作業現場
眠い。もう限界だ。
大学一年の夏、農機具工場でバイトをした。
鉄の棒に機械で穴を開けるという単調作業だった。
その日、仲間との夜遊びが響き眠くて仕方が無かった。
手を動かしながらも視界が急激に狭くなった。
「危ねえぞ!」
班長の怒声が俺を眠りから引き戻す。
「寝惚けながらやってると大怪我するぞ!」
顔を洗って来いと命じられた。
休憩時間、班長にふて腐れながらも謝罪した。
「もういいって。指に穴が開かなくてよかったさ」
「そんなおおげさな」
班長が俺を脅すために言ったのかと思った。
「そうでもないぞ、事故で指が無い人もいるんだから」
「え? 指を無くした人がいるんですか?」
「おうよ、ほら、まず雅さん、井島さん、あとあの人とそれから・・・」
班長が声をかけてくれるが遅れたら今頃――。
気がつくと膝がガクガクと震え出していた。
(了)
作業現場