おいわい
特にありません。
おいわい
男と目が合う。
どうして。あたしはずっと、ここにはいなかったのに。
その目は真っ赤に充血して、血走って、二倍くらいにふくらんでいた。
たった一度、たった一度だけなのに。
アスファルトが紫色にゆがんで、波打って、それでも男は立っている。
(だからそれは、あなたのことを、ずっと見つめている、ということ)
ハンマーを打ち下ろして、固定しようとする。つよくつよく、打ってのばせば。
ねえ、だから、ドアはいつまでも、開かれていたから。
次の扉に押しのけられて、それは最後に、あなたをのろうために。湿ったくちびるの端から、だからあのとき食べておいたのに、と言わんばかりに。
弱っていくのを見ているだけでいい、だってそれがいちばんの罰なんだから。だってそれがいちばんの罰なんだから。
口ずさみながら、すこし楽しくなって、光の反射から目をそらした。
探すのはやめよう。だって悲しくなるだけだから、だって悲しくなる、だけなんだから。
ポールのまわりを、ぐるぐる回って、ビニール袋の中身を見たら?
赤いポスト、黒いナイロンのジャンパー、おじさんの目玉、青紫色の、たくましい骨、そのほかのお肉。
わたしは喜びで、おかしくなって、げえげえ、げえげえ、と、あたりを汚しながら、伝えにいく、伝えにいく。
わたしの大好きな人、もういいの、わたしの大好きな人、もういいの。
だから二人でお祝いしましょう、今日も明日も明後日も、すてきな歌を、歌ってあげるから。
おいわい
特にありません。