べ、べつにお前のために戦ってるわけじゃないんだからなッ!

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※あらすじ、用語説明にネタバレ要素が多いため注意
※編集済みの章への修正・変更加筆が起こることがあるので注意
※話の内容自体が変わってしまうような誤字・脱字がたまにあるのでその都度修正します。すみません。

~あらすじ1~
ある日、少年の家宛てに大きな包が届けられた。その中には一本の剣が入っていた――――――


~あらすじ2~
少年の勇者(仮)生活が始まってから1ヶ月が立ち、ついに魔王(その2)との戦いが始まった――――――



~あらすじ3~
少年は、ただ立ち尽くしていた――――――

そして、歩き出す。自分の元いた世界へ戻るために・・・

右手から離れなくなった剣と共に――――――


用語説明
・現実世界
 この世には幾つもの世界があるとされ、主人公が自分自身が生きていた世界のことをそう呼んでいる。
・パラレルワールド
 主人公の元いた世界とは別の世界を指す。


キャラクター紹介
・月岡勇気(ツキオカユウキ)
  本作の主人公。彼の家に剣(?)が届くことがきっかけで大きな変化が訪れる。

・月岡秀夫
  主人公の父。ある兵器の研究員をしていた。数年前、研究中に発生した事故に巻き込まれて他界した。しかし死体は見つかっておらず、
 幽霊騒動もたびたび起きているなど、不可解な点が多い。

第一章 べ、べつに危なくないんだからッ!!

~ある秋のこと~

「郵便でーす!」
「はいはい」
こんな朝早くから郵便だなんて怪しいなと思いつつ玄関扉のドアスコープを覗いてみると、<〒>のワンポイントが刺繍された赤い帽子に
茶のスーツを着た若干二十歳と(おぼ)しき男が長方形状の包を傍らに置いて立っていた。すごく怪しいけど、あの中身に興味を
そそられたぼくは思わず扉を開けてしまった。
月岡(つきおか)」様、ですか?お荷物が届きました。ここにサインを書いてください。」
配達員は自然な動作で紙とボールペンを胸元のポケットから取り出した。手渡された紙の右下に「 氏 名 」という項目があり、その下に
枠があり、反射的に名前を書いてしまった。


 母が用意してくれた朝食を食べ終え、歯磨きをしながら考え事をしていた。
朝届いたダンボールの中には何が入ってるのだろうか?見た感じ、棺桶を縦に半分にしたようなサイズだ。
長いものが入っているとすれば、例えば秋刀魚(さんま)が入っていると考えてみよう。い、いや、待てよ?秋刀魚じゃなく太刀魚の
ほうが長さ的には適切ではないか。しかしあの太さ・・・何本入っているんだ?そのまえにあの箱、冷たくなかったぞ。だとしたら中身は
生物(なまもの)じゃないということになる。そういえば見た目に反してそこまで重さを感じなかったし。う~ん・・・わかんないや。
考えすぎてたからなのか、歯ブラシをおかしな角度で引っこ抜いてしまい、口に鉄の味がほのかに広がった。
 今日は土曜日だが、母は不定期で仕事があり、姉は図書館へ行くとかいって家にはいない。父は数年前に亡くなった。
という感じで、今は家にはぼく以外誰も居ないのである。
 歯磨きを終え自分の部屋へ戻ると、あの箱が部屋のど真ん中に鎮座していた。そして包の上に伝言が書かれているらしいメモ用紙が
置かれていた。
「私が帰ってくるまで開けないように。絶対に。 母より」
 そういえば食事のときにもそんなこと言ってた気がする。
開けちゃいけないのになんで僕の部屋に置いてあるんだよ・・・、これわざとだろ?絶対わざとだろおい・・・・。
ごくん。うう、手が勝手に・・・・。
 結局、誘惑に負けて開けてしまった。包装を剥がしてみると、発泡スチロールの箱が出てきた。<割れ物注意>のシー
ルが貼ってあったから中身はデリケートなのだろう。そっと発泡スチロールの2つ一組の容器の上部を外さないとまずいな。

 目をつぶり、両手で蓋を掴み、慎重に腕をを上方へ平行移動させた。そして、ゆっくり瞼|《まぶた》を開けると・・・
まず、視界には光沢を持つ刃が現れた。刃先から左へと目で輪郭をなぞると、刃の根元には鍔|《つば》がついており、そこからグリ
ップが生えていた。その先端に滑り止めなのだろうか少し膨らみが備わっていた。
これはRPGとかでよくみるあれだ。そう、剣だ。特に、初期に配布される変哲のないただの剣。ただの剣といっても銃刀法で禁止されているし、そもそも郵便局でこんな代物の配達を扱っている事自体疑問に思うところだ。実際のところ詳しくは知らないのだが。
 見るからに本物の剣だよなこれ。ここにある状況自体すでにまずいけど、逆を考えればすでにアウトだから別に触るぐらいならどうってことないよな、という邪|《よこしま》な思考が働いていた。いつの間にかグリップに右手が触れていたことに気づいた時には既に手遅れであった。ぼくは、グリップを握りしめていた。
 驚いたことにこの剣は見た目に反して非常に軽かったのだ。おもちゃのプラスティックソードと同じくらいの重みしか感じない。金属で出来ているとは思えないほどに。何か別の軽い素材が使われているのだろうか。興味本位でぼくは発泡スチロール製の蓋に切込みを入れてみることにした。しかし凄まじく切れ味が悪く、圧力で強引に裂く形で蓋の角を切り落とした。どうやら見た目ほどに危険ではないらしい。

 再度、剣を軽く持ち上げ、
「この剣は一体・・・」
何気ない一言と同時に右腕を左上から右下へ振りかざした――――――

第2章 べ、べつに好きで助けに来たわけじゃないんだからな!

 「―――ここはどこなんだ・・・。」
家の中ではないことは確かなようだ。天井がないし、周りを囲う壁もなければドアさえない。そして見られない風景。見たことのない風変わり
な木々が生い茂っている。どうやらここは森のなかのようだ。一体どうなっているんだこれは・・・・。
 思い出してみよう、確か・・・。

 「この剣は一体・・・」
とか言って剣を振った時だったよな。いきなり足元からふんわりとした光が溢れだして・・・・いつの間にか視野が真っ白になって――――
気づいたらここにいた。ここに飛ばされたとき足元に一瞬だけ魔法陣っぽいものが見えた気がしたのはゲームのやり過ぎによる目の錯覚だろう。
 現在、獣道ではなく道っぽい道の上にいることが不幸中の幸いだ。さて、どうしたものだろうか。とりあえず道を進めばいつかは森を抜けて
人気(ひとけ)のある場所へ辿り着くだろうという軽い考えで道を歩いていくうちにいくつか疑問に思ったことがある。
この周辺の木々の葉の色は鮮やかな新緑であることだ。秋でも葉が枯れずに緑色を保っていることはそう珍しくないが、しかし、ここまで生き生きした色をしているのを見ると少し違和感を覚える。それだけじゃない。たまによくわからない英単語が書かれた木を見かけるし・・・。そして何よりおかしいのが、空を飛んでいる鳥の群れだ。最初は見間違いだと思ったが目をよく凝らしても翼を広げていない。だが、空を飛んでいる。気味が悪い。もしかするとここは夢の中だったりするのか・・・。


 本当にこの森から出られるのだろうかと不安を募らせながら歩くこと一時間後、何事もなく森を抜けた。
そこには、澄んだ水色の空と広大な草原が広がっていた。
「すごい広いな・・・こんなところ来たことないや」
写真で似たような場所は見たことあるが、実際にこんなとこには来たことがなかったため一度でも訪れて見たいと思っていたがまさかこんな形で来ることになるとは・・・・。
 どこにも人の姿が見当たらない。諦め悪くじっと目を凝らして遠くに目を見やると、小さな建物を発見するや(いな)やぼくはすっ飛ぶように駆け走っていた。まるで矢の如く疾走していた。ぼくはクラスでは足は速い方ではない。50m走のタイムは後ろから10番目といったところだ。だからなおさら、今僕の出している速度は異常なのである。全国大会も夢でないというかこれより上を目指せるんじゃないという程の速力なのである。

----------40分後----------
「はぁ、はぁ、はぁ......」
いくら夢の中とはいえ、疲れるのはやはり疲れる。実のところ最初の10分でバテてそこから歩き始めた。よく10分も持ったなと不思議の思うところだが・・・。止まって休めばいいのだが、夢が覚める前にあの謎の建物を間近で見てみたいという好奇心がぼくの足を一向に休ませてくれないのである。
 唯一変化があるのは視界に映る建物の大きさだけであった。近くになるに連れて小屋であることが判明した。

さらに歩くこと10分、小屋のすぐ近くまで辿り着いた時のことであった。2つの声があの小屋から届いた。
ひとつは少女の声、もうひとつは狂気を帯びた男の声だった。

「オラァ!命惜しけリャァァァァ、秘密を教えるんだナァァ!!」
「そんなことしたら世界のおしまいよ!誰が教えるもんか!死んでも教えない!」
「強情だナァァァ、じゃあお望み通りあの世に送ってやるよ!!」
ただごとではないことは分かった。
ヒミツ、セカイノオシマイ。
少女の声と男の声が発する言葉を聞く限り、正直意味不明だ。おそらく、ゲームのやり過ぎでこんな夢を見ているんだな。うん。そうだ。
ということはこれは何かのイベントだと思う。世界の秘密の握る少女を魔の手から救い出すという内容だろう。だとすると、今、右手に握っているこの武器は、中にいる恐ろしい何かを倒すためのキーアイテムということになる。そしてここは夢の中の世界。しかもゲームの影響を受けているらしいということもあり、死んだところでどうせ生き返るんだろうという軽い考えで、ぼくは躊躇なく扉を開けた―――――


 男は丸椅子に腰掛けている老婦へ上部に小さな骸骨の装飾が施された杖を向けていた。突如、ぼくが現れたので二人揃って目を丸くしてこちらに視線を送ってきた。
「お前は誰だぁ?ババァの孫カァァ?」
男の第一声にぼくは一瞬苦笑してしまった。小屋の中にいたのは少女ではなく、老婦だったのだ。しかも夢の中ではこの見知らぬ老婦がぼくのお婆さんという設定なのかもしれないのである。少し戸惑いながらも大きな声で言ってしまった。
「ああ、そうだ!そこにいる見知らぬお婆さんはぼくのお婆さんだ」
「はぁぁ?何言ってんだぁ?知らないのにお前のババァだトォォ?」
自分でもそう思った。だが即席で反論を用意できたことに驚いた。
「母にお使いを頼まれてここに来たんだ。」
すると男は、杖をおろし、嘲るような目で老婦を見やり、言い放った。
「オメェがそんな野郎だったとはナァァ。まだ若いっつうのニィィ。魔法で子供の発育を早めたのカァァ。時の魔術をそんなくだらネェことに使うなんて、めでてぇ野郎だナァァ。ヒャヒャ。」
まだ若い?この老婦が?なんかこんがらがってきたぞ・・・。ていうか、孫なのかと聞いてきたのはそっちだろ・・・ああもうどうでもいいや、とりあえずこの人を救うのが先だ!
「ぼくのお婆さんに手を出すな!容赦しないぞ」
「ほほぅ、容赦しないってことはつまりこの俺様と戦うってことカァ?おもしろい野郎だゼェェェ。なんだその剣みたことネェナァァァ。あの伝説の剣じゃネェ限り俺様と互角に戦えるとでも思ってるのカァ」
どうやらこの剣のことを知らないらしい。しかし自分もこの剣についてはよく知らない。ハッタリが通用するはずがないが一瞬のすきを時間稼ぎにはなるかもしれないと思い言った一言
「この剣は、すべての闇をなぎ払う伝説の剣・エクスカリバーだ!」
虚仮威(こけおど)しのつもりで言ったのだが男の顔が青ざめた。
「エクス・・・カリバーだと・・・・」
こんな嘘が通用するなんて・・・ははは。わけがわからないよ。
しかし、次にぼくの顔が凍りつく番になろだなんて思いもしなかった。
「じゃ、じゃぁぁ一振りで悪しき存在を消し去るんだろうなぁぁ・・・・そんなことありえねぇ、ありえねえよおい!おら、振ってみろよおいッ!!」
そんな設定があるなんて知らなかったというかなんというかもしこの剣がエクスカリバーじゃないとしたらもうお仕舞いだ・・・・一か八かで
思いっきりぼくは剣で(くう)を切った。

が、しかし何も起きなかった。
・・・・・・・。もうおしまいだ・・・。
「ふざけてんのかテメェェッ!!!!」
男は怒り狂ったかのように(というかもともと狂っている気がするけど)恐ろしい顔でこちらを睨みつけてきた。
「この俺様をよくもコケにしてくれたナァァァァァアアアアアッ!!!!!」
さすがに夢でもこれは怖すぎる。実に怖すぎる。やばすぎるだろこれ。足が(すく)んで動けそうにない。
「ちょっと待てよ、これって夢の中なんだよな?ゲーム・・・だよね?そんなにムキにならなくても・・・・」
ぼくの話を遮るように男は一層大きな声で怒声を発した。
「ゲイムだトォォォォ?ふざけてんのかテメェ!!!!!これはセンソウだろうがゴラァァァアァッ!!!!」
「まっ待てよおい!」
わけがわからない。センソウ?発音がおかしいが戦争のことを言っているのだろう。だとしたらこれはどういうことなんだ。
 ぼくの思考を遮るかのように男はまたもや怒声を放った。
「ぶっ殺してやる!!!!ぶっ殺してやる!!!!!!」
男がぶつぶつとわけの謎の単語を唱え始めると彼の足元にどす黒い魔法陣が出現し、それがゆっくりと回転するにつれて放出される闇を杖が全て飲みこみ、
 杖のドクロの目の穴に赤い光が宿ったのだ。闇が飽和したのかドクロ全体が黒光りする(もや)に覆われ、そして
「死ねェェェェェェェェェェェエエッ!!!!!」
男の猛り狂った声とともにぼくに向かって闇の塊が向かってきたのだ―――――


 ぼくは反射的に剣を振りかぶっていた。剣の軌跡は見事に塊の軌道に合い、( ・ )だけを振り払ったのだ。そう、つまり塊にはかすりもせず、そのままぼくのところへ飛んできたのだった。
「ぐはっ」
 塊は腹の中央に見事クリティカルヒットした。そしてその物体を鈍い音を立てて床に落下した。ぼくは痛みに耐えかねて立膝をついた際にその物体がなんなのか確かめた時、戦慄が全身を流れた。あの、杖についていた、不気味な骸骨だったのだ。恐怖で倒れそうになるのを必死にこらえ、男を見据えた。
男は口をポカンと大きく開け、顔を強張らせていた。少女、ではなく老婦の表情に一瞬変化があったがすぐに表情を元に戻し
「残念だったわね、どうやら(あなが)ち本当なのかもしれないわ。さてどうするの?私を殺すために用意した必殺の高位闇魔法マテリアルを消耗してしまったことだし、もういいかげん帰ったら?」
「ク、クソゥゥ、今度はこのフィールドごと沈めてやるからナァァアァ、覚悟しとくんだナァァ・・・・」
男のローブの隙間から黒いモヤがぶくぶくと出現したかと思うと空間に溶けるかのようにそれは男と共に消えていった―――――


「助けに来てくれてありがとね」
「い、いぇ・・・・」
少女だと思い助けに行ったが老婦だったことにがっかりしたなんて口が裂けても言えるはずがない。
「それにしても、さっきあなたゲームとか言ってたけどもしかして何かの大会の会場と勘違いしてないかしら?結界に侵入して武器を奪い合う形式のだったかしら・・・。すぐ近くの街でやってるって聞いたことがあるわ。」
もしかするとこの老婦はぼくがさっき言ったゲームという単語を試合という意味で解釈したらしい。訂正しとくだけしといたほうがいいかもしれない。
「え・・・と、試合とかという意味ではなく・・・・遊びの方のゲームです。VideoGameのGameと同じです。」
「VideoGame・・・?聞いたことないわ。その・・・命を助けてもらってこんなこというのは失礼にあたると思うけど、その・・・・頭、大丈夫?」
「へ?」
素っ頓狂な声を出してしまったが冷静になって考えてみると、夢の世界の住人にここは「夢の世界ですよね?」と聞いて「はいそうです」なんていう馬鹿なことがあり得るわけがない。そんな夢があったらどんだけメルヘンチックな夢だろうか・・・。
「まぁ、仕方がないわね。あの状況で理性を保てという方が酷だものね。まだ落ち着かないのは分からなくはないけど・・・と、とにかく今晩は泊まって行きなさいっ!今日は一日疲れをとったほうがいいわ。さっきの闇魔法の影響も心配だし・・・・」
夢の世界で丸一日過ごせとでもいうのかこの老婦は。さっきから思ってたのだが声音(こわね)がとても老婦とは思えないんだよなぁ・・・それにさっき男が時間がどうたら言ってたからもしかすると何か関係があるのかもしれない。気になるところだが体感時間ではすでに2時間以上経過している。さっさと起きないと昼過ぎになってしまう。
「あの・・・すみません。ここ夢の中じゃないんですか・・・・?そろそろ・・・起きないとお昼過ぎてしまうので・・・・この辺で失礼させていただき・・・・」
「ちょ・・・・ちょっと待ちなさいよ!そんなに嫌ってわけ?私の気遣いが?」
「早く起きないと洗濯物とか昼飯とかいろいろやらないといけないことが滞っちゃいますし・・・・」
ぼくの言ってることにはお構いなしに質問が飛んできた。
「・・・そういえばあなたどこから来たのよ?」
「ええっと、静岡県浜松市の・・・・・・・」
「シズオカケンマツシ?聞いたことないわ・・・」
どうでもよいことだが「マ」がひとつ抜けてるなとか考えていると老婦が険しい表情でこちらを見ていることに気づいた。

「ところで、あなた何者?」
今頃質問するのかよおい・・・・
「いや・・・その・・・・えーと・・・・・」
「どうも怪しいわ」
「怪しいと言われましてもどう怪しいのか説明してくれませんと・・・・というかそもそもお婆さんこそ歳なのになんでやけに声が若いっていうかなんというか・・・・」
「お婆さんっていい方やめてっ!」
「じゃあ・・・お婆様・・・・」
「いや!」
「・・・女神様?」
「・・・ふざけてるの?」
「いやその・・・・年取った女性への呼び方って他に思いつかなくて・・・・・」
「し、失礼な人ね!私はまだ二十歳にもなってないのに・・・・」
わわっ!?急に涙目になったぞ・・・・別の会話でごまかせないかな・・・・
「そ、そういえば!さっき、結界がどうのこうのって言ってたけど結界ってなんだ?」
「結界を知らないの!?じゃあどうやってここまで来たのよ?結界破ってきたんでしょ?」
「破るってどうやってだ?ぼくは森を抜け草原を駆け抜けここまで来たんだ」
「森の外から来たんじゃないってこと?」
「そうだけど・・・」
「まさかテレポートで結界を飛び越えてきたとか言わないわよね・・・?確かに空間自体に干渉する高位魔法だけど、私の結界内の空間への干渉なんてあなたには不可能だと思うわ。でもまさかね・・・」
「テレポートというかなんというか・・・よくわかんないけど飛ばされてきました」
「本気で言ってるの?」
ぼくは返事の代わりに頷いた。
「もう一度聞くけど、あなた何者?」
「信じてもらえないと思うけど・・・」
ぼくは今までの出来事を懇切丁寧に話した・・・・つもりだったが、なぜか険しい表情のままなのである。



