君はぼくを2回撃つ

プロローグでエピローグ

君への淡い純粋をソーダに溶かして、浮かんでは消える泡をしばらく見つめた後、おもむろにそれを一息に飲み干す。

溶かすものは一つなのに、甘さ、酸っぱさ、渋さ、夢、希望、現実やら、色んな類の味を含んでいる。

しかも、ちょっとの溶かす量の違いで味はがらりと変わり、舌触りまで豹変してしまう。

グラスを空にした後はテイストの自己反省。

これがぼくの日課。
日課だからもちろん毎日毎日くり返す。

特別に行う時間は決めてないし、忘れてしまうこともあるのだけど、ほとんど無意識の作業になってるから一日のどこかで必ず、このだからといってどうしようもない作業を性懲りもなく続けている。

初めてソーダ水を飲んでから15年、感覚的なことに対して要領の悪いぼくが、その頃のものに比べれば少しはマシなものを作れるようになったのは、ようやく最近のこと。
2年ぐらい前から、仮に、他の誰かにこのソーダ水を飲ませることがあっても、文句は言われないだろうという程度には進歩した。
もちろん、そんな "if" はありえないのだけれど。

ぼくが語りうる仮定法未来は、

ぼくの柔(やわ)な弾丸が、欠伸をしつつのつまらない跳弾の末に、間抜けにもぼくの脈動を貫く。

一方で君は、紫のアイシャドウで縁った左目でウィンクして、ソーダ水の入ったグラス片手にトリガーを引く。
容赦なしの君の弾丸は、脇目も振らず空中散歩。
ぼくの眉間を一寸の狂いもなく見事なヘッドショットを決める。

「とっても素敵だったよ。これきりしか、もう飲めないと思うと残念だけど」

君はぼくを2回撃つ

君はぼくを2回撃つ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
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  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-03

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