『…無いです。 だから、分からないのです。』

私は、笑って言った。

『じゃあ、これは宿題!
君が恋をしたときに、答えを私に教えてね!』





私には、好きな人が出来た。
どんな感情だとか、どんな感覚だとかは、私自身分からない。
なにが理由で好きになったと聞かれても、答えられはしない。

ただ、気付いたら好きだなって、そう思った。

そうしたら、不思議な事に、昔の事を思い出した。
私が質問した事は、逆に宿題にして返されてしまったけれど、私の記憶に刻み込まれたそれは、今でも色褪せず鮮明だ。

『何故、人は誰かを愛するのですか?』

私にも、その答えは分からなかった。成長して、誰かを好きになればその答えがわかると思っていたのに、現在でも分からない。

けれど、あの人の言葉の意味だけは、わかった。

『…いいんじゃないかな、それで。』

最初は、なんで知らなくてもいいのかと、不思議で堪らなかった。
今ならわかると思う。

別に、人が誰かを愛する理由なんて必要ないんだ。
貴方が私に笑いかけてくれれば、私が貴方を笑わせてあげられれば、それだけで良い。
私が貴方に対して、切なくなったり、寂しくなったり、恋しくなったり…。
こうやって、今貴方を思う気持ちがあるのなら、そんなものを知っている必要は無い。

私は、そう結論を出しました。
宿題の答えとして、どうですかね?あの時のお姉さん。
今はもう、顔すら憶えていないけれど。



明日、また笑って下さい。私と一緒に、笑って下さい。

〝それだけで、私はとても幸せだから〟

恋情。

初投稿でした、
お粗末なもので大変申し訳ありません!
閲覧ありがとうございました!

恋情。

恋やら愛やらのお話しです。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted