時の中の自分

~プロローグ~

 人間なら誰でも1度は、人生をやり直したいと思うことがあるだろう・・・

 それが普通のタイムスリップなら喜んでするだろう・・・’’普通のタイムスリップなら’’

 1.

 「もっと真ん中に寄って。父さん顔隠れてるって。」
桜が宙で何度も踊っている。蓮はシャッターを押した。

 「真面目に!勇斗!」
 「お父さんも真面目に!頭に桜のってるよ!」
勇斗は笑いながら言った。
 「んははははっ!!」 
 「こら親父!そんなに笑うんじゃねえよ。ほら最後の一枚撮るよ!」
蓮は最後のシャッターを軽く押した          ・・・・・・
 「はい。ありがとうね。ボク」
 「よし、じゃあ飯食うか!」
蓮は家族の顔を見ながら言った・・・・・・??
 「ん?ありがとうね。ボク。カメラ返してちょうだいね。」
?!誰だこいつら!しかも''ボク''って何だよ!
 「あの・・・カメラ僕のなんですけど・・・」
蓮は言った。訳が分からない。どうなってる。みんなは?
 「あのね、ボク。これおばちゃんのだからごめんね。」
そう言って、知らないおばさんは家族を連れて去っていった。
体が重い。勇斗もいつのまにか消えてしまった。
 「カーッ、カーッ、カーッ、」
カラスがアホ面して鳴いてやがる。
 「どうなってんだよ・・・」
蓮は途方に暮れた。まぶたが重い。蓮は静かに目を閉じた

 

 「何やってんだ!?」
 「あ・・・うん??」
誰かの声がする。そよ風が気持ちいい。蓮はまぶたを開いた。
「夜ご飯だよ。夜ご飯!」
蓮はその場を理解するのに時間がかかった。
(とうさん?父さんなのか?それも若いとうさんだ!!)
 「お、親父!?こんな若返ってどうしたんだよ!?」
蓮は視線を足から顔に移し、泣きそうな声で叫んだ・・・・・・・・・・・・・

 「今日はにくじゃがね。はい!れん。」
 「あ、ありがとう。」
電子レンジで温めたばかりのにくじゃがが熱すぎて、テーブルに落とすように置いた。ブラウン管テレビが騒いでる。(いまじゃ、とっくに地デジだもんな・・・)
狭い部屋に置いているソファーのおかげでよけい部屋が小さく見える。
 「ねぇおふくっ・・・母さん、今日って何日だっけ?」
 「10月30にちぐらいだったと思う。あ!そういえば蓮も明音も来週運動会じゃん。頑張りな~。」
運動会?俺が?勇斗じゃなくて??
 蓮は茶碗がいつもより大きく見えた。
 「ちょっとあんた!50円返しなさい。」
かん高い声が耳に響く。そこにはなつかしい顔があった。
 「明音姉ちゃん!って若けぇ・・・」
その時目の前が真っ白になった。
 「痛ってぇ~!」
 「あんた寝る時間過ぎてるんだから、さっさとおふろ入って寝なさいよ。」

 (うっへ~・・・こんなにうちの風呂古かったっけな。トトロに出てきたやつじゃん。)
 蓮は風呂にあった鏡に目をやった。
 2度見直した。
 今度は、本格的に目の前が真っ白になりそうになった。
 風呂の鏡には小学生の蓮が写っている。
 「どうなってんだよ。マジで・・・・・・・・・」

時の中の自分

時の中の自分

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-11-07

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