謎の転校生

「県立二葉高校から来ました、斧乃木烈花です。
よろしくお願いします。」
えらく無表情だな。無表情、無感情に話すその少女は、どうやら転校生とやらだった。
ショートカットに透き通るような白い肌。そよ風に髪をなびかせるその姿は、まさに人形かのようなオーラに身を包んでいた。うむ。俺評価、星四つだな。
これで無表情じゃなければな・・・クラスの男どもはそろって「かわいくね!?」とそろって声援をあげている。
「では、斧乃木さんとみなさん仲良くしてくださいね」
はいはーい。担任の美鈴先生が無口な転校生のフォローをする。
気を遣わせるタイプだな。
「はあああい!」
と、一人馬鹿でかい声で挙手をした短髪のその男は、クラス一の馬鹿、そして筋肉バカの横山だ。ラグビー部に所属しており、実力は相当なものらしい。
ったく、小学生かっての。つくづく恥ずかしい奴だな。
「えっとー斧乃木さんの席はー」
ビクッ。美鈴と目があった。ったくわかってましたよ、空いてる席つったら窓際の後ろから二番目。つまり俺の前しかないんだろ?はいはい、わかりましたよ。
「あそこね!あそこが斧乃木さんの席ね。」
「はい・・・」
「斧乃木ちゃーん!押尾君チョーおもしれえ話してくれるからさ!期待していいよ♪」
だまれ横山。てめえぶっころすぞ。横山の嫌味満載のガヤは無視することにした。
ってか俺コミュ障だし。まして女の子と話すなんて何ヶ月ぶりだろうレベルだ。
そんな俺の感情を無視するかのごとく、転校生はそそくさと俺のほうへと近づいてくる。
チッ。いちいち可愛いんだよ。
俺は近づいてくる彼女と目を合わせないように、窓の方向へ視線を送る。逆にふしぜんに見られていないだろうか。自分の行動に挙動不審になってしまいそうだ。
そうこう自分の中で謎の葛藤をしているうちに、気づいたときには彼女は席に着いていた。
「じゃあ、今日のホームルームはここで終わり!もうすぐ学年末だから自習しとくようにね。」
そっか。もうすぐ学年末か。もうそんな時期だったんだな。
あれ?そういえば今は1月の下旬。こんな中途半端な時期に転校してくるって相当珍しくないか?いや、考えるのはよそう。世の中、変わった奴もいるんだな。
いやまて、さっきからなんで俺の脳内に転校生というワードばかり出てくるんだ?やめようやめよう。変な気になっていては学年末に差し支える。それに俺は恋愛なんてくだらないものだと思ってる。あんなの一時の感情さ。一時の感情に身を任せ、一時の愛に心奪われ、ほんと、恋愛してるリア充どもなんか、爆発しなくてもいい。むしろ相手にしようとも思わない。もちろんうらやましいなんて思ったこと、いっ、一度もないからな。

謎の転校生

謎の転校生

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-02-26

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