「へぇー、剣を振ったら森のなかに飛ばされて、なぜか足が速くなってて、ここまで来たってことね」
「うん」
「あなた、もしかして魔王その3が用意したスパイなの?」
「はぁ・・・」
魔王って言葉が出てくるとは・・・スケールが大きくなってきたぞ・・・・・ところで、魔王その3(・ ・ ・)ってことは少なくとも魔王その1とかその2とかいるってことだよな・・・・
「なにため息ついてるのよ!ため息を付きたいのはこっちのほうなのよ!」
「はぁ」
「またため息ついて、なんなのよあんた」
今度は”あんた”ときましたか。さっきまで二人称が”あなた”だったよな。これがこの少女いや老婦の本来の口調なのか・・・?
「あの・・・”あんた”って呼び方、妙に癇に障るというかなんというか・・・せめて別の言い方か名前で呼んでほしいなぁ・・・って」
「そういえば名前聞いてなかったわね。なんていうの?」
「ゆうき」
「へぇ、変わった名前ね。名前を簡単に教えるなんて馬鹿なのかしら?名前っていうのはね、よく呪術とか陰術とかに用いられるのよ。名前を知られるだけならいいけど、特に最近、本人が発した本人自身の名前を録音してこれを闇の契約魔術の発動トリガーとして使われて寿命が吸い取られる事件が頻繁に起こってるのよ。そんなことも知らないのかしら?」
「おばあ・・・・いや、お姉さんが物知りなのはよくわかったけど、じゃあどうやって名前を相手に伝えればいい?」
一瞬、老婦の顔が引きつったがすぐに表情を戻し
「紙にかけばいいのよ。だけど、それだけではだめなの。紙の材料に魔封じ用のマテリアルを用いるか、もしくは暗号や特殊な文字・・・そうね、例えば魔法陣とか魔法円とかには用いない形式の文字で名を記すことね」
「へぇー、いろいろ知ってるんだな」
老婦はえっへんと言わんばかりに胸を反らした。と思ったらすぐに(うつむ)いてしまった。何かぼそぼそつぶやいているようだが。
「べ、べつにそんなこといわれても・・・・うれしくなんかないんだから・・・・・・」
「ん、どうした?」
「なんでもないわよ!」
気のせいだったようだ。な、わけ無いだろ。これをツンデレというのか。しかし、ツン要素が足りない気がするしデレと言ってもすごく微妙な感じだし、そもそも老婦のツンデレ(?)とか誰得だよ・・・・・。
「ところでさ・・・」
「なによ?」
「お姉さんの名前教えてくれませんか・・・?」
少し間が相手から返事がきた。
「お姉さんって言われ方もなんとなく嫌だから特別に名前教えてあげるわよ・・・・一回しか見せないからね!よーく見るのよ、いい?」
「はい・・・」


*******第2章 未完*******

べ、べつにお前のために戦ってるわけじゃないんだからなッ!

べ、べつにお前のために戦ってるわけじゃないんだからなッ!

  • 小説
  • 短編
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-02-24

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 第一章 べ、べつに危なくないんだからッ!!
  2. 第2章 べ、べつに好きで助けに来たわけじゃないんだからな!