ちぇりぶろ

プロローグ

楽しみだ。
楽しみで仕方がない。
この日の為に僕、春風晴人は三年間勉学に勤しんできたのだ。
友達も作らず(話しかけれなかった)
部活もせず(誘われなかった)
恋もせず(女子と話した経験皆無)
そんな苦悩な中学時代を送ってきたけどそれも今日までだ。


友達も作り部活にも参加して
……恋人も出来たらいいな!


まだ寒さが残る桜舞う季節。
今日から僕は晴れて高校生になる。

出逢い

僕の住んでいる場所は山に囲まれた田舎だ。
都会のイメージとは程遠く高層ビルや大きなショッピングモールも当然無い。

でも不便だと感じた事は一度も無い。
大きなショッピングモールが無くても今はネット通販が主流になっているからクリック一つで買い物もできるしね。

友達や恋人もクリック一つで購入できるくらい簡単だったら僕も今頃憧れのリア充ライフを送れていたのかななんて思ったりもする。

「お〜い晴人!」

声の先を振り返ると僕の唯一の友人であり幼馴染の草野凪が手を振りながら走ってきた。
凪は家が近所で幼稚園から中学校までずっと同じ学校だった。

今日から通う二宮高校も元々違う高校を志望していたのに僕が「二宮に行こうと思ってる」と話したら「私もやっぱり二宮に行く!」
と志望校を急遽変更し同じ二宮高校へ通う事になった。

昔から人と接するのが苦手な僕の為に同じ高校を選んでくれたのかな?とも考えたけど流石に自意識過剰だよな。

凪は僕と違って人付き合いは上手だし友達も多い。
それに部活では部長もしていたし
容姿もモデルのようなスタイルで顔も可愛いから中学時代は凄くモテていた。
僕とは正反対だ。

「ん?どうしたの難しそうな顔して」

「何でもないよ!‼︎」

どうやら幼馴染のハイスペックを前に心情が顔に出てしまっていたみたいだ。

「それよりやっと私達も高校生だね。新しく友達も出来るかな〜」

「凪ならすぐに出来るよ!中学の時だって友達たくさん居たし。それに比べて僕は……」

「晴人はもっと自分から積極的に話しかけないとダメだよ!私の友達、晴人君いつも不機嫌そうだから話しかけずらいって言ってたし」

「え⁈そうなの⁇そんなつもり全然無かったんだけど……」

「教室でいつも本ばっかり読んでるし普段無口だからそう見えるんじゃない?」

「そっか……」

確かに僕は趣味がラノベだから手が空いた時は常にラノベを読んでいる。
朝登校したら読書。
休憩時間も読書。
昼休みは勿論読書。
放課後は直ぐに帰宅し読書。

あれ、本当だ、僕読書しかしてない。

「高校入っても同じ事してたら友達出来ないから積極的に話しかけるんだよ!」

「そう言われても話しかけるの苦手だしな〜」

日頃人と会話する機会があまり無いから会話んしようとすると緊張のあまり相手の目もまともに見れないんだよな。

「私も友達作りに協力するから一緒に頑張ろうよ!」

「ありがとう、凪。頼りにしてるよ」

「で、でも晴人もちゃんと自分から話しかけれるように努力しなよ⁈」

「分かってるよ」

凪は昔から優しくて血は繋がっていないけど頼れるお姉ちゃんみたいだ。

「あっ。ごめん晴人!今日ミキと一緒に学校行く約束してたんだ!待たせてると思うから先いくね!また学校で!」

「分かったよ!ありがとう」

二宮高校は中学と同じ区内にあるから中学から二宮高校へ進学する生徒は多い。
僕も交通手段を減らす為に二宮高校への受験を決めたのだ。

(まだ時間あるし少し寄り道するか)

学校に辿り着くまでに長い坂があり中間地点に小さな公園があるのを試験の日にチェック済みなのでそこで一息着くことにした。

公園に着くと二宮高校の生徒達で溢れている坂と違い人が一人も見当たらない。

「ふ〜。いい景色だ」

公園のベンチに座り辺りを見渡すと桜の木々に囲まれて居心地がとても良い。

「貴方、桜は好きですか?」

「うわっ⁉︎」

突然ベンチの後ろから声が聞こえ振り向くと一人の少女が立っていた。

「え⁈どこから⁈」

「ベンチの後ろに座ってたの。貴方は桜が好きですか?」

「桜は……好きですけど」

「そうですか、私も大好きです」

「えっとどなたですか?」

「二宮高校二年の……」

ーー藤崎 〝桜” と申します


これが僕と彼女の出逢いだった。

入学式

「突然話しかけてすみません。何故だか分からないけど話かけてみたくなってしまって」

「いえ、大丈夫ですよ!ただビックリしたので」

「ごめんなさい。所であなたのお名前を伺っていませんでしたね?」

「僕は春風晴人です。今年から二宮高校の一年生です」

「そうなんですか。よろしくお願い申し上げますね」


あれ、僕すんなり人と会話出来てる。
しかも歳上の人と。
何故だか桜さんは他の人と違う雰囲気がある。
優しい話し方だし良く見ると凄い美人だ。
凪とは違ったお姉さんぽさもあるし!

「そういえば晴人さん時間は大丈夫なんですか?」

「え?」

急いで携帯電話の時計を確認すると
入学式の時間がギリギリまで迫っていた。
初日から遅刻だけは勘弁だ。

「僕そろそろ行きます!桜さんも時間大丈夫なんですか⁇」

「私はもう少しここに居ますので大丈夫ですよ」

「え、でも遅刻……」

「ふふ、大丈夫です」

そう微笑みながら答える桜さんの様子はどこか淋しそうに見えたのは僕の思い込みだろうか。

「そうですか……なら申し訳ないですけど僕はお先失礼します」

「はい、お気をつけて」


不思議な人だったな。
突然話しかけられたのもだけど遅刻しそうなのにまだあの場所に残る事も。
あの場所に居なければいけない理由があったのかな?
まさか不登校とか……
嫌、下手に人の印象を決めるのは良くないな。
とにかく今は急がないと‼︎



無事に入学式には何とか間に合った。
新入生代表の挨拶や校長の激励の言葉など特に変わった事は無く式は終わった。

校舎前に張り出されたクラス表を確認すると僕のクラスは1-C組。
名前表に一通り目を通すと中学時代に見たことある名前や全く知らない名前があり新しい環境なのだと再確認する。
そして嬉しい事に草野凪の名前もある。

「晴人!同じクラスだね」

「うん、安心したよ」

「そういえば同じクラスになるの始めてだよね?」

「あ、確かに」

今までずっと同じ学校だったのにクラスが一緒になった事がなかったのだ。
僕の中学は人数が多くてクラスも5クラスあったから中々一緒になれなかった。

「はーい皆席についてー‼︎」

凪と軽く雑談をしていると教室のドアを豪快に開けながら女教師が入って来た。

「今日からこの1-C組の担任になりました、板橋胸子です!ムネリンって呼んでね☆」

ちぇりぶろ

ちぇりぶろ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-27

Copyrighted
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  1. プロローグ
  2. 出逢い
  3. 入学